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女神の勘違いで女の子に転生した俺、ギルドで測定不能と言われたけど普通に無双してました  作者: 夜華カナタ
第一章 無色判定、はじまる

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第十話 無色の一歩

大きな戦いのあとに来るのは、だいたい休息……のはず。


でも、冒険者の野宿はそんなに甘くありません。

少しずつ縮まる距離と、静かな夜のお話です。

湖の村に到着すると、事情を聞いた村人たちから大変な歓迎を受けた。


「本当にありがとうございます! あの化け物のせいで、漁もできなくなっていたんです」


村長らしき老人が、深々と頭を下げる。

ミュゼは懐かしそうに周囲を見回していた。


「久しぶりです、村長さん。皆さん、お元気そうで良かったです」


「おお、ミュゼちゃんじゃないか! こんなに立派な冒険者になって……」


涙ぐむ村長に、ミュゼは照れくさそうに笑った。


故郷に錦を飾る、というにはまだ少し早いのかもしれない。だが、それでも彼女の顔には確かな誇らしさが浮かんでいた。


その夜は、村を挙げての小さな宴が開かれた。


滅多に手に入らないという川魚の料理や、素朴ながらも温かい料理が振る舞われ、四人は久々にゆっくりとした時間を過ごした。


「――にしても、この短期間でよくここまで来たもんだよな」


宴もたけなわの頃、ガロンが酒杯を片手に、しみじみと呟いた。


「無色の新人が、いつの間にか銅ランクで、湖の主まで討伐だ。噂じゃもう、ギルドでも結構な話題になってるらしいぞ」


「そうなの?」


「知らなかったのか」


「別に、噂とか気にしてないし」


あっさりと答えるセレスに、イリスが小さく笑った。


「そういうところ、あんたらしいわね」


「褒めてる?」


「さあ、どうかしら」


はぐらかすようなイリスの返答に、セレスは肩をすくめた。

この数日ですっかり見慣れた反応だった。


「私、思うんですけど」


ミュゼが料理を頬張りながら、口を開いた。


「セレスさんって、本当は無色なんかじゃなくて、ただ『測れない』だけなんだと思うんです」


「測れない?」


「はい。数字にできないだけで、力がないわけじゃない。むしろ、数字にできないくらい、いろんな可能性を持ってるってことなんじゃないかなって」


思いがけない言葉に、セレスは一瞬、言葉に詰まった。


「……大層な解釈だな」


「褒めてるんですよ、これでも!」


むくれるミュゼに、セレスは小さく笑った。


(数字にできないだけで、力がないわけじゃない、か)


悪くない言葉だった。

少なくとも、ギルドの水晶よりは、よほど的確な評価かもしれない。



宴が落ち着いた後、セレスは一人、村外れの丘に登っていた。


夜風が心地よく、星空が驚くほど鮮やかに見える。

前世では、こんなにも星を意識したことはなかった。


「――ここにいたのか」


振り返ると、ガロンが少し離れた場所に立っていた。


「何か用?」


「いや、ちょっと言っておきたいことがあってな」


ガロンは頭をかきながら、居心地悪そうに続けた。


「最初、お前を無色だからって追い返した時のことだが」


「もういいって、それは」


「いや、ちゃんと言わせてくれ。あの時の俺は、鑑定の結果だけで、お前という人間をまったく見ていなかった。それは間違いだったと思ってる」


真剣な表情でそう言うガロンに、セレスは軽くため息をついた。


「大袈裟だな」


「大袈裟でいい。俺は今回のことで学んだんだ。測れるものがすべてじゃない、ってことをな」


その言葉に、セレスはふと空を見上げた。


数え切れないほどの星が、夜空を埋め尽くしている。


「――まあ、悪い気はしないよ」


「そうか」


「うん」


二人はしばらく、何も言わずに星空を眺めていた。



翌日、村を発つ四人を、村人たちが総出で見送ってくれた。


「またいつでも来てくださいね!」


村長の言葉に、ミュゼが元気よく手を振る。

ガロン、イリス、セレスも、それぞれの形で村人たちに別れを告げた。


町への帰り道、セレスは自分の手首の紋様に、そっと触れた。


(無色から、ここまで来たか)


女神の勘違いから始まった、この奇妙な人生。


振り返れば、たった数日の出来事だったはずなのに、ずいぶんと遠くまで来た気がする。


「――何、一人で感傷に浸ってるの」


隣を歩くイリスが、からかうように声をかけてきた。


「別に。ちょっと考え事」


「難しい顔して」


「これが素だよ」


「あら、そう」


軽口を交わしながら、セレスはふと、パーティー全員の顔を見回した。


ガロン、ミュゼ、イリス――それぞれ違う理由でここにいる仲間たちが、当たり前のように隣を歩いている。


前世では、想像もしなかった光景だった。


(これから、どうなっていくんだろうな)


女神が渡した正体不明の力。

まだ隠されている、この体に染みついた何か。


イリスの過去、ミュゼの故郷、ガロンの過去の失敗――知らないことは、まだたくさんある。


それでも、不思議と不安はなかった。


「――さ、帰るか」


セレスは軽く伸びをすると、仲間たちとともに町へと続く道を歩き出した。


無色と呼ばれた少女の物語は、まだ始まったばかりだった。

あとがき

第十話をお読みいただき、ありがとうございます!


これで「出会いと結成」編は一区切りとなります。


女神の勘違いから始まり、ガロン、ミュゼ、イリスとの出会い。無色のまま銅ランクへ上がり、湖での大冒険へ――ここまで駆け足で進んできました。


読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!


ミュゼの「測れないだけで、力がないわけじゃない」という言葉は、実はこの物語全体のテーマにもつながる一言だったりします。


次の話からは、さらに新しい依頼や強敵、そして仲間たちの過去にも踏み込んでいく予定です。


長く続けていく物語になりますので、気長にお付き合いいただけますと嬉しいです。


★評価・ブックマーク・感想は、いつも本当に励みになっています!

次話もぜひよろしくお願いします!

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