8:漆黒の腕章(バン·ドジェット)
次回は主人公の視点に戻ります。
ノ=ノンカラット
ノ「あの”イグア・ノードン”と「祝福の翼」の副翼、”モリガン・ケットシー”が接触しました」
?『ごくろうだ、ノンカラット。引き続き「祝福の翼」の監視を……』
ノ「かしこまりました……」
スナップ達のやり取りを監視していた、ノンカラットと言う男。
ノ「これでよしっと……高級品とは聞いていたが、便利だねぇ~”キバスレブ”はよぉ……」
「キバスレブ」と言うのは、魔力念波を搭載した通信機の事だ。
ノ「しかし、王国も必死だな。俺たち”漆黒の腕章”を使ってまで”終わらない五月”の終幕を阻止したいんだな」
王国が何故何度も繰り返される五月を阻止したいのかは分からない。
ただ、世界に展開している機密組織である「漆黒の腕章」を動かしているとなると、王国側にも何かしらの思惑があるのだろう。
事実、ケルト王国は「ループ現象」に対して沈黙を貫いている。
この対応により、国中どころか世界中がケルト王国上層部への不満を感じ始めている状況だ。
さらに都合が悪い事に、ループ現象の元凶である「呪い結晶」の情報が「祝福の翼」に漏れたのだ。
よりにもよって、彼らは呪いの効力の無い、「異形症」の集まりだった。
つまり、唯一「呪い結晶」を破壊できる可能性がある者たち。
だが、国は「祝福の翼」を止めることはできない。
もし、奴らを悪者に仕立て上げ、手配書を発行しようものなら、自分たちが隠蔽していた「呪い結晶」の情報をリークされてしまう。
国の信用は失墜してしまうだろう。
ノ「”終わらない五月”は終わらせたくない。だが、国の信頼も地に落としたくない……だから、高い金払ってまで俺たちにすがってるわけだ。滑稽だねぇ~」
国の醜い考えにノンカラットは鼻で笑う。
ノ「しかし、”ノードン”と言ったら、農民と婚約した貴族の男がいたな……たしか”エリオ・ノードン”とか言ったっけ」
エリオ・ノードン……ケルト王国の上層貴族であるノードン家に生まれながら、「プテラ」と言う名の村娘と恋に落ち、上層貴族の地位を捨て籍を入れた。
貴族の界隈では”異常者”と呼ばれた男だ。
ノ「だが、モリガンは奴を”スナップ”と呼んでいた。奴は”イグア・ノードン”では無いのか? もし本人なら、何故自分が”イグア・ノードン”だと否定しない……?」
それに、もう一つ興味深い事があった。
ノ「スナップは一度死んだとモリガンは言った。どういう事だ? 死んだ奴はループしない。それが今までの常識だ……」
つまりスナップは死んでもループ現象に巻き込まれる”イレギュラー”だ。
そんな奴は他に見たことが無い。
ノ「これは厄介な”害敵”が増えたな……だが、都合が悪い訳じゃない」
ノンカラットは右手で額を抑えながら、笑う。
ノ「奴らは一つ過ちを犯した。本来ならスナップ……いや、イグア・ノードンを引き入れるべきじゃ無かったんだよ……」
この話はカクヨム様でも公開されています。




