第十一話 次の一歩
騒ぎを起こしたら、次に必要なのは新しい拠点。
というわけでセレスたちは、次の街へ向かいます。
無色判定の少女が、今度はどんな場所で何を巻き起こすのか。
湖の村から戻って数日。
セレスたちのパーティーは、ギルドでちょっとした有名人になっていた。
「見て、あれが例の……」
「無色なのに、湖の主を倒したっていう……」
道行く人々の視線には、以前のような憐れみの色はもうない。
むしろ、興味と好奇心の入り混じったものが多かった。
「なんか、注目されてるな」
「別に、気にしてないけど」
軽く肩をすくめるセレスの隣で、ミュゼが得意げに胸を張る。
「当然です! セレスさんの活躍、私も鼻が高いです!」
「お前が誇る話か?」
「パーティーメンバーですから!」
賑やかなやり取りを続けながら、四人はギルドの受付へと向かった。
「あ、皆さん。お疲れ様です! ちょうど良いところに」
受付の女性が、少し興奮した様子で声をかけてきた。
「実は、皆さんに直接お願いしたい依頼がありまして」
「指名依頼ってやつか」
ガロンが受け取った依頼書に目を通す。
差出人の欄には、聞き覚えのない貴族の名が記されていた。
「北の街道で、隊商が立て続けに襲われる事件が起きています。銀ランク相当の魔物、あるいは盗賊団の仕業ではないかと言われていて……皆さんのパーティーに、調査と対処をお願いしたいとのことです」
「銀ランク相当、ね」
セレスは依頼書を眺めながら、興味深そうに呟いた。
銅ランクになったばかりの自分たちには、少し荷が重い依頼にも思える。
「受けるの?」
イリスが横から尋ねてくる。
「まあ、面白そうだし」
「相変わらず、判断基準がそれね」
「悪い?」
「別に」
イリスは小さく笑うと、依頼書を覗き込んだ。
「私も同行するわ。金ランクの実力、あんたたちに見せておいてあげる」
「頼もしいな、おい」
ガロンが苦笑しながら頷く。
ミュゼも意気込むように拳を握った。
「よーし、頑張りましょう!」
こうして、パーティーの新たな依頼が決まった。
準備を整えたセレスたちは、北の街道へと向かった。
道中、セレスはふと、自分の手首に浮かぶ紋様へ視線を落とす。
(そういえば、あれから何も起きてないな)
女神が渡したこの力については、まだ分からないことが多すぎる。
剣術の心得についても、結局あれ以来、女神は姿を見せていない。
「――何、考え事?」
隣を歩くイリスが、こちらの様子に気づいたのか声をかけてきた。
「いや、この力のこと。まだ謎だらけだなって」
「女神様とやらに、直接聞けばいいんじゃないの」
「呼び出し方が分からないんだよ。それが」
「ふうん」
興味なさそうに相槌を打つイリスだったが、その横顔には、どこか物憂げな影が差していた。
セレスはそれに気づきつつも、あえて何も言わなかった。
(そのうち、話す時が来るだろう)
パーティーとして過ごす時間は、まだ短い。
それでも、こうして隣を歩く仲間たちのことを、セレスは少しずつ大切に思い始めていた。
「――見えてきたぞ」
ガロンの声に、セレスは視線を前方へ戻した。
街道の先。木々の合間から、何者かが激しく争っているような気配が伝わってくる。
「早速か」
「厄介事には、めっぽう好かれてるわね。あんた」
「悪い気はしないな」
軽口を交わしながらも、四人は自然と戦闘態勢に入っていった。
新たな依頼――そして、その先に待つ何かへ向けて。
彼女たちの歩みは、止まらない。
あとがき
第十一話をお読みいただき、ありがとうございます!
ここから後半、街道で起きる事件編に入っていきます。
湖の村での出来事を経て、セレスたちの結束も少しずつ強くなってきました。イリスの物憂げな表情も、少し気になりますよね……。彼女の過去については、もう少し先で本格的に描いていく予定です。
そして、女神の再登場フラグもさりげなく置いてみました。剣術の心得の謎がいつ回収されるのか、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
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