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武闘会 <準決勝>



――ほらぁ、あなたの好きなおっぱいよ!

――あーん、私のほうが大きいよぉ!

――あたしもだよお~



ぐへへ!俺は今とても弾力のあるマシュマロに包まれている。とても幸せだ。思う存分むしゃぶり尽くす。



――いやん、くすぐったい!

――ねえもっと!

――あーん、ズルい!あたしも!



ぐひひ。ぐひひ。きもてぃいいいいいい!きもてぃいいいいいい!ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ



――いやぁ…んッ

――あんッ!もっとおッ

――んッんッ あんんッ



夢の中の美女たちと楽しんでいると、誰かが俺の身体を揺さぶってきた。美女たちが揺らめいて消えていく。



「う……ん……やめろ…」



「これこれ、もうお主の番じゃぞ」



しゃがれたおじいさんの声が聞こえてきた。重い瞼を開けてみると白髪のおじいさんがいた。



「………?」



「ほっほっほ。まだ寝ぼけておるのか? 皆お主を待っとるぞ」



このおじいさん。準決勝まで残ったうちの1人だ。銀色のプレートの防具に、両刃の剣を腰に装備している。



「そうか……ありがとう…」



怠い身体を起き上がらせ、ふらふらと歩きながら会場へ向かった。



「大丈夫かの?」



ふらふらと歩いて行く姿を心配そうに見つめる。



『あー!やっと出てまいりました!フラフラ歩いていますが大丈夫でしょうか!?』



開始線まで覚束無い足取りで歩いて行った。目はほとんど瞑っている。



「やっと来たか。ほんま遅かったな。ずっと寝てたんか?」



「…………」



対戦相手はさっきのナイスバディな女の人だった。話しかけてくるが、寝惚けすぎてて何を言っているかまったくわからない。先のヤマト戦で完全に魔欠になったようだ。少しも回復している感じすらない。



「こら!無視するな!」



『えー、両者準備が整った様ですので、只今より、準ッ決勝を始めたいと思いまーす!! 準決勝!ラナ選手対ユウ選手!!どちらが決勝へ駒を進めるのでしょうか!? それでは……』



やばいもう試合が始まる!身体も動かないし頭も回らない!くそっ、無理して魔法使ったからか!?



「ええな? 勝ち負けに恨みっこナシやで?」



ラナと呼ばれた対戦相手は、先が曲がった鉈みたいな武器を両手に構えた。顔つきが殺し屋のそれに変わる。



「ちょ、待って」



『試合、開始ッ!!!!!』



ワアアアアアアアアアア!!!



「いくで!!!!」



試合開始の合図と共にラナは真っ直ぐ向かってきた。対する俺は両手に包丁を構えるだけで精一杯だった。



「もらいや!!」



ラナは両手を振りかぶり、大きく飛びかかって斬りかかってくる。



「くっ!」



俺は大きく後ろに下がって、第一撃目をかわした。



「そんなノロノロで逃げられへんで!」



着地したラナは地面を陥没させる程の踏み込みを行う。それによって生み出せる猛スピードで俺に突進してきた。



顔の前で武器をクロスしながら向かって来るのが見えたのは奇跡と言っていいだろう。反射的に防御をするように突き出した包丁が功を奏した。



俺の包丁にラナの武器が当たり、バリンという音を立てて砕け散る。突進してきた勢いを殺せなかったのか、ラナは俺から数十メートル離れた位置まで走っていた。



「そういや『魔除け武器』持っとったんやったな。その槍だけかと思うとったけど、そのちーっこい武器まで魔除けやねんな。うちの武器が無くなーってしもたわ」



振り向いたラナは手のひらを俺に見せ、おどけて笑う。例え武器が無くても何とでもなる。そう言いたそうな顔だ。



あと、少し。1秒だけでいい。魔法を、魔法を使う魔力よ貯まってくれ。



「もういっーぱいいっぱいやのに闘志だけは消えてへんな。なんか狙うとる。まだなんか隠し持っとるやろ」



答える必要は無い。こいつの言う通り満身創痍もいい所だ。どうにか隙をつく事ができればいいが、ここまで上がってきた選手とあって、既に警戒されている。1回戦の相手のように上手く行く確率は無に等しい。



「なんや黙りか、おもんないわー」



このラナという選手は話しかけて来るが全く気を抜いていない。俺が何か行動を起こそうものなら直ぐに対処しそうな気の張り方だ。



「いや、結構おもしろい事考えているかもよ?」



こんな相手には何やったってダメだ。取り敢えず話だけでも繋いで魔力を回復させよう。



「やっと喋ってくれたなあ。うち、あんたとよう喋りたかったんよー」



「え? 俺に惚れたのか? そっかそっかー、俺カッコイイもんな!!」



「んな訳あるか!どっちかって言うと中の上や!」



「それ結構上の方じゃね!?」



くすくすと観客から笑う声が聞こえた。



「てか試合始まってんのによく喋れるな!俺にやられても知らねーぞ?」



「あんたの試合はよう見とったからな、警戒は十分にしてる。うちはあんたの見た目に騙されへんで。あんたに負けた奴は皆アホやねん」



「アホって言ってやんなよ。ただでさえバカの俺に負けてるのに、さらに俺よりブスだとか言って追い討ちかけるとかお前鬼畜だな!」



「あんたがゆうとるやんけ!つか何サラっと自慢しとんねん!さっきの嬉しかったんか!」



どっ、と観客の一部で笑いが起きた。ラナはそれを見て上機嫌な笑顔になる。



「やっぱうちの思った通り、うちら相性ええわー」



「いやん!私そんなはしたない子じゃないわよ!!」



「そっちとちゃうわ!」



ラナが呼吸を置くまもなくツッコミを入れる。だんだんとテンポが上がってきた。



「話や話。あんた初め見た時からおもろいなー思っとってん。話のリズムとか合うやろなーて思ったらやっぱりやで。試合も試合で色々やらかしてほんまおもろいわ」



「やっぱ俺の事好きじゃん。俺は好きにはなんないけど、サインならあげるよ?」



「んなもんいらんわ!」



「俺の力筆だよおお!!」



わはは。とまた観客席のどこかで笑いが起きる。



「控え室でもモニター見ながら1人でなんやブツブツ言っとったし、突っ込んでくれる話し相手欲しいやろ?」



「俺のナニは突っ込む方だ!」



「ボケとるやろが!」



どっ!!!



会場が一気に沸いた。



「ほんまアホやねんな」



ラナは凄く楽しそうに言う。今が試合中だということを忘れるくらい、会場の雰囲気も柔らかいものに変わっていた。



「アホではない!バカだ!バカは天才と紙一重なんだぞ!」



「そうなんやー」



「なんで突っ込まへんねん!!!」



どっ!!!!



『ええ!えーーっと、お二人さん。まだもうちょっと見てみたい気もありますが、ここは漫才会場じゃなくて武闘会の会場なので、そろそろ試合を再開して下さい』



そろそろ司会者から漫才を辞めて試合を始めろとのアナウンスが入る。



「さあ、司会者もゆうとるし。もう魔力溜まったんちゃう? 話して時間稼ごうなんてバレバレや。まあ、うちは優しいから待っとってあげたんやけどな」



…………こいつ!



「よく分かったな。でもいいのか? 敵に塩を送る真似なんかして」



「分かってないなー。準決勝やで? こんな大舞台、力を出し切れんゴミ虫を潰しても面白くないやん。相手が100%力を出してそれを潰してこその準決勝やろ〜?」



ラナは強者の眼差しを向ける。



「いつからボケに回ったんだ? それはフラグと言って、負けるヤツが負ける直前に吐く言葉なんだぜ? 覚えておくといい」



「それは笑えやん冗談やなあ〜」



ラナから向けられた殺気でピリッと頬が強張る。殺伐とした空気に一瞬にして変った。



会場の雰囲気もさっきとうって変わり、誰一人として笑う者はいない。



散々煽られてここまでお膳立てされたんだ。答えない訳にはいかない。ラナのお陰で魔力は回復したが、俺は一切手を抜かないつもりだ。



「ラナのお陰で回復したぜ? いいんだな? 一瞬だ」



「それはこっちも同じやで?」



そう言って腰を深く落として拳を握って構えた瞬間、ラナの足元で地割れが起こる。



「あんたのその魔除け武器は危険やからな。魔法で対抗してもあかん。圧倒的な強さと速さでねじ伏せるで!」



さらに地割れが起こる。足元に物凄いエネルギーを溜めている証拠だろう。さっきの比じゃない突進が来ると感じ取る。



ふーっと深呼吸をする。



タイミングを外したら終わりだ。



集中しろ。



一瞬だけでいい。



集中しろ。



次の瞬間、轟音と共に闘技場の地面が巻き上がった。同時にラナの姿を見失う。



ここだ!!!



今出せる精一杯、魔力を全開に使い時間を引き伸ばした。



持ってくれよ俺の魔力!



俺の目の前真っ直ぐに向かって突進してくるラナの姿がだんだんと鮮明に見えてきた。そしてその近づく速さも遅くなり、俺の目の前でほぼ止まったと同じような遅さになる。



ラナは拳を握りしめ、俺の顔に狙いを正確に定めていた。



「まじでこの魔法反則だよな」



刹那の中、そう呟きながら両手の包丁でラナの腕の腱とアキレス腱を凪いだ。



ちょうど足がぷるぷる震えてきたところで魔力切れのお知らせが来る。すかさず魔法を解除する。



すると先程の轟音と土煙が混じった衝撃波が俺の横ををすり抜けて会場の端の方まで突き抜けて行った。



『い、一体何が起こったのでしょうか!!両者交差しましたが、決着が着いたのでしょうか!?』



土煙が次第に収まる。



『こ、これは!!!ラナ選手が倒れているぞ!!!ユウ選手は健在だー!!!』



ワアアアアアア!!!



会場の真ん中の方で、ラナが仰向けになりながら倒れていた。俺は飄々と近づいていく。



「あ、あんた、何もんや…」



腕と足が動かせないのか、泥だらけになった顔をこちらへ向ける。



「さあな、俺もよく分からない」



「なんやそれ…」



「さて、どうする? 無抵抗な人を傷付けるのはあまりやりたくないが」



そう言って包丁をチラつかせる。



「ふっ……何格好付けてんねん。あー。うちの負けや。好きにしてくれ」



『おーーと!!!ラナ選手が敗北を認めましたー!!!一体あの一瞬で何があったのかは分かりませんがー、勝ったのはユウ選手!!!』



ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!



会場が今までにない程に盛り上がる。



『数々の旋風を巻き起こし、決勝の舞台へ駒を進めたのは、ユウ選手!!!!凄い!凄すぎる!初出場にして決勝!!』



スゴイゾー!!!

ヤルナー!ミナオシタゾー!!



数々のエールを貰いながら、さっさと控え室へ向かって行った。





ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー






「ぐうっ……おぼっおぼぼぼぼぼっ」



控え室のドアを開けて中へ入った瞬間、胃の中身をぶちまけた。昼休憩に食べたお弁当を戻してしまった事に後悔する。



「うへえ、ダメだ。こりゃきついわ」



ラナ戦で使用した遅延時間魔法はいつも以上に引き伸ばしていた。その反動だろうか、生命力が削られたようだ。



足だけでなく、身体全体が震え出す。



ああ、ここで死んじまうのだろうか。



次第に、意識は遠のいていった。






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