事情聴取を受けますか?
後続のパーティに逐一、事情を説明しながら戻っていく。
確証はないが、飼い慣らされた仲間を取り戻そうと野生のサンド・リザードらが紛れ込んできたことが今回の騒動の真相と見て間違いはないと思う。ただ、それが洞窟側の管理不行き届きかどうかまでは分からんが。
入口の管理事務所に着くと非常事態なのは伝わっていたようで、すぐに職員らが駆けつけてきた。俺たちも当事者ということで事情聴取をされる。
所長が対応してくれたのだが、顔面蒼白だったのが印象的だった。まさかこれだけのVIPに対応する事なんて今までなかっただろうし、その御仁らを危険な目に遭わせたとなれば当然の反応だ。
心中察するに余りある。
とは言えども全員が無事なのだから、寛大な処置を望むところだな。四人ともあまり起こった様子ではないし。
やがて聴取が終わると俺たちは待機を命じられた。来賓用の部屋に籠りながら音沙汰を待つ間、俺たちは全員が引っ掛かっていたカリアトスの驚異的な攻撃の話題を持ち出した。
「それにしても…カリアトスのアレはなんだったのですか?」
「分かんない。夢中で殴ったらあんな風になってさ」
「カリアトス。君の魔導具を見せてくれる?」
「え? うん」
俺は差し出されたメイス型の魔導具を受け取って、あちこちを眺めた。
先端部分が内側から破裂したみたいに裂けている。鈍器として扱う事も想定されているこの武器をここまで破壊したとなると、発生したエネルギーの大きさは計り知れない。
同時に色々な状況証拠から、一つの推論は持てた。
俺は魔導具の整備士じゃないから、あくまで推論の域を出ないが。
「多分、『ノッキング』を起こしたんだな」
「ノッキング?」
「そう。強いて表現するなら異常爆発、とでも言えばいいか。カリアトスは元々持っている魔力の総量が人よりも多いんだ」
「そーなの?」
「ああ。だから精密なコントロールが苦手なのさ。それを補うためにATの魔導具を使ってた訳だけど…今回は状況的にかなり焦っていたからな、モマさんを助けようと無意識に大量の魔力を流し込んだ」
「その結果、ノッキングを起こして魔導具は損壊。その代償として常人では考えられないようなパワーが出せた、と」
モマさんが華麗に話をまとめてくれた。ゴーレムを操っていたところから考えても、やっぱり魔工学の知識も持ち合わせていると見て良さそうだ。
それを聞いたカリアトスは一人、気分を高めていた。
「す、すっげえ! ノッキングっていうの? 必殺技みたいじゃん!」
まるで少年のように目をキラキラさせるカリアトスだったが、構造や性質を知っている俺とモマさんは反対に暗い表情になる。
水を差すようで悪いが誤解は早いうちに解いておかなければなるまい。
「そうは言うがな、カリアトス。あまり褒められたものじゃないぞ?」
「何で?」
「まず第一に危ない。現にさっきだって右手が完全に潰れていた。治癒の加護がなければどうなっていたことか」
「それに暴発がたまたま上手くいっただけかも知れません。場合によっては自分や周りを巻き込んで、更に悲惨な事になっていた可能性もあるのよ?」
「で、でも…」
「他にも必殺技っぽいと言ったけれど、どちらかと言えば自爆技だ。魔導具一個につき一回限定のな。その後、魔法に関してはほぼ使えなくなるし、金銭的な問題だってある」
「とにかくリスクとリターンが釣り合ってはいません。今後は使わない方が…」
といつの間にか二人そろってお説教モードになっていた。
それをリーヴェとノワールに諫められる。
「レギオン先生…」
「モマ先輩も待ってください。カリアトスが…」
「え?」
見ればカリアトスは身を竦めていた。
そればかりか唇を噛みしめ、今にも泣きそうになるのを堪えている。そして目尻に溜まった涙の雫が一滴だけ流れ落ちたところで慌ててフォローに入る。
「す、すまん! 暴走の危険性を伝えたかっただけで、別に責めている訳じゃないんだ」
「ち、違くてぇ…」
「え?」
「だって…やっと役に立てると思ったのに」
「役に立つってどういうことだ?」
「リーヴェはリーダーシップあって、めっちゃ魔法上手いし。ノワールもカパタピがいて、召喚とかすごい事できて…それなのにオレだけずっと魔法が下手なまんまで…迷惑かけたり…卒業もできないかも知んないのに」
えずきながらもカリアトスは胸中を吐露する。
その独白にそろって唖然としてしまった。
「何を言ってるんです、カリアトス。ずっと役に立っているではありませんか」
「え?」
「そうですよ。先ほどだって魔物の正体をいち早く突き止めてくれたじゃありませんか」
「だぜ、嬢ちゃん。オレ様たちの中で一番実戦経験があるんだからよ、役に立ってないなんて言うなよ」
「それにカリアトス。あなたがどれだけ私達の安定要素になっていると思っているの? そうですよね、レギオン先生」
モマさんの有難いパスに俺は力強く頷く。
「その通りだよ。強力な治癒者の君がいるから、多少の無茶や駆け引きができるんだ。どんなパーティだって治癒者が要になる。怪我をしても回復してもらえるという潜在的な安心感は計り知れない。役に立ってないなんて勘違いも勘違いだ」
「…うん」
そう返事をしたカリアトスにぎこちないながらも笑顔が戻ってほっとする。
すぐにリーヴェとノワールが両サイドを陣取って彼女を慰め始めた。こんないい歳こいたおっさんの慰めより、友達の温もりの方がよほど心に染みるだろう。
と言っても気まずい事には違いない。俺は逃げるようにモマさんに話を振っていた。
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