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武闘会終局 災厄降臨




ワアアアアアアアアアア!!



「う…」



大歓声が耳に届き、目が覚めた。天井から照らされた電気が見える。



確か俺は……。座り込んで眠ってしまったはず。



控え室へ辿り着いたは良いものの、そのまま扉を背もたれにして座り込んだ所まで記憶が覚えていた。しかし今は仰向けに寝ており、何故か頭が気持ち良い。ふかふかする何かを枕にしているようだ。



ふと、目の前が真っ暗になる。



「こら、まだ寝ておけ」



俺の目の前にレイラがいた。どうやら、レイラが膝枕をしてくれていたようだ。



「なんで、ここに?」



起き上がる気力が無く、そのままの状態でレイラに問う。



「ユウ、控え室へ戻る時ふらついていただろ。心配で見に来たんだ」



「……確か、ここは選手以外入れないんじゃ?」



「何とかして通してもらった」



「はは、レイラらしいや」



「もう喋らなくていいから、そのまま寝ていろ」



そう言ってレイラは俺の頭を撫でる。



なんだこれ、凄く気持ちが良い。それにいい匂いがする。そんな事を考えていると、再び眠りの世界へ落ちていった。



「あんなになるまで無理して本当に頑張りすぎだ。本当に心配したんだぞ…」



レイラの呟きは当の本人へ聞こえることなく部屋の中へ溶けていく。



控え室へ入った時、汚物を撒き散らして倒れているユウ見てレイラは相当焦った。いびきをかいている所を見て安心はしたが、ここまで人体にダメージを負う魔法なんて見たことがない。



どうか、無事に試合が終わりますように。そう願いならレイラはユウを介抱するのであった。






ーーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー





「ユウ、もうすぐ試合だ。起きれるか?」



レイラがペちペちと俺の頬を叩く。



「…う…あ、ありがとう。だいぶ楽になったよ」



先程目覚めた時よりも身体が軽くなっていた。上半身を起き上がらせ、背伸びをする。まだ魔力は溜まっていないが、身体は動く。



「本当にありがとうレイラ!助かった!」



「無茶しすぎだ。今日はもう魔法は禁止だからな?」



「そうだな、今日はこれ以上使うと冗談抜きで死んじまいそうだ」



「心配ない。負けても準優勝だ!今日は祝勝会だぞ!ユウの奢りだけどな!」



「あー!忘れていた!!つか勝ったのに俺の奢りって変じゃね?」



「もう約束したからな。変更不可だ」



「分かった分かった。そうだな、今日は祝勝会だ!ぱーっといこうぜ!!」



「はは、そう来なくっちゃ」



レイラが笑いかけてきた。本当にこの笑顔は心を落ち着かせてくれる。



「レイラが来てくれて本当に助かったよ、ありがとう。優勝賞品のおっパイは膝枕でチャラで良いよ」



「そ!それは私の沽券に関わる!!」



「そうムキになんなって。んじゃー、優勝したら俺とデートしてくれ」



「ででで、デート!?」



「はい、決まりな。よろしく!」



「………まったく……優勝…しなくても……そのくらいなら……本当にお調子者だな、バカ!」



レイラが頬を赤くする。これを見たかったのだ。



「まあでも、やるだけやってみるよ。どうせなら優勝の祝勝会の方が良いからな!!」



「本当に無理だけはするなよ!」



「大丈夫大丈夫。もう生身で戦うさ。どうせデュークが勝ったんだろ?」



「ああ、そうだが……」



そう言ってレイラは準決勝2試合目の内容を教えてくれた。デュークは勝ったことは勝ったが、結構ぎりぎりの戦いだったようだ。準決勝の時に起こしてくれたあのおじいさんはかなりの実力者だったみたいだ。ほぼデュークと一緒の強さだったとか。



勝負を決めたのはスタミナだった。30分以上も激しい戦いをしていたらしいが、その時点であのおじいさんのスタミナは俺よりは確実に上だ。どう足掻いても勝つビジョンが全く浮かばない。



『10分のインターバルが経ちました。それでは、待ちに待った決勝戦を行いたいと思います。両者とも入場してください』



ワァアアアアアアアアアアアアアアアアア!



「よし、行ってくるか!」



コロッセウムはこれまでよりも大きく鳴いた。その声がする方へ俺は歩いて行く。



「ま、待ってくれ」



ドアを開けようとした時、俺の腕が引っ張られた。振り向くと、レイラが俯いていた。



「どうした? レイたんらしくないぞ?」



「…し、心配なんだ!ユウが傷付いている所を見ると、凄く胸が苦しくなるんだ!だから…」



言葉を溜める。



「勝ってくれ!」



「任せろ。秒で決めてやる!」



レイラの真剣な眼差しに心が鼓舞する。強いエールを貰った。



「あと、今日は2人きりで話がしたい。祝勝会終わってから時間作れないか?」



「ああ、大丈夫だ。俺も話がしたかったし。ってかもう俺が勝った気でいるのかレイたんは」



「う、うるさい!負けたら承知しないからな!」



「相手がこの国の軍隊長でも?」



「当たり前だ」



「ははっ、どんだけスパルタなんだよ。よし、じゃあ、俺が帰ってくるところをここで待っててくれよな!!」



「ああ、待ってる!絶対に負けるなよー!!」



これ程心強く感じた声援があるだろうか。レイラの応援を背に受け、皆が待つ会場へと向かっていった。





ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー





『さて両者とも出てまいりました!赤コーナー、ユウ選手!』



ワァアアアアアアア!



『対する白コーナーは前回、そして前々回と優勝したデューク選手!』



ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



デュークはやはり人気だ。まあ仕方ないか。



『デューク選手は3連覇に王手をかけました。ですがお互いの実力は五分五分と見ていいでしょう!』



全然違ぇよ。もう魔力なんて空っぽだ。さて、レイラに啖呵切ったは良いものの、どう戦おうか。小手先のその場しのぎでどうにかなる相手ではない。



「まさか本当に決勝まで上がってくるとはな。だが、容赦はしないからな?」



「……………」



こりゃ本当に容赦はしなさそうだ。



『さて、それでは決勝戦。始めたいと思います。準備はよろしいですかぁ?』



「ああ、いつでも!」



そう言ってデュークは剣を抜いて構えた。



「……………」



対する俺は刀を抜き、両手で握って剣道のいつもの構えを取った。



『それでは………決勝戦……………試合、開始ィイッ!』



ウーーーーーーゥウウウーーーウウウウ!!!ウーーーーゥウウウウーウウウウウー!!!!



「ん?」



決勝戦が開始したと同時にけたたましいサイレンが鳴った。このコロッセウムだけじゃなく、この国全体で鳴っているような響き方だ。



「こ、これは軍のサイレンじゃないか!?どうしたんだ!?」



デュークが剣を納めて言う。



ナンダナンダ?

ドウシタンダ?



観客もざわつき始める。



『失礼します!!皆さん!!落ち着いて聞いてください!緊急事態が発生しました!!観客席の皆様は直ちに椅子の転送装置を起動してシェルターに移動して下さい!!ユウ選手とデューク選手は申し訳ありませんがもう少しだけお待ちください!!コロッセウムの周りにいる人も皆速やかに観客席へ避難して転送装置を使ってください!!!!早く!!!!』



なにやら緊急事態が発生したらしい。尋常ではない焦り方だ。



『は、早く!もう時間が!!!』



司会者がここまで喋った時、それは突如現れた。






ギャオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオ!!






闇よりも黒く禍々しい鱗に覆われ、光輝くその二つの瞳はマグマのように紅く、全てを燃やし尽くしてしまいそうな感覚を覚える。そしてなによりもその巨体。両方の翼を広げると全長100mは軽く越えているだろう。『闇』その言葉がピッタリのドラゴンがコロッセウムの上空に滞空していた。そして我々を見下ろしている。



キャァアアアアアアアアア

ドラゴンダアアアアアア

ハヤクニゲロオオオオオ



会場は騒然とした。



「なんで……こんなところに……奴はイルバーレを根城にしていた筈じゃ……」



デュークは信じられない物を目にした表情だ。



「やばい!皆早く転送装置を起動させるんだ!」



デュークが叫ぶ。そんなにやばい奴なのかこのドラゴン。俺が最初に見たドラゴンよりは確実に悪そうなドラゴンだけどあんまりわからないや。



『皆さん落ち着いてください!装置起動ボタンは手元にありますので焦らず押してください!皆さんお願いです!どうか落ち着いて行動してください!!!』



いやいや、まずお前が落ち着けよ。



コレガオイツイテイラレルカア

ハヤクキドウサセロ!!

マッテ!マダアノコガ!



「くそ!これはまずい!見ろ!奴がブレスを吐くぞ!おいコロッセウムの管制室!強制でさっさとみんなを転送させろ!」



デュークの言葉でドラゴンを見てみると、確かに口の周りに炎が集まり出していた。しかも紫色の炎だ。



「何でそんな騒いでるんだ?このコロッセウムは防御壁があるんだろ? ならあんな炎は平気なんじゃねえの?」



「違う!奴の炎、紫炎は何がなんでも焼き尽くす炎だ!例えそれが魔法でもな!!それに触れでもしたら一巻の終わりだ!その身を焼き尽くすまで消えない炎だアレは!!」



「まじかよ……」



周りを見るが、騒ぎは収まらない。観客の殆どはパニックで転送装置をまだ作動させていなかった。デュークが奥歯を噛み締めている。対抗手段が何も無い証拠だろう。



「…………」



距離は……いけそうだ。多分、問題無い。



「お、おい、お前何をする気だ!?」



奴に向けて手を伸ばす俺を見て、デュークが焦る。



俺の魔法の本質は、自分の時間を周りから切り取り、自由自在に進み方を変えられる事だ。そしてそれを自分以外にも付与する事が出来る。…だから、その逆、奴をこの時間軸から切り離し、遅くすることも出来るはずだ。それは俺に莫大な魔力があればの話だがな。



キャアアア!!

ハヤクヤレヨオ!!!

ニゲロニゲロー!!



だが、魔力が無いからって、この人達を見捨ててよいものか?



魔力が無くても魔法を使う手段はこの前教えてくれた。



「ユウ!!!」



試合会場の扉が勢いよく開き、レイラが叫んだ。よく見るとレイラの脇にナミとリリィがいてレイラを取り抑えている。



「わりい、レイラ。今日の祝勝会いけねーや」



「ユーーウ!!!!」



レイラは必死に叫ぶ。ナミに行ってはダメと言われながら抑えられているが、必死に俺の方へ行こうとしている。



「お、おい、お前!」



「会場の皆良く聞けー!!!!俺があのドラゴンの動きを止めるからその間に逃げるんだ!1分は確実に止める!だからその間に外の人もみな避難させろ!いいなぁあああ!」



俺は声を張り上げた。



多分、この魔法を発動すれば俺はただじゃ済まないだろう。だが知った事か。この世界に来て、この街に来て、まだまだ知らない事だらけかもしれないが、触れてしまった。この街の人の温もりに触れてしまった。特にレイラ。あいつは本当に心の拠り所だった。ギルドの皆もわいわいがやがやと快く受け入れてくれて、右も左も分からない俺に良くしてくれた。そんな奴らが、この街が、少し好きになっちまったんだ。こんな突拍子もないドラゴン如きで奪わせやしない。やれる手段があるなら、やらないで後悔するよりかは、今やって死んだ方がマシだ!!!



「エンチャント、アクセルゥウウウウ!!」



俺は魔法を発動した。その瞬間、ドラゴンの動きがどんどんと遅くなっていき、ほぼ止まったと言っていい程までスローモーションになった。魔法は成功したようだ。



ナッナンダ!

ドラゴンノウゴキガ!



