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武闘会 <開会式>



翌朝、空高く上がった空砲の音で目が覚めた。窓を閉めていても聞こえてくるぐらい外はお祭り騒ぎになっている。



顔を洗い、大会の準備が出来たところでレイラが部屋に尋ねてきた。昨日、会場まで案内してもらう約束をしていたのだ。



ギルドの中はもうほとんど誰もいない状態だった。皆、我先にと会場へ向かっているようだ。



数十分歩き、野球ドーム並のくっそでