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女神の勘違いで女の子に転生した俺、ギルドで測定不能と言われたけど普通に無双してました  作者: 夜華カナタ
第五章 鎖の少女、選ぶ

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第百三話 鳥の主

羽の調査結果が返ってきます。

 三日後、ギルドの上役から呼び出しがかかった。


 同じ小部屋に、セレスとアルトが向かう。机の上には、あの白い羽の入った封筒が、そのまま置かれていた。


「――分かったことだけ、話す」


 上役は、椅子に深く座り直した。


「あの伝令鳥は、王都駐屯軍の国境監視隊のものだ。配備先は、国境沿いの監視所が中心になる」


「国境沿い」


「ラーレンにも近い」


 アルトが、地図を思い浮かべるように、目を細めた。


「――偶然にしては、出来過ぎてるな」


「俺もそう思う」


 上役は、指先で机を叩いた。


「その監視隊には、半年ほど前から、内部監査が入ってる。理由は非公開だが、噂では、報告に不自然な空白がある部隊らしい」


「空白」


「本来、定期的に届くはずの調査報告が、時折、途絶える。今回みたいに、伝令鳥ごと消えることも、これまでに何度かあったそうだ」


 セレスは、拳を握った。


「――握り潰されてる、ってことか」


「断定はできない。だが、可能性としては、ある」


 上役は、封筒をアルトの方へ押しやった。


「これは、もう俺の手には負えない案件だ。上に報告は上げるが、時間がかかる。お前らは、いつも通り、自分の目で見た分だけを信じて動け」


「――助かる」


 アルトが、封筒を受け取り、懐にしまった。


 ◇


 宿への帰り道、セレスは黙って歩いていた。


「――考えてるな」


 アルトが、隣を歩きながら言った。


「もし、王国の内側にも、あの組織と繋がってる人間がいるなら」


「敵の形が、変わる」


 アルトは、静かに頷いた。


「今までは、地下に潜む黒い柱と、その周りの連中を潰せば良かった。だが、正規の軍にまで根が伸びてるなら、話は別だ」


「どこまで、信用していい」


「分からない。だから、今の段階で誰かを疑いすぎるのも、危険だ」


 アルトは、空を見上げた。


「敵の階段が、俺たちが思ってたより、何段も上まで続いてるかもしれない。それだけは、頭に入れておけ」


 セレスは、拳を開いた。


「――上まで、って、どこまでだ」


「それを知る為に、これから調べる」


 アルトの声は、静かだが、揺るぎなかった。


 ◇


 その夜、宿の食堂では、いつもの面々が、静かに食事を囲んでいた。


「――今日の話、聞いた」


 イリスが、スープを口に運びながら言った。


「王都の中にも、敵がいるかもしれないって」


「まだ、可能性の段階だ」


 セレスは、そう答えた。


「可能性でも、嫌な話ね」


 レイフィアが、眉をひそめた。


「今まで、王都だけは安全だと思ってたのに」


「安全な場所なんて、最初から無かったのかもな」


 ガロンが、椀を置きながら言った。


「だが、それが分かった今の方が、まだましだ。気づかずに背中を預けるより、ずっといい」


 その言葉に、誰も反論しなかった。


 ミュゼが、少し明るい声で場を継いだ。


「――でも、こうやって皆で話し合えるだけ、まだ大丈夫です。一人で抱え込むよりずっといい」


「――そうだな」


 セレスは、小さく笑った。


 手首の紋様に、指先で軽く触れる。今日は、まだ何の反応もない。


(――リン、聞こえてるか)


 答えは、返ってこなかった。それでも、繋がりが切れていないことだけは、はっきりと感じ取れた。


 円卓には、まだ一つ、空いた席があった。だが、その空白は、今日の話し合いの輪から、誰も外していなかった。


(――ノアなら、ここで何て言うだろう)


 考えて、セレスは小さく頷いた。


(――たぶん、『道を選べる人が増えるように』とか、そういうことを言う)


 窓の外、王都の夜は、いつも通り静かに更けていく。


 だが、その静けさの内側で、信じていい人間の輪郭が、少しずつ描き直されようとしていた。


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