時空を越えて
バッゴオオオオオオン!
「ぎゃぁあああ!いてえ!ちきしょおおお!」
気がつくと俺はどこかの家の路地裏にいた。
背中から積まれた木箱を押し潰し、中に入っていた果実の汁まみれになる。
「くっそいてぇ。死ぬ…」
腹いせに果実を頬張った。
魔力はもう暴走しておらず、至って普通だった。
しかしここどこだ?
まさか知らない場所に移動したって事ねーよな?
「なんだこれ、超うめぇじゃん!」
適当に食べた果物はかなり美味しかった。
「こらてめぇ!こそ泥ッ!」
「うわ!やべっ!」
この騒ぎを聞きつけてきた家の人なんだろうか、オッサンは俺を視界に捉えた瞬間、こそ泥呼ばわりした。急いで路地裏から逃げ出す。
「待てこらあ!逃がすか!」
路地裏を曲がった時、壁に黒色のフード付きのマントのような物が掛けてあった。
「これだ!」
すぐにそれを取って羽織る。そして腕に抱えた果物をフードのポケットに放り込んだ。
「しめしめ」
路地裏を抜け出し、人混みの中へと入って行く。
「くっそあの野郎!今度会ったらタダじゃおかねえからな!」
オッサンはどうやら見失ったようだ。それを見届け、俺は人混みの中を歩いていった。
「…………」
さっき盗んだ果物をボリボリ食べながら、どこか見覚えのある街並みだなと思いながら歩いていた。
服装や武器はどこかへ飛んでいくことなく無事だったのは良かった。少しだがお金も持っているし、なんとかなりそうだ。
「つかここセントブルグじゃね?」
見覚えのある場所だと思っていたら、よく見たらセントブルグの城下町だった。
「なんでセントブルグにいるの俺!? つか復活した魔神ってどこよ!?」
セントブルグでは魔神とやらが復活してるような騒ぎはなく、普段通りの平凡な町並みだった。
「レイラ…」
魔王によって消された仲間達が頭を過ぎる。
「くそっ」
ここはセントブルグだ。これからどうする?魔王城まで戻るか?戻ってどうする?魔王を殺すのか?レイラを殺されているのに?先に魔神って奴らをぶっ殺しにでもいくか?
「あー、くそっ!」
魔神って奴らをぶっ殺したって、あいつらを助けれなかった自分への罪滅ぼしにしかならないし、あいつらはもう戻ってこない。
そう考えると何をしたらいいのかわからなくなり、苛々するばかりだった。
ザワザワ ザワザワ
「ん? なんだ、騒がしいな…」
壁にもたれて廃れていると、すぐ近くで人溜まりができ始めた。と言うよりか、お祭り騒ぎのように人と物で賑わっていた。
お祭り騒ぎ?
「早く見にいこーぜ!次決勝戦だってよー!」
「いこいこー!」
小さな子供が友達と一緒に遊んでいるのだろう。目の前をはしゃぎながら通り過ぎて行った。
「決勝戦、デュークとリオンだってよー!」
「どっちが勝つんだろうねー?」
「やっぱデュークじゃね? まじ強!!」
───ん? ちょっと待て。
子供達が騒いで言った言葉に引っかかった。
バンッ バンッ
空高く、空砲が鳴る。
この景色、見た事がある。
『それではお待たせしましたー』
街中に響くようなアナウンスが流れる。
『第35回セントブルグ国主催、武闘会、決勝戦!』
そうだ。これは武闘会。そのお祭りだ。
だが、違う。
『赤コーナー。デューク選手!』
ワアアアアアと向こうに見える大きな建物から大歓声が聞こえる。
『対する白コーナー。アルガード魔法学校4回生、リオン選手!!!』
これは、俺の知っている武闘会では無い。
それに、デュークとリオン!?
リオンはともかく、デュークは魔王城で殺された。
でも、今目の前で起こっている事は現実で。
リオンは、4回生……。
この事実から導き出される結論。
「過去に……タイムスリップした?」
いやいやいや。
想像したことはあるが、まさかまさか。ってやべぇだろこれ!普通に考えてやべぇだろこれ!タイムスリップしてんじゃんかよぉおおおお!いったいどうなってんだよおおおお!
「す、すみません!通して下さい!」
俺の目の前を、制服姿のレイラが通った。ふわっとした良い匂いが漂う。自然と手が伸びていた。
「あ……」
やっべぇええええええええ!普通に声かけるところだったぜええええ!ちきしょう!喋ることもできねーのかよおおおお!これから俺どうしたらいいんだよおおおお!ちくしょおおおおおおおおお!
───
──
─
「………」
ボリボリと額を掻く。
俺は町の噴水まで歩き、ベンチに座ってこれからについて考えていた。
俺がこの国に来た時には、もう既にこの俺がいたって事だ。ここまで何事にも巻き込まれてきた俺が、何事も表に出ずに一年以上過ごしていたという事になる。上手いことやってたんだな。
しかし、知り合いには喋ることはできない。目立つような行動はできない。この2つを制限されると、この町では生活できないよなぁ~。
ま、今はまだ魔王が復活する1年前だと分かったからそれについては心配することは無い。
そうだ。
戦争の事は手紙で伝えたらいいんじゃねえの?
そうすりゃ姿を見られることはないし。
というか、誰に渡すよ?
うーん、デュークは無理。
他、もっと上手いことやりそうな人。
器用でセンス抜群な人。
って、1人しかいねーな。
ナミさんか。
いつ渡そう?
今渡しても信憑性低そうだし、異変が起き始めてからでいいか。
「よし!とりあえず、他の国だな。適当に出かけようか。すんまっせーん!」
「はい、何でしょう?」
「あの、料理の美味しい国と女の子がたくさんいる国ってどこか知ってます?」
「あら、面白い事を尋ねてくる坊やだね。えっとね…」
「ふんふん」
この先、俺の行動一つで世界が変わるかもしれないが、そんな事気にしてられねーな。何もしないよりはマシだ。少しくらい強くなってやるか!!
いつか来る。
その日に向けて。
to be continued...
2章完
3章から俺TUEEEE始まります