「はやくっ!今の内だぁあああ!避難しやがれぇえ!」



『これはユウ選手の魔法なんでしょうか!?ドラゴンの動きが遅くなりました!』



「何を実況してやがる!奴の時間を遅くしたんだ!あと1分で避難しろ!それが限界だ!…ぐぅ!がああああ!」



頭が割れそうな程の痛みが襲う。足の力が抜け、膝から落ちた。



『あと少し、あと少し頑張ってくださいユウ選手!皆さん!今のうちです!焦らず転送装置を起動させてください!!!』



ガンバレエエエエエエエ

ガンバレエエエエエ

ガンバレエエエエエエエエエ


オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



観客から必死の声援が上がる。少し力が沸いてきた。…が、しかし。



「ぐぁああああああっ!」



限界がきてしまった。頭が割れそうな痛みがさらに酷くなる。平衡感覚が狂ったように上も下も左も右も分からなくなる程、目の前がぐるぐると回る。



「おい、お前!もうよせ!それ以上は!」



デュークは俺の肩を揺さぶってくる。



――やめろ。魔法が途切れる。



「がぁあああああああ!」



頭が裂けそうだ。もう視界なんて真っ白でほぼ見えていないが、ドラゴンの黒い姿はまだうっすらと見えている。鼻血がボタボタと垂れてくるがそれでもまだ止めない。



「やめろ!死ぬぞ!」



――ああ、死んでもいい。だから黙れ!



「ああああ゛ぁああ゛あ゛あ゛ああぁあ゛あ゛」



もう周りの声は聞こえなくなった。俺はまだまだ魔法を止めない。ただ、死んでも皆を助けてやる、その想いだけに魔法を発動し続けた。



それから何秒経ったか、何分経ったか、時間感覚すら分からなくなった俺だが、魔法だけはを発動し続けた。



『ユウ選手!!本当にありがとうございました!!残っているのは私とデューク選手とユウ選手だけです!!試合会場の控え室入口付近に転送装置を用意しましたので、直ちにお二人共お逃げ下さい!!!それでは!!!』



何万人という人で埋め尽くされていたコロッセウムは既にもぬけの殻だった。人一人見当たらない。この会場の周りにいた人含め、全員避難できたみたいだ。



「ぁあ゛ぁあ゛ぁああぁあ゛ああ゛あ゛あああ」



「おい!もう皆無事に転送された!もうやめろ!お前が死んでしまう!」



デュークは俺の肩を必死に揺さぶって魔法を止めようとする。しかし俺は魔法を発動し続ける。



俺はもう何も聞こえないし見えてもいない。観客が無事に避難できたなんてわからない。もうこうなった時点で魔法を止めることなんてできなくなった。力尽きるまで魔法を使い続けると覚悟した。



「死ぬなあああっ!」



「がっ………」



俺が魔法を止めないとわかったのだろう、デュークは俺の首筋に手刀を当てた。殆ど脱力していた状態だったので、意識を簡単に手放した。



グオオオオオオオオオオ!!!



ドラゴンの動きが元に戻った。紫色の炎は一層膨れ上がり地面に向かって放たれた。



「シャイニングエッジ!」



デュークはシャイニングアローよりもさらに大きな光の矢を炎に向けて撃つ。



光の矢と紫色の炎の弾丸がぶつかり爆発した。しかし紫の炎は光の矢を飲み込み、どんどんとデュークたちに迫ってきた。



「くそ……これまでかッ!」



デュークが諦めたその時、どこかから現れた黒い矢が炎に直撃し、炎を消滅させた。



「え?」



さらにもう一つ放たれていた黒い矢がドラゴンに直撃し、大爆発を起こす。



グァアアァアア゛ァアアアアアアア……



どうやらドラゴンにダメージを与えれたらしい。だが鱗の表面を少し削ったぐらいだ。



ギャオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



不意討ちをくらって怯んだのか、ドラゴンは追撃することなく飛び去って行った。



それを見てデュークは胸を撫で下ろす。今のデュークは魔力が少なかった。自分の命とユウの命、両方を奴から守りきる自信が無かった。



「良かった…。しかしユウ…コイツは大丈夫なのか!?」



デュークはユウの側へ駆け寄る。ユウは鼻から大量に血を流し顔面真っ白で血の気が無かった。完全に死人のようだった。



「これはッ!早く回復させないとまずい!」



デュークはすぐさまユウを抱えて走り出した。







ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー









俺は……死んだのか?





