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武闘会 <昼休憩>




「ぶひ~」



いや~。やっぱりご飯を食べる前は一旦お腹の中身を出すべきだよなぁ。しっかし今日はめちゃくちゃ出たな。3mぐらい出たんじゃねえの?



「よし!行くか!」



俺はトイレのドアノブに手をかけた。



…て、ちょっと待て、俺はいったい何処に向かったらいいんだ?レイラやギルドの奴等の場所知らねえぞ?俺1人飯?



「はぁあ~まじかぁあ」



溜め息を100tぐらい放出しながら俺はコロッセウムの外へ向かって行った。



「うわあ~1人か~。俺観客にあんなことしたからヒソヒソ言われながら食べるんだろうな~。便所で食べようかな~」



「あ……あのぉ」



外に出ると髪の色がピンクの学生服を着た女の子が話しかけてきた。



「はぁぁ~うわあああ~」



だが俺は自分に話しかけられたとは思わなかったのでそのままスルーした。可愛かったけどそれどころじゃない。



「聞こえていなかったじゃん。ほら!アリン、もう1回!」



「お姉ちゃん頑張って!」



アリンと呼ばれた女の子のすぐ後ろに、同じ制服を着た女の子と、ちびっ子がいた。2人ともアリンにエールを送る。



「あ!あのお!」



「ぽぴ~?」



俺は死人のような顔で振り向く。



え?俺?俺?なんで?てかどっかで見たことあるような~?つかめっちゃ可愛くね?逆ナン?逆ナン?俺の試合を見てファンになった子か?うひょひょ!



「どうしたのかな、お嬢様?」



俺は死人の顔から一瞬にして天使のような顔になった。そして紳士もビックリするぐらいの超紳士態度で接する。



「あ、あのですね…」



ふんふん、可愛いな。可愛い系のスーパースターという感じだな。



「こんなところではなんだし、一緒に食事でもどうだい? あそこのお友達も一緒に」



そして俺はニッコリと微笑む。



はーい、ここで重点ポイントをおさらいするよ~。まずはポイントその1、笑顔は絶やさない。ポイントその2、お友達も一緒に。



このポイント2は重要なんだわこれ。女の子に安心感を与えるとともに、下心の消去が可能なんだわこれ。



…と話を戻そう。



「あ!それなら、私が……その………作ってきた…その……」



アリンは頑張って何かを話そうとしているがなかなか出てこない。終いに黙ってしまった。



「ん? どうした? 」



急に女の子の元気が無くなったので俺は心配そうに尋ねる。



「えと…その…」



「はーい!どうもっ!」



「ども!」



「きょ…キョウちゃん!」



今まで見守っていたアリンの友達とちびっ子が急に現れた。このキョウと呼ばれたアリンの友達は、紺色の髪を胸の辺りまで伸ばしている。こちらも可愛い。



「突然すみません!私、キョウって言います!そしてこの子はアリン!この小さいのはアリンの妹のユミンって言います!」



「ユミンなの!」



か、かわええ~。なにこの小さいの。こんな可愛い生き物ってあったっけ?あ、俺はロリコンじゃないぞ。



「ども!…て、1つ聞きたいんだけど、俺達ってどっかで会ったことある? 2人ともどっかで見たことがあるんだよな~」



「えっと、前に私たちの学校へ来ていましたよね? その時にこの子に話しかけたの覚えていません?」



前に学校って…レイラの学校か?そしたら………あ!



「あの時のか!」



「思い出してくれました?」



俺は確かに1人の女の子に話しかけた記憶がある。そのせいで男子生徒から追いかけられるハメになったのだからな。



「で、俺に何かあったの?」



「ほら、アリン!」



「え…と……」



「お姉ちゃん頑張れ~い」



あぁあぁあああ可愛いぃいびくんびくん…はっいけね、このアリンって子が何か俺に用があるらしいな。合体かな?合体かな?制服プレイ?いやなんだろう先輩後輩プレイ?いやいや、これも違うな……



「ぶつぶつ」



俺は1人で妄想に浸ってしまった。



「あのおッ!」



「ひゃい!部活動プレイ!?」



「え?」



「いや、何でもない、どうした?」



「い、い…一緒にご飯食べませんか?」



アリンは顔を真っ赤にしながら言ってきた。





可愛すぎて目が潰れた。




「もちろん!もちろん!喜んで!つか、逆に俺が誘いたいぐらいだし!」



「え!本当ですか!?」



「良かったじゃんアリン!」



「やったねお姉ちゃん」



「うん!」



アリンは溢れんばかりの笑顔になる。可愛い~癒される~。



「えーと、キョウちゃんとユミンちゃんだっけ? 2人も一緒にみんなで食べようよ?」



「いいのですか?」



「いやいや、君らをハミったら俺は鬼畜大魔王だよ?」



「でもさっきの試合は鬼畜大魔王でしたよ~?」



キョウがニヤニヤしながら言ってきた。見てたのかよ…。



「ちょっと、キョウちゃん!」



俺が言葉を詰まらせているとアリンがキョウを叱った。



「ごめんごめん」



「いやいや、俺は気にしていないぞ? ていうかそんな俺と一緒にご飯食べちゃっていいの? みんなから変な目で見られるよ?」



こんな可愛い子たちとご飯が食べれるならいくらでも食べたいが、それで周りの奴らにこの子たちが何かを言われるのだけは避けたい。



「全然大丈夫です!ね、アリン!?」



「はい!大丈夫です!確かにユウさんがした事はいけない事だと思いますが、会場の皆さんも酷いです!おあいこです!それに……言ったら少しまずいですが、何かスッキリしました!えへっ」



そう言ってアリンはニッコリと微笑んだ。その瞬間、俺の中で可愛さのアイデンティティーというものが全て崩れ去った。



「この子は本物の天使だ…」



「えっ」



「あ、いやいや失礼」



「お兄さんアリンに惚れちゃったでしょ? この子の笑顔の破壊力は凄いもんね!」



まあ、はい、確かにその通りっす。でも惚れたというよりかは崇めるというかなんというか…



「キョ、キョウちゃん!」



「お兄ちゃん、アリンお姉ちゃんの事が好きなの~」



「こっこら、ユミンも!」



慌てる姿も可愛いな。2人きりになりたいないやまじで。そしたら俺の思い通りに…。ふひひ。



おっといけないいけない。また妄想の世界に入るところだった。



「まあまあ、立ち話もなんだし向こうのテーブルに行こう? それに腹ペコで早く食べたいんだ」



「あ!ごめんなさい!」



「全然いいって、んじゃ行こうか!」



「いっこ~う!」



ユミンが元気よく返事する。誰かこの可愛すぎる生物の作り方を教えてくれ。






「華麗にスルーされちゃったね」



「もう!からかってばっかいないで!」



「はいはいごめんなさーい」



俺たちはテーブルに向かって歩いている。2人並んで話をしている姿をみていると、相当仲が良いんだろうなと思う。アリンと手を繋いでいるユミンはポカンとしている。きゃわたん。