真っ暗だ。





何も見えない。





――で――――





ん?なんか聞こえる。誰だ?





――で―――か





なんだ?





だい―ぶ――ですか?





女の声?





「う………」



ついに俺は深い眠りから目を覚ました。



見渡すとバカでかいベッドに寝ていた。部屋も大きく、王室のような豪華さを感じる。そして俺の格好は病院で着る手術服みたいなのを着ていた。



「あ、目を覚ましたのですね。うなされていましたよ。大丈夫ですか?」



すぐ横から女の人の声が聞こえてきた。俺は身体を起き上がらせようとする。



「ぐああぁッ」



「あ!まだ起き上がっちゃだめですよ!」



身体中に強烈な痛みが走った。特に頭。裂けるのではないかと思った。



「ぐうぅ…」



「どうぞ、これをお飲みください」



女の人は小さなポットみたいなもので俺にブルーベリーのような味がする液体を飲ませてきた。身体を動かす事ができない俺は素直にそれを飲む。そして頭の痛さが少しだが和らいでいった。



よく見るとこの女の人はメイドさんだった。



「……こ……こ………は?」



震える声でメイドに尋ねる。



「安心してください。ここは王宮のある一室です。デューク様が運んできてくれたのですよ」



その言葉で俺はあのドラゴンとの戦いを思い出した。



観客たちは無事だったのだろうか。



「あ……あの………」



「少々お待ちくださいね。今すぐにデューク様を呼んできます」



俺が何を言おうとしているのか勘づいたのか、メイドはデュークを呼びに俺に一礼して扉から出ていった。



「……………」



身体は指一つまともに動かせない。それに頭もズキズキと痛む。もう一生このままなのではないのかと不安になった。



それよりも、ドラゴンはどうなったんだ?みんなは?無事なんだろうか?俺の魔法が途中で止まったりしていなかっただろうか?そうなれば…。



「うっ…」



考えれば考えるほど頭が痛んだ。だが嫌な妄想は膨らんでいくばかりだ。



それから数分してデュークが部屋に入ってきた。



「お、目覚めたか」



「うっ…デューク…みんな…は?」



「いい、喋るな」



デュークは俺の側に来て優しく言う。



「お前のお陰でみんなは無事だ。ドラゴンも今はこの国にはいない。安心しろ。それにまだ丸一日しか経っていない」



その言葉を聞いて俺はかなり安心した。みんなは無事に逃げれたみたいだ。良かった。



「あんな無茶しやがって…。細胞がズタズタになっていたんだぞ? それもペンダントの回復速度も追いつかないくらいにだ。まだペンダントを付けていたから良かったものの…。生身だったらお前は死んでいたか、奇跡的に助かったとしても廃人だったんだんだぞ」



デュークの話からすると、俺は試合で付けていたペンダントの効果によって命拾いしたらしい。



「べ……つに………死んで……も良かっ……た……ぐうっ」



「なんだと?」



俺の言葉を聞いたデュークの表情が一転して険しくなった。



「死ん…でも………ぐっ…………良かった」



「ふざけるなッ!死んでもいい命なんて一つもない!」



デュークは声を張り上げた。その声が頭に響いて痛む。



「デューク様…」



「あ、ああ、悪い…。お前は特に死んでもらっては困るんだ。あのドラゴンの討伐にはお前の力が必要なんだ」



はい?今なんか変な話が聞こえたような…。



「お前が完全に回復したらあのドラゴンの討伐に向かう。メンバーはこちらで揃えておく」



え?なに言ってんのこの人。俺があんなドラゴンなんか倒せるわけねえじゃん。



「今はもう休め。また元気になったら詳しく話をする。それじゃ、よろしく頼む」



「畏まりました」



デュークは部屋からでて行った。そして俺はまたメイドさんから薬を飲まされる。今度は苦かった。



薬には催眠成分が入っていたのか、俺は再び深い眠りに落ちていった。



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