「あ!ユウ、こんなところにいたのか!探したぞ!」



テーブルに着く直前でレイラの声が後ろから聞こえてきた。



「おー!レイラじゃねえか!お前こそ何処にいたんだよ。事前に教えてくれよー!」



「え!?」「レイラ?」



キョウとアリンはお互い顔を見合わせた。ユミンは相変わらずきょとんとしている。



「ユウに観客席の場所を伝え忘れていたのを思い出してな迎えに来たんだ」



「ならもっと早く迎えにこいよ~。もうこの子たちと食べる約束しちまったけど~」



レイラはテーブルの席に座っているアリンたちを見る。



「この制服…。私と同じ学校の者か?」



「らしいな。知ってるか?」



「いや、知らない。それよりも、一緒に食べるってどういうことだ!私も持ってきているんだぞ!? ほらっ!」



そう言ってレイラはお弁当らしきものを見せてきた。黄色の可愛い風呂敷みたいなのに包まれている。



「え? もしかしてそれ作ってきたの?」



いやいや、あり得ないだろう。この鬼畜大魔人がエプロンつけてるところなんて想像……裸エプロン?……おっぱい?……ぬへへ



「当たり前だ!って何で気持ち悪い顔をしているんだ?」



「いやいや、あまりにもエプロンの破壊力が…って、それじゃあどうしよう」



俺は振り替えってアリンたちに申し訳なさそうな眼差しを送る。



「こんにちは!レイラさん!私は3回生のキョウといいます!」



「わ、私はアリンです!よろしくお願いします!」



するとアリンたちはレイラと仲良くなろうと思ったのか、立ち上がって自己紹介をしだした。



「ユミンなのだ!」



ユミンは満面の笑みでレイラに向かってピースをする



びゃあぁあきゃわぅいいいぺろぺろぺろぺろ



「私は5回生のレイラ・ディルグレイだ。好きに呼んでくれ、よろしく」



レイラも自己紹介して返した。



「じゃあ、レイラさん、一緒にご飯食べません? みんなで食べたら美味しいですよ?」



キョウがレイラに詰め寄って提案した。



「いいのか? お前たちはユウと約束していたのでは?」



「そんなのいいですって~!レイラさんのその料理が無駄になっちゃうじゃないですか~、ね? ユウさん?」



キョウが俺にふってきた。なんで俺なんだ!アリンにふれよ!アリンのあの笑顔ならレイラなんかイチコロベイベーだろ!



「あ、ああ、そうだな。俺もレイラのその料理が食べたいなぁ~。ほんとうまそうな匂いがするんだよなぁ~。あ~食べたいなぁ~」



急にふられて焦ったので適当な事を言った。



「そ、そんなに食べたいのなら仕方ないな。すまないがよろしくな」



レイラはアリンたちにそう言って、テーブルの席に着いた。



ユミンを真ん中に挟んで左にキョウ、右にアリン。そして机を挟んでアリンの前に俺、俺の隣にレイラ、という感じで座った。



「よろしくです!あ、私もいっぱい作ってきたので皆さんで食べてください」



アリンもバスケットからお弁当を取り出した。20cm四方ぐらいの大きさで4段になっている。



「すごいな!」



レイラは驚いている。ははは、鬼畜大魔人がアリンに女子力で勝てるわきゃねえ!



「てか何でそんなに作ってきたんだ?」



俺はふと疑問に思って聞いてみた。ユミンが育ち盛りだからか?



「えっとですね…、今日は本当は私達の他にも4人ぐらい一緒に見に来ていました。その子たちと一緒に食べるつもりだったのですが……ユウさんの…その……さっきのアレで皆帰ってしまって……」



アリンは歯切れ悪そうに答えてきた。



「それで余っちゃうのもアレだし、他に知り合いもいなかったので…思いきってユウさんを誘ってみたのです!」



そういうことだったのね!なるほどなるほど、て…



「まじか!それは悪いことをした!すまん!」



俺は真剣に謝った。これは悪いことをしてしまったな。



「い、いえ!別にいいんです!それにこうしてお話できて嬉しいです!」



な、なんということだ!こんな俺を許してくれるのか!アリンちゃんまじ天使!



「ほ、ほら、早く食べようではないか。昼休憩が無くなるぞ?」



アリンちゃんを崇めているとレイラが急かしてきた。



「確かに腹減ったな!いただくか!レイラの弁当は?」



「ああ、今開ける」



そう言って黄色の風呂敷みたいなのをほどくと、中にはウサギみたいな可愛いキャラクターの絵が書いた弁当箱があった。



「それ、レイたんの?」



「ああ、そうだ。何か文句あるのか?」



いやだって、ウサギっておま。キャラクターっておま。可愛い系っておま。ぶはははははは。やべぇニヤける。



「えっ!? 可愛い~!」



「ほんと!見てユミン!」



キョウとアリンは可愛い弁当箱を見て興奮しだした。つかキョウの『えっ!?』てお前、俺と同じこと考えてたんじゃね?



「中身見てもいいですか!?」



キョウは机に乗り出して聞いてきた。そんなに見たいのか。確かに見たい。



「いいぞ、ほら」



そう言ってレイラはお弁当を開けた。



「わあ!」「すごい!」「わぁぁ!」



「こりゃたまげた」



中身は蓋に書いてあるキャラクターを形どったお弁当だった。色とりどりの食べ物を綺麗に並べて作っている。いい匂いが鼻の奥を刺激し唾液が染み出す。



「すげえ!いただきます!まずはお鼻からだあ!」



「あ!こら!手で食べるな!」



レイラの言葉を無視して俺は鼻の部分に該当する赤い食べ物を食べた。



「うんんめええ!なんだこりゃ!1口1万で売れるぞ!!!」



赤い食べ物は歯ごたえがしっかりしていて、なおかつジューシーなお肉の味がする。サーロインステーキもビックリするほどのうまさだ。



「私もいただきま~す」



「あ、私もいいですか?」



どうやらアリンたちも食べてみたくなったようだ。俺があまりにもうまそうに食べるからかな。



「ああ、いいぞ。遠慮せずに食べてくれ」



「あたしもあたしも~」



ユミンは両手に可愛いスプーンとフォークを持ってきゃっきゃしている。



「「美味しいッ!」」



アリンとキョウの声が重なる。2人ともこの料理のうまさにビックリしたようだ。



「そ、それは良かった」



レイラは結構嬉しそうだ。少し照れているのがわかる。



「あーん、あたしも~」



「ほらユミン」



俺は料理を手で取ってユミンに食べさせてやった。ユミンはほっぺたに手を当てて物凄い笑顔になっている。きゃわたん。



「こらユウちゃんとコレを使え、もう」



呆れたような顔でレイラはフォークを渡してきた。



「お!さんきゅう」



どちらかと言えばお箸が欲しかったけどな。まあいいや、お腹減ってるんだしこの際なんでもいいや。



俺はまたレイラの料理を食べてみた。



うますぎぱねぇっす。ホテルの高級料理食べてるみたいっす。



「これ凄いね~」



「うん、びっくり!レイラさん、今度料理教えてくれませんか!?」



アリンは羨望の眼差しでレイラに尋ねる。



「べ…別に構わないぞ」



うわっ物凄く嬉しそう。きゃわたん。て、まだ喜ぶのは早いぞレイたん。アリンの料理を見てみようぜ。



「アリンの料理はどんなのなんだ?」



「わ、私のはレイラさん程綺麗でも美味しくもないですよ~」



そう言ってアリンはお弁当を広げた。



「おお!」



そこにはサンドイッチやら唐揚げやらおにぎりやら、ピクニックに行くときに持っていくような、いかにも女の子って感じの料理があった。



確かにレイラほどの見た目のクオリティはないが、全然うまそうじゃん。



「サンドイッチも~らい」



「こら!勝手に食べたらダメだろ!」



うるさいぞレイラ。食事は戦争なんだ。そこに食べ物が現れたらすぐに食べるものなんだ。早い者勝ちなんだぞ。



「て、なにこれうめえ!材料なに使ってんの!?」



「本当ですか!? お口に合って良かった~。あ、材料はジュリムベルトの葉とグルシダーの実を使っています」



何言ってんだかわかんな~い。けどうめええ!



「さあ、レイラさんもどうぞ」



「いいのか?」



「ええ、勿論です!」



アリンはハイパーエクセレントスマイルで答えてきた。そしてレイラもサンドイッチを取って食べる。



「私も食~べよっと」



キョウもサンドイッチを取って食べ始めた。



「美味しい!別に私が教えることなんかないんじゃないか!?」



「うん、美味しい!やっぱアリンの作る料理は美味しいわ~。私なんかと大違いだわ」



キョウがもぐもぐ食べたながら言う。それは一度食べてみたいかもしれん。



「いやいや〜。レイラさんに比べたら私なんてまだまだですよ。それに盛り付けだって綺麗にできないし…」



いやいや、見た目も大事だけどやっぱ料理は美味しさだと思うぞ。アリンは誇っていいと思うぞ。うん。



「あたしもた~べ~た~い~」



ユミンがバタバタしている。机に顔だけをぴょんぴょん出してくる姿はとても可愛らしい。



「ほれユミン」



俺はサンドイッチを取ってやった。ユミンはサンドイッチを手にした瞬間に物凄い幸せそうな顔になる。



何だこの生物。可愛すぎるだろ、お持ち帰りして飼いてえ。餌付けして調教してえ。…といけね、いけね、犯罪者になる手前だ。でも……もし……………げへへ。



「ユウ……まさかそういう趣味なのか?」



怪訝な顔でレイラが聞いてきた。ユミンを嫌らしい目で見ていたのがバレたのか!やべぇ!



「えー、ユウさんってロリコンなんですか?」



「ちょっとキョウちゃん!」



「い、いや全然違うぞ~? 確かに年下は好きだが16歳より上じゃないとダメだな。それ以下はまだ身体が発達していないし、何せエロティックがたらない。ちょっとエロスに目覚めたぐらいが1番いいんだ。あ、ちょうど君らぐらいが食べ頃なんだわ」



「へっ?」 「……え……と…」



俺の答えにキョウはビックリした顔になり、アリンは目を丸くして顔を赤くさせている。なにこれ。またやっちまった系?



「はぁ…悪いな君たち。ユウの言うことは真に受けたらダメだぞ? バカが伝染る」



「バカをバカにするなよ!いいか、バカと天才は紙一重なんだぞッ!」



俺は真剣に抗議してやった。



「だろ?」



レイラはアリンとキョウに向かって同意を求める。



何が『だろ?』だ。ぺろぺろすんぞレイたん!



「「……………」」



あ、アリンたちが俺を哀れむような目で見てる。やめて。そんな目で見ないでぇえええええ。



「お兄ちゃんどうしたの? お腹いたいの?」



机に顔を伏せているとユミンが心配そうに聞いてきた。あぁ…俺のオアシスよ…。



「これあげるから元気だして!」



ユミンは机に乗り出して俺の目の前に何かを置いた。



あぁ。ユミンは優しいなぁ~。って何だこの小さい箱。それにこのボタン何だ?



「なにこれ? 押したらいいの?」



俺は手にとってボタンを押そうとした。



「あ!押しちゃダメです!すぐに戻し……」



アリンが叫ぶが時すでに遅し。俺はもうボタンを押していた。その瞬間、目の前で爆発音が鳴り響き閃光に包まれた。



「きゃっ」 「わっまぶしっ」 「なんだ!」



「きゃはは!」



光を直接くらって目がチカチカしていた。あの小さな箱は閃光玉の類いのようだった。人が沈んでいる時にそんなものをくれようとは、なかなかいい根性してるじゃないか、ユミン。



「ユウ、大丈夫か? ってぶふぅッ」



レイラが俺を見て吹き出した。何がおかしい。



「ユウさん……ふっ…あは…あふっ……もうだめ……あはははははは」



「ちょっとキョウちゃん笑っちゃダメだって……ユウさん大丈夫ですぎゃぶふぉふぉッ」



なんだてめえら。つか今のアリンの笑い方は酷すぎるぞ!グサッときたぞグサッと!僕ちんもう嫁にいけないよ!



「なんだよお前ら、何笑ってんだ?」



「あはは、悪い悪い!見てみろこれ!」



レイラは俺に手鏡を向けてきた。



そこにはなんと!鼻以外がススで真っ黒になった顔に、髪の毛が触角みたいに飛びまくっている、まるでゴキブリみたいな人間がいた。



ハイッ僕ちんで~す!ねぇママ見て見て!一瞬でスーパーイケメンになったよ!?特にこの触角なんかリアル!超リアルだよ!しかもお鼻だけ肌色だよ!赤っ鼻のトナカイさんより凄いよお!



「なんだ今の爆発音?」

「光ったよなぁ?」

「ちょ!あれ見てみろ!」

「ん? なんだぁ? うわっ!」



さっきの爆発音で周りにいた人が騒ぎだした。そして自然と俺に注目が浴びる。やはりイケメンになったらしいな。



「なんか周りがざわついてきましたね…ぶふっ」



「ああ、注目度No.1じゃないか!ユウ、ぶふっ」



「2人とも!もうやめまひょふひっ」



3人はまだツボに入っているらしい。ひたすら笑っている。



「あはは!お兄ちゃん変な顔~」



んだとこら?このイケメンフェイスを変だと?幼女だからって手加減はしないぞ?この触角がどれほど格好いいか今から教えてやんよ!



「なあなあ、あの女の子たちは何であんな変なやつと一緒にいるんだ?」

「さあ? アイツらも変なんじゃねえの?」



ユミンに触角がどれほど格好いいか語りに行こうとしていたら周りからこんな会話が耳に入った。



「ああ? んだとこら」



俺は周囲のギャラリーに向かって威嚇した。



「うわ!こっち向いたぞ!」

「ぎゃぁあ!なんだあれ!」

「あ、あっ悪魔だぁああ!」

「ちょっとまて、アイツ、さっきのユウって奴じゃないのか?」

「た、確かに…ユウって奴だ!」

「え?魔物だったの!?」



ギャラリーたちは勝手に暴走し始めた。



「俺が魔物だと? ふざけんな食べるぞオラァ!」



「ちょっとユウ!もうその辺に…」



「きゃぁあああ!殺されるうぅううう」

「うわぁあ食べられるのは嫌だぁああ」

「みんな逃げろぉおおおおお!」



レイラの願いは虚しく、次第に大騒ぎとなった。




「ぎゃははは!どいつから食べてやろうかぁああ!グァアアアァアアア!」



俺はケルベロスさながらの迫力でギャラリーを追いかけ回す。逃げ惑うみんなの表情がリアルすぎてテンションが上がってくる。



「ユウさん…ちょっとやりすぎなんじゃ」



追いかけ回している俺の姿を見て、アリンが少し困ったような顔で言う。



「そうだな、ちょっとお灸をすえるか…」



レイラは呆れたように呟いた。



「きやぁっ!」



俺は一人の女性がコケたのを目に捉えた。そしてこのチャンスを逃がす俺ではない。



「ガルゥアアア!まずは一人目だぁあああ!」



俺はヨダレをダラダラと垂らしながら近づいていく。



「いやぁああああああああああ!こないでぇええええええぇええええ!!」



ここまで女性に拒否られたのは初めてだよ。オラ、とてもショックだ。



「ぐへへへ!まずはそのおっぱいから食べてやろうかぁ!ぐひひひ!」



「いやあああああああああ!いやぁああああ!こないで!こないで!いやぁあああああああああああ!」



女性は発狂しながら俺に向かって土やら草やらを引っこ抜いてぶつけてくる。そんな表情を見せられたら余計に止められないじゃないか。げへへ。



「お、おい誰か助けろよ!」

「ダメだ!あんな奴に勝てるわけねぇ!」

「くっそぉおおおお!」

「誰かぁあああああ!」

「いやぁあああああああ!」



叫び散らかす者や泣きじゃくる者、自分の無力さに絶望して地面に項垂れる者や、人生を諦めたかのような目をしている者まで、皆はまるでこの世の終わりが訪れたかのような反応だった。地獄絵図そのものだ。



「いやぁああああ!いや!いや!いやぁああああああああああああ!ぁああああ゛ああ」



この女性はもう涙でグショグショになっている。化粧なんかぼろぼろだ。可愛いのにもったいない。だがそんな表情は俺のテンションを上げる潤滑剤の他にもならない。



「覚悟しろぉおおおお!俺の触角をあんなとこやこんなところに突っ込みまくって頭から足の下までなめ尽くして食ってやっ」



「レインフォール!」



「ふんげ!!」



突然後ろの方からレイラの叫ぶ声が聞こえ、そして俺のすぐ上空から大量の水が落ちてきた。水柱は俺を包み込んで地面に叩きつける。



「あばばばばばばばばばばばばばばばばは!なんば? みでぅ? なんべみでぅ? いぎでぎね゛ぇ゛え゛えぇ゛え゛ぇ゛えぇえ゛………ぇ……え゛……」



息ができないぐらいの水量が俺を襲う。さらに立ち上がることもできないぐらいの水圧だ。このままぺしゃんこになるかもしれん。



い………き……………が………………も…………



「ぶはぁっぶはぁ!死ぬッ!げぶっ、がはぁ、はぁ…はぁ」



意識を手放す手前で水柱が消えた。俺は新鮮な空気を肺にこれでもかってくらいに入れる。息をするという有り難みを知らされた瞬間だった。



「げぼっ…はな…みでぅ入った…げぶッ…て、スス落ちてんじゃん!…げふッ」



今の水の魔法で俺の顔と髪の毛の汚れが全て落ちていた。そして、何か俺の人生の汚点や後ろめたい事もススと一緒に流れていった気がした。うん、気がしただけ。いやでもね、ポジティブに考えるのは良いことだと思うよ、うん。



「え……に゛…人間?…ぐずっ」



目の前にいた女性は顔をグショグショにしながら当たり前の事を聞いてきた。



「これのどこが魔物だ!」



「ひっ」



俺は髪の毛を全部後ろに流して女性に言ってやった。



「ほっ……ほんとにっ……ぐずん………人間なの?」



「ああ、正真正銘人間だ。脅かして悪かったな」



水のお陰で冷静さを取り戻した俺は目の前の女性が可哀想に思えてしまった。少しやりすぎたと後悔する。



「ひっ……ひっ」



「あ~、泣くなって、悪かった。ごめんな?」



そう言いながら俺は女性の頭を撫でた。びちょびちょの手だけど。



「ふえぇえぇえ~ん、ごわがっだよお゛ぉおおおおお~。ふわぁあああああん」



女性は余計に泣いてしまった。こういう時って抱き締めたらいいんだっけ?いやいや、みんなが見ているからそれはまずい。どうしよう。



「あーあ、泣かした」

「泣かしてやーんの」

「うわさいってー」

「泣かしたー」

「先生に言いつけてやる」



周りの皆も冷静さを取り戻したのか、今度は俺に色々と強気な事を言ってきた。



おまっ、さっきまで逃げ惑ってたくせに!つか先生に言いつけるって何だよ!幼稚園児かよ!



「ふぁあ゛あ゛あ゛ぁあああん!びぇえぇえ゛ぇえええん!」



「あー、ほんと悪かったて、ごめんよ~。よしよし」



頭を撫でながら俺はあやし続ける。泣き止む気配がない。いつまでこうしていたらいいのだろう。



「はぁ。こうなったのは元はといえユウが悪いんだからな」



レイラがため息を吐きながら近づいてきた。



「びぇえぇえ゛ぇえええん」



「どうしよう、レイたん?」



「知らん!ユウが何とかしろッ!」



俺は助けを求めたがレイラにそっぽを向かれた。何をそんなに怒ってんだよまったく。



「あちゃ~。ユウさん女の子を泣かせたのですかぁ?」



「そうですよ、ダメですよ!そんなことしちゃ!最低です!」



キョウとアリンも近づいてきた。



キョウは相変わらずニヤニヤしているが、アリンは真剣に言ってきた。僕ちんこんなこと言われちゃもう立ち上がれない。



「そうだそうだ!」

「最低だお前!」

「女を泣かせるなんて男の恥だ!」

「はじだはじだあ!さいていだあ!」



周りの皆までノってきた。そしてこの騒ぎの元凶のユミンもノっている。



なぜだぁああああなぜこうなったあああああ



「ひぐっ……ひぐっ……うえっ」



やっと泣き止んできたか。結構かかったな。



「ほんとにごめんな? もう怖くないぞ!」



安心させてやろようと思い、ニコッてして優しく言ってやった。これでもう泣き止むだろう。



「ひぐっ…ひぐっひぐ……う…」



よし、効果は抜群だぁあああああああ!



「うわぁあぁあああ~ん!」



「なんでやねん!?」



何故か女性は再び泣き出した。泣き癖があるのかこの子?



「あー、また泣かした」

「ほんとさいってー」

「最低!最低!」

「男の恥だ恥!」



みんなはさらに俺を煽り続ける。確かに最低なので何も言い返せない。だから俺は黙って頭をなで続ける。



「あはは!お兄ちゃんびちょびちょ~」



ユミンが俺を指差して笑っていた。おいこの野郎。お前のせいなんだぞ?だが俺は大人だ。ここはぐっと我慢する。



「ほんと悪かった!名前なんて言うんだ? 今度必ずお詫びするから泣き止んでくれ!頼む!」



「うえ゛っうえ゛っ。…ずるっ…ずぴぃ…ぐっり゛ず」



俺の願いが届いたのか、次第に泣き止みだした。そして名前らしき事を言っているが全然聞こえない。



「え? ごめん、もう1回言ってくれ」



「ぐっ……り゛…ず…ずるっ…うびっ…」



「薬? なにそれ美味しいの?」



「クリスだバカ!」



レイラが解答を教えてくれた。よくわかったな。先生は誇りに思うぞ。



「もういい、お前はあっちに行ってろ。もう大丈夫だからな、クリス」



「う゛…うっ…ずびい…ずびばぜんっ…じゅる」



レイラは俺をはね除けてクリスを介抱し始めた。



「そうですね~、ユウさんがいたら余計に泣いちゃいますね~」



「ここはもう私たちに任せてください!」



さらにアリンたちもクリスの介抱についた。俺はその場を離れるしかなかった。



なんで俺がいたらダメなんだ?犯罪者みたいな顔だからか?




ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー




そしてのけ者にされた俺はというと?



「本当に、すみませんでした」



皆さんに向かって土下座していた。



「今さら謝っても遅いんだよ」

「そうだそうだ~」

「ほんと最低だな、なんでこんな奴が勝ち残ってるんだ?」

「そうだそうだ~」

「あなたの顔、覚えたからね!許さないんだから!」

「そうだそうだ~」



みんなはあれこれ言ってくる。だが今回ばかりは本当に最低だ。ちなみに合いの手をいれているのはユミンだ。ユミンは何が起こっているのかわかっていないだろうが、とても楽しんでいる。俺で。



「あんたのせいでこの服汚れちゃったじゃないの!どうしてくれるの!」

「そうだそうだ~」

「す、すみませんでした…弁償します…」

「お金の問題じゃねえだろ!」

「そうだそうだ~」



じゃぁどうすりゃいいんだよ!ぺろぺろしたらいいのかよ!ねえ!教えてよこの豚野郎!



「本当に…すみませんでした」



なんて事は言えず頭を地面に擦り着けて謝り続ける。俺のおでこは地面にめり込みそうだ。



「あはは!お兄ちゃんおもしろ~い。虫みた~い」



虫ってなんだ?虫ケラか?



「おい、ユミン!そろそろ怒るぞ!?」



「きゃぁーー!あはは!」



ユミンは叫びながら逃げ出した。



「待てぇえぇえい!いっぺんお仕置きしてやる!」



「きゃーきゃー!あはは!きゃーきゃー!」



ユミンはとっても喜んでいる。満面の笑みで走り回る姿はなんとも言えない可愛さだった。



「おい見ろ!」

「今度は幼女を追いかけてるぞ!まだ反省していないのか!」

「誰か止めろッ!」



周りから色んな罵声がとんでくるが、この可愛い生き物の捕獲を止めろと?いいや、できないね。できるわけがない。きゃわたん!



「きゃっきゃっ!あはは!あはは!きゃー!」



「待て待て~!捕まえるぞぉげへへ!」



「きゃっきゃ~!こないでぇ~あはは!」



「ぐひひひ、食べちゃうぞぉおお~」



その瞬間、俺の肩をちょんちょんと誰かが叩いた。



「誰だよ!俺のハントを邪魔するんじゃねえ!これから捕まえてぺろぺろするんだよ!」



「ほ~う。それは楽しそうだな」



そこには武装しているごっつい男性がいた。どっからどうみたって警察関連だなこりゃ。誰かが通報しやがったか。どうもありがとうございやしたあッ!



はーい、それではここでおさらいするよ~。俺は今何してるの?Yes、幼女ハント!そしてこの人は~?Yes、警官!そしてこの状況は~?Yes、俺☆犯罪者☆確定!



「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺たちは知り合いだ!」



こんなところで捕まっちゃまずい!俺は必死に否定する。



「だと言ってるけど、お嬢ちゃん本当か?」



「ううん、知らなぁい」



んだと!?



「だとよ兄さん? ちょっと向こうで話聞かせて貰おうか?」



「待て待て待て~い!こらユミン!なんとか言え!」



このままじゃまずい!ユミン頼む!弁解してくれ!



「あたしこの人知らな~い。追いかけられたの。怖かった~」



俺の願いは虚しく儚く散っていく。そう、まるで羽をもぎ取られた蝉のように。そう、もう一度…あの空へ…飛び立ちたかった。



「そうかそうか、それは怖かっただろう。もう安心だからな!」



「うん!…うひ」



ユミンが俺の方を向いてニヤニヤ笑ってきた。



こコイツ!まさか確信犯じゃねえのか!?俺は再度ユミンの顔を見る。



「うひ」



確定だぁああ!コイツは確信犯だあ!騙されていた!くそう!やべえ!コイツはとんでもねえ!堕天使だ!いや、天使を皮に被った悪魔だ!ユミンこそ本物の鬼畜大魔王じゃないか!



「それに、この騒ぎもお前が元凶らしいな? 通報を受けてきたんだぞ?」



やべえ!やべえ!この流れはやべえ!マジやじろべえ!



「ちっ、違う違う違う違ぁあああう!ちょっとレイラ!アリン!キョウ!助けてくれええ!」



俺はクリスを介抱しているレイラたちに助けを求めるが、結構離れているので聞こえていない。ユミンを追いかける内に遠くまで来ていたらしい。



「はいはい、往生際がわるいよ~。この目でバッチリ見てるんだしな~。じゃあ行こうか!」



警官は俺の腕を掴んでズルズル引っ張っていく。



「ああああああ、ちょっと待て待て待て待て!違う!話を聞け!おいおいおい!」



「うるさいぞ。ほらちゃんと歩け!」



そんな俺の言葉を警官は無視して連行する。腕がちぎれますやめてください。



「あはは!」



ユミンは俺を指差して笑っていた。やはりこの子は化け物だ。将来レイラを超える大物になるに違いない。






ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー






「ずる…ずぴっ」



「クリス、うちのユウが本当にすまなかった。大丈夫か?」



「は…はい…ずる…もうなんとか」



クリスはやっと落ち着いてきたようだ。だが顔は涙と鼻水まみれなのでレイラはハンカチーフを渡す。



「ありがどうっ…ございます…」



「まったく。やりすぎだ」



「ええ…そうですね。それにあの優しさは反則級でしたね~。あんな真剣な顔もできるんですね~」



「うん…。物凄く怖かった後にあんなことされたら気が緩んで余計に泣いちゃいますもんね。クリスさん大丈夫ですか?」



キョウとアリンの言葉でレイラは、クリスにユウが謝っていた時を思い出す。いつもヘラヘラしているユウから想像もできないくらい真剣な顔だった。そして優しかった。あの一瞬だけど。



「うん、ありがとう。あー。泣いた。一年分ぐらい泣いた」



もうクリスは普通に喋れるぐらいまで回復していた。嗚咽はもうしていない。



「本当にすまなかったな」



「いいえいいえ、それにありがとうございました。このハンカチは洗って返します。化粧で汚れてしまったし…」



「そんなのは構わないぞ。元はといえばコイツが……ってあれ? ユウは?」



「あれ? いない…」



レイラたちはユウがすぐ近くにいると思っていたが、周りを見渡してもユウの姿が見当たらなかった。



「さっきユミンと遊んでたような気が…? ユミーン!ユミーン!」



少し歩いたところでユミンは蝶々を追いかけて1人で遊んでいた。ユミンはアリンの呼ぶ声に気付いて駆け足でやってくる。



「ユミン、さっきのお兄ちゃんどこ行ったの?」



「うーん、なんか棒を持った男の人に連れていかれたよ~」



「はあー」



『棒を持った』というユミンの言葉にレイラはため息を吐く。この騒ぎになれば警備員の1人や2人がくると思っていた。多分その警備員に連れて行かれたのだろうと思った。



「警備員なら多分あそこか。すまないがこのまま待っていてくれないか?」



「え? レイラさんどこへ?」



アリンがレイラに尋ねる。アリンは今のユミンの言葉ではユウがどこに行ったかわからなかった。



「警備室だ。じゃあ頼んだぞ」



そう言ってアリンたちの返事を待たずに走っていった。レイラはこのコロッセウムの中の施設の事はだいたい把握していた。ここから1番近い警備室に行くつもりである。






ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー







俺は今警備室の応接室みたいなとこにいる。机を挟んで俺を無理矢理連行した警備員が座っている。これから尋問が始まるみたいだ。だが俺は至って強気だ。なぜならもう既に警備員は1つミスを犯しているのだからな!



「くふふ、お前は俺を無理矢理連れていったよな?」



「ああ、それがどうした?」



「それにテメエはポリスではない!俺を不当に逮捕したらダメなんだぞ!しかも無理矢理連れていった!テメエは刑法220条で裁かれる!ガハハ!」



「いったい何言ってんだ? まぁいいや、お前はあそこで何をしていたんだ? 答えろ」



そしてここで俺のトラップ発動!これを待っていたぁああ!あははは!これで俺の勝ちは確定した!



「はい!テメエは今!刑事訴訟法190なんたらに違反した!黙秘権とかに触れないで尋問しちゃダメなんだよぉお? これからは覚えておこうねぇえ!? はい、以上!そして黙秘権を発動する!」



くはは、勝った!確実に勝った。これは必勝パターンに入った。裁判になっても俺は無罪ぃ!



「おい……」



勝利に浸っていると警備員が話しかけてきた。ここで気を付けなければいけないのは絶対に話をしてはいけないことだ。そう、絶対に。何があっても絶対に話をしてはいけない。俺はシカトを決め込む。



「お前頭おかしいのか? さっきから何言ってんだ? ケイホー? ケイジソショーホー?なんだそりゃ。そんな法律なんて聞いたことねえぞ」



あ……。



忘れていた…。



ここは2000年後だった…。



「……それにな。この国ではな、犯罪の可能性のある者が黙秘を続ける場合は、ある事で吐かせてもいいらしいんだ」



「え? なにそれ?」



警備員は急に厳かな表情を作って言い放ってきた。そしてさらに話を続ける。



「そのある事とはな、ほれ、これだ」



そう言って警備員はこの世の物とは思えないおぞましい物を見せてきた。とりあえずどこかの穴に突っ込んで中をぐちゃぐちゃにするような機械であることはわかった。確かにこんなものがあるなら犯罪は減るだろう…。



え?なにこれ?俺は詰んじゃったパターン?あんな物を突っ込まれたら生きて帰れないよ!?なにこれ!?さっきまで勝った気持ちでいてたのに!なにこの絶望感!将棋で例えたら相手の詰みで俺の勝利確定したと思ったら『あ、君二歩してるよ』って言われて根本的なところからひっくり返されて負けた感じだよ。



「さぁ!吐いて貰おうか」



警備員はブツを手に持ってユラリと立ち上がる。その姿はまさに閻魔大王。処刑を執行するそのものだ。



「いやぁああああ!くるなぁあああああ!やめろぉおお!」



俺は応接室の壁の方に逃げた。



そして自分が叫んだ言葉でさっきクリスにしたことを思い出した。何となくだがクリスの気持ちがわかった気がした。なんだろうね、もう私じゃなくなっちゃう!みたいな感じかな。



「逃げるのか? なら仕方ないな、これは使いたくなかったが…」



閻魔大王はゆっくりと近づいてくる。そのゆっくりさが余計に怖い。



「やめろ!くるな!その手に持っているもの下ろせ!ウィンウィン言ってるよ!? ダメだよ!? ねえ!? そんなもの使ったらダメだってばぁああ!」



正直に何をしていたか答えればよかったのだが、俺は軽くパニックになっていたのでそんなことに頭は回らなかった。魔法の存在すら忘れていた。とにかく逃げる事しか考えていなかった。



「これ、結構痛いんだぞ? だがこれが快感だという人もたまにはいるらしいんだ。どういう神経してるんだか。まあ、いいか…」



閻魔様は俺の目の前にしゃがみこんで俺を哀れむような目で見てくる。そして俺のズボンに手をかけた。



「うわっ!やめろ!やめろボケエぶっ飛ばすぞ!ぎゃあ!やめい!このくそ筋肉野郎!力強いんだよボケエ!やめろおおお!」



あまりの力の強さに為す術がなくズボンを脱がされてスッポンポンになった。



「うわあああああやめろおおお!」



死を覚悟したその時、応接室のドアが勢い良く開いた。



「な、なななななな」



そこには顔を真っ赤にさせて驚いてるレイラの姿。俺のマスターソードを凝視しているのがわかる。この状況は非常にまずい。



「あ、こりゃ、まずい」



どうやらコイツも俺と一緒の思考をしていた。閻魔様は一般警備員に成り下がる。



「なななななななななな」



レイラはもうパニック寸前だ。だからここは気の効いた一言を言って鎮めるかない。



「僕ちんもうお嫁にいけないね!てへ」



ぷら~ん



「きゃああああああああああああああああ!」



バチバチバチバチッ



「ぎやぁあああ゛ぉあああああぁあああああああああ」



「うぉああ゛あ゛あああああ゛ああああああああああ」



レイラが絶叫すると共に雷撃が警備員を巻き込んで俺を襲ってきた。



いったい……どこで…間違ったのだろう……?






ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー







それから俺達は10分ぐらい気絶していた。そして意識を取り戻した警備員にレイラが説明してくれてして解放してもらった。



いくら魔法を跳ね返せる防具を着けていたって、防具が無い場所にくらえばまともにくらう。電撃をくらうのはもう懲り懲りだ。何せ痛い。俺の意思とは別にびくんびくんなる。



「これも全てお前が悪いんだ。少しは反省しろ」



「ふえい…」



俺は今究極にテンションが下がっている。電車に轢かれたい気分だ。



「あ!帰ってきたよ!」



「結構時間がかかったのですね」



どの電車に轢かれたら1番気持ちいいのかなと考えながら歩いていると、いつの間にか元の場所に戻ってきていた。



「すまんな待たせて。ユウがまたやらかしたのだ」



「いやいや、アレは警備員が悪いだろ」



「うるさい!ユウが全て悪いと言っただろ!」



「はぃい!すんません!」



レイラは結構マジギレっぽい。血管が浮き出ている。こわたん。



「まあまあ、レイラさん落ち着いて」



「ああ、すまない。あ、ほらユウ、もう一度きちんとクリスに謝れ」



レイラにそう言われて俺はクリスの方に向いた。もう完全に泣き止んでいて、クリスも俺を見ている。



化粧は全て落ちていたが別に悪くはなかった。卵形の小さな顔には若干そばかすがあるが、別に気にするほどでもない。茶色の長い髪を後ろで三つ編みにしている。



「えーと、ごめんなさいでしたあッ!」



体操選手もビックリなぐらい身体を曲げて謝った。そう、まるでホッチキスのように。俺は膝にキスをする。



「……………」



沈黙が流れる。こんな沈黙が1番怖い。



「ユウさん?」



クリスが少し枯れた声で話し出した。余計に罪悪感を感じる。



「私、本当に怖かったのですよ?」



「ごめんなさい…」



「もう死んじゃうのかと思いました 」



「本当にすいません…」



俺はひたすら直立ホッチキスで謝り続ける。



「あなたが私をからかったとわかった時は怒りでいっぱいでした。それでも怖さが勝ってましたけど」



「……ごめんなさい…」



「でもあなたな真剣な顔で何度も謝ってくれました」



「…………………」



「今も真剣に謝ってくれていますしね。まだそうして頭を上げないのがいい証拠です」



俺は直立ホッチキスのままクリスの話に耳を傾ける。そろそろお尻がぷるぷるしてきた。



「もういいですよ。許します」



クリスは優しく呟いた。だが俺はまだ頭を上げない。



「ユウさん、もう頭を上げてください」



ここでようやくホッチキスの芯を変えるタイミングがきた。俺は起き直る。



「しかし…クリス、いいのか?」



「いいのですレイラさん。でも一つ、考えがあります。ユウさん? あなたはさっき私にお詫びをすると言いましたね?」



クリスは少しニッコリしながらこんなことを尋ねてきた。やばたん。



「は、はい言いました。あ、ユウでいいです」



「ではユウ、この大会が終わったら、私とレイラさん、それにキョウちゃんやアリンちゃんユミンちゃんにご飯をおごってください。それでもうスッキリ流します」



なんとクリスはご飯をおごってくれたら、今回の件を完全に許してくれるような事を言ってきた。ご飯を奢るだけでいいなんてちょっと安すぎやしねえか。もっとなんか高価な物をねだられてもよかったのだが。



「そんなのでいいの?」



「ええもちろん。本当は何もいらないんですけどね。やっぱりけじめはつけておこうと思いまして。図々しい事を言ってごめんなさいね?」



クリスは意外としっかりした考えを持っていた。



「クリスが謝る必要はないぞ。ご飯か、全然いいな!おいキョウ、どこかいい場所知らないか?」



レイラがにニヤニヤしながらキョウに尋ねる。



「あ!あそこなんてどうですか? シュガルビッツのお店!一度は入ってみたいと思ってましたんですよね~!」



キョウもニヤニヤしながら返す。



「おお!奇遇だな私もだ!あそこは1品1品高いからな~。未だに入ったことがないんだ」



おいこら待て待て待てお前ら一体どんな所に行こうとしてるんだオイ。



「ちょっと、キョウちゃん!レイラさんも!あそこで4人分の料理なんか奢ったら大変な事になりますよ!」



そうだそうだ。もっと言ってやれアリン。お前だけが俺のオアシスだ。



「それじゃあ、クリスはどうなんだ? クリスが決めてくれ」



レイラはクリスに親指を立てながら聞いた。やめろ。やめろ。親指なんか立てるなバカ。



「うーん、そうですね。それじゃ~……」



クリスは俺を見る。



やめろ、やめろ。他のとこにしようと言うんだ。俺は目線でそういう言葉を送る。



「そこにしましょう!」



「なんでえええ」



俺は地面に項垂れる。



「はは、ユウ!ご馳走様!」



「ユウさんゴチになりや~す!」



「えーと、ごめんなさいね?」



「あー。すいませんユウさん。ほんとごめんなさい」



くそう、なんだこれ。なぜこんなことになった。どこで選択を間違えたんだ俺は!



「アリンお姉ちゃ~ん。どうしたの?」



今まで1人で遊んでいたユミンがやってきた。この小悪魔め。人の苦労を知らずに遊びやがって。こちょこちょしていじめてやろうか。



「ユミンちゃん、今日の晩御飯は美味しいご飯が食べれるのよ!」



キョウがユミンの頭を撫でながら答えた。ユミンは嬉しさの余り、頬っぺたを赤くさせて走り回っていた。



めちゃくちゃ可愛いけどもう俺は騙されないぞ!ぷんすか!



「ユミン!走り回っちゃ危ないよ!でもユウさんいいのですか?」



アリンが、項垂れている俺を申し訳なさそうな顔で覗き込んできた。あぁ愛しのマイエンジェル。その顔で俺は十分だ。もう吹っ切れた。



「まー、仕方ないな。今回は俺が完全に悪いし。好きなだけ食べるがいい!」



「お!ユウさん男前だね~」



「キョウちゃんヨイショしすぎ」



「なはは、ごめーん」



「ははは」 「うふふ」



このキョウって子、世渡りが上手いだろうな。話をしていてそんな気がする。



「あ、改めて自己紹介しておきますね。私はクリス・カーソン。今年で21歳です」



「へえ、俺の2個下か。4つか5つぐらい下に見えたけどな~」



「こらユウ!」



「いいです、自覚はあります。顔が小さいし童顔だしね」



自覚あったのか。ごめんなさーい。



「そしたらユウさんは22歳なんですね!? 全然見えな~い!」



「キョウちゃんも!」



「大丈夫大丈夫。俺も自覚あるしっ!」



あははははっ



みんなの笑い声が上がる。ユミンは相変わらず蝶々と遊んでいる。てかアリン、ユミンほったからしすぎじゃね。



『連絡します。連絡します。あと10分後に第4回戦第1試合目を行いたいと思いますので、出場する選手は控え室へお戻りください。連絡します。連絡します。あと………』



「ありゃ、もう昼休憩終わっちまったな。全然休憩した感じがしねえ」



「ユウさんが暴れるからでしょ~?」



「そこは言っちゃだめだ、キョウちゃん!」



「え~。私だから言えるんですよ!」



しかしこの子よくしゃべってくるな。凄く絡みやすい。といけね、早く行かなきゃ。



「んじゃ…行ってくるわ!レイラ、アリン、ご飯さんきゅうな!クリスもまた後で!」



俺は休憩室に向かって走り出した。



「あ、ちょっと待てユウ!」



少し走ったところでレイラが追いかけてきた。



「どうした?」



「ユウの次の相手、リオンに勝った奴だが…」



あ、そういやリオンをからかいに行くの忘れてた。



「そいつがどうかしたのか?」



「奴の体捌きや技なんかは見たことがなかった。ユウの使うそれと一緒で、私たちの知るのとはまた別次元なことだけはわかったのだが…」



確かに薙刀らしきものを持ってたしな。武道の継承者って奴か?ヤマトだったっけ?名前も日本古来みたいだしな。あり得ない事はないか。



「なるほど!ありがとう!まっ、奴の使う武器の知識はあるから大丈夫だ」



「そうなのか? 気を付けろよ? ここまで上がったら勝ち上がって来てほしいけど、その、傷付く姿は見たくないからな。ユウはまだ戦いに慣れていないのだし……」



「心配なのか?」



「う、うるさい」



どうやらレイラは心配してくれているらしい。素直にうれしい。



確かに実戦はまだ3戦しかやっていないが、実は1試合目で割と戦闘の雰囲気というものに慣れてしまったのだ。この順応性の高さも俺の1つの武器だ。



「ふえっ」



俺はレイラの頭にポンッと手を置いた。



「なに可愛い声出してんだ。そんなに心配ならそのネックレスでも握ってろ。それに俺にはせコ~い魔法まであるんだぞ? そんな簡単に負けるかってんだ」



レイラの首には俺が前にあげたネックレスがつけてある。俺はちょっと嬉しくなって頭を撫でまくる。



「わ、わかったから、もう!子供扱いするなッ!」



「おっとごめんごめん!んじゃな!」



レイラは赤くなったので、電撃が飛んで来る前に走って控え室へ逃げた。






ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー







ユウとレイラが話をしている時、後ろの方ではこんな会話が流れていた。




「……………」



「あちゃぁ~。アリン、ドンマイ。あんたの付け入る隙ねえわ」



キョウはアリンの目線に気づいたのか、ニヤニヤしながらアリンに言う。



「きょ、キョウちゃん!別に好きとかじゃないよ!なんか、憧れというか…」



「あれ~、私は別に好きとか言っていないけど~?」



「もう!違うって!それに、ネックレス…」



「あー、ユウさんのブレスレットと同じだったねー。レイラさん綺麗だもんねー。ありゃ仕方ないわ」



「うん…」



ユウとレイラがお揃いのアクセサリーをつけていたのをこの2人は気付いていた。



「アリンお姉ちゃん…」



ユミンは心配そうな目でアリンを見つめる。ユミンはもう遊ぶのをやめてアリンの傍に帰ってきていた。



「ふふ、青春ね!でもまだそうと決まったわけじゃないよ。諦めたら終わりだよ!?」



クリスもニッコリしながらアリン言う。



「く、クリスさんまで!違いますって!そんな、好きとかじゃ…!」



「クリスさん、この子可愛いでしょ?」



「うん、可愛い!」



「もう!からかわないでください2人とも!」



アリンはそう言って腰に手を置いて頬っぺたを膨らませる。



「くださいなの!」



さらにユミンもアリンと一緒の事をしだした。1人でも可愛すぎるのに2人一緒にやるのは反則だった。2倍ではなく2乗だった。あまりの可愛さにキョウとクリスは鼻血が出そうになる。



「あ、あのお姉ちゃん帰ってきたよ~」



ユミンはレイラが帰って来るのに気付いて手をふった。



「すまない、待たせたな」



「いやいや、そんなことはないですよ~」



キョウが元気良く返す。



「そういやクリス、今日は1人なのか?」



レイラがふとクリスを見て言った。



「あ、はい。今日は1人でここに来ました」



「それなら私と一緒に見ないか? ギルドの仲間たちも一緒だが」



「え? でも、私なんかがいてもいいのですか?」



「安心しろ。みんなやたらと優しいから大丈夫だ。心配なら私の隣にいたらいいぞ」



「それじゃ、お言葉に甘えちゃいます。ここには出店を見にきたんですけどね、やっぱ1人じゃ大会は見ずらくて」



クリスはこの大会のための出店に食べ歩きに来ていた。試合も見てみたいと思っていたが1人では中に入る勇気がなかった。



「レイラさん、私たちも一緒に見に行ったらダメですか? 友達もみんな帰っちゃったし…」



「そうですレイラさん!私たちも一緒にいいですか?」



「あたしも~」



「全然いいぞ? まだいくつか席が空いていたはずだ。それにこの大会が終わればユウにみんなで奢られに行かなきゃならないしな!」



レイラはニッと笑って答えた。大会が終われば人ゴミでいっぱいになるので、今別れれば再度会うのはなかなか難しくなる。レイラもアリンたちを誘おうと思っていたところだった。



アリンたちはレイラから良い返事が聞けてとても喜んだ。ユミンに至ってはレイラの足に抱きついていた。その余りの可愛さにアリン以外の3人は鼻血が出かける。



それからレイラはユミンを肩車して、アリンたちをギルドのみんながいてる場所へと案内した。レイラの身長は女の子の中でも結構高い方だ。肩車されてるユミンのテンションは上がりっぱなしだった。



「あらレイラちゃん。そちらの方達は?」



観客席に戻ると、クリスたちの姿を見たナミが話しかけてきた。



「こちらはクリス、休憩中に知り合ったんだ。ユウがまたやらかしてな…」



「はじめましてクリスと言います。すいません、急にご一緒させてもらうことになりまして」



クリスはナミの前に行って挨拶をした。



「いいえ全然。気にしないで?」



「そしてこちらの制服を着ている2人がアリンとキョウだ。私の学校の後輩なんだ」



「はじめまして!キョウと言います!」



「は、はじめまして。アリンと言います」



「はじめまして。私はナミと言います。ギルド、フェニックスのマスターよ」



「え? うそ!」



「あのフェニックスですよね? すごい!」



ギルド、フェニックス。この町1番大きなギルドであるため、知らない方がおかしい。しかしキョウたちはそんな凄いギルドのマスターがこんな若い女の人だなんて想像すらしていなかった。



「そしてこの可愛い生き物が~」



レイラはまだ肩に乗せているユミンに目を移す。



「ユミンなのだ!」



ユミンはレイラの頭にしがみついたままピースして元気良く挨拶した。その可愛さに周囲にいた観客たちは悶絶する。全員幸せそうな顔をして昇天した。



「かかかか可愛い!レイラどうしたのその子!? どこで拾ってきたの!? まさかレイラの子供じゃないでしょうね!?」



ユミンの可愛さに発狂しかけのリリィがレイラに詰め寄る。



「ちょ、ちょっと落ち着け!ユミンはアリンの妹だ」



「ユミンはアリンお姉ちゃんの妹だよ~?」



「きゃわ!きゃわ!あーん、レイラ!あたしにも貸して!あたしも抱っこする!」



リリィがついにおとされてしまった。ユミンをだっこしようとレイラに近付く。



『それでは、4回戦第1試合目を行いたいと思います』



するとここで司会者からのアナウンスが入った。リリィはもう始まるから座れとレイラに諭されて、しぶしぶ元の席に戻っていった。



席は3つしか空いていなかったのでその席にはクリスとキョウとアリンが座り、ユミンはレイラの膝の上に乗ることになった。



「お、おい。いつからギルドはこんなに華やかになったんだ?」

「わからん、わからんが、なんか…」

「ああ、ごくり」



昼休憩が終わったと思ったらレイラが女の子達をいっぱい連れてきた。しかもみんな可愛い。



このギルドは女の子の割合が非常に低い。さらにいつもギルドにいる面子はナミ、レイラ、リリィの3人だけだ。他の女性はほんのたまにしか来ない。今日だって男たちは20人近く来ているというのに。



ギルドの男性陣皆は、男だらけで酒くさいこんな場所にまさか女の子がくるとは夢にも思っていなかった。そして…



「おい…」

「ああ、お前の言いたいことはわかるぞ…」

「いや…みんなわかっているはずだ…」

「そうだ……なんたって……」



「「「「「せいふくぅうううぅうううううううううう!」」」」」



「ひっ!なに!?」 「ひゃ?」



キョウとアリンに向けられた大勢の声に、キョウたちはビックリしてしまった。



みんなはユウに制服についての良さを叩き込まれていたので、制服を着たアリンとキョウが可愛すぎてたまらなかった。ただでさえ可愛いのに制服姿は反則級の大量破壊兵器だった。すぐに脱がして武力解除したい衝動にかられる。これぞ一致男結。



だがその瞬間、物凄い轟音がすぐ近くで鳴り響いた。みんなが座っているすぐ上の避雷針に雷が落ちたのだ。



「手を出したら落とす」



レイラが殺人鬼の如く鋭い目で睨んで言い放った。そのあまりの怖さに男性陣は縮こまる。さらにクリスやアリンたちでさえ震えてしまっていた。ユミンは相変わらずポカンとしている。



「あ、お前たち、すまない!」



レイラはクリスたちがびびってしまっているのに気付いて謝る。



「い、いえ大丈夫です!それよりレイラさんとても強いんですね!?」



クリスが華麗なフォローをする。そしてクリスたちは何があってもレイラには逆らわないでおこうと誓った。



『えーと、試合を始める前に、昼休憩中に届きました、今残っている選手に向けたお便りを紹介していきたいと思います』



続いて、司会者から今現在残っている選手に届いているお便りを読み上げるというコメントも入る。



「あ、何やら始まるらしいですよ~」



「そうですね、お便りらしいですよ。ユウさんはどんなこと書かれているのでしょうね、私楽しみです!」



アリンはハラハラしながら司会者の言葉に耳を傾ける。あんな事をしたユウがみんなから何て思われているのかとても気になっていたのだ。






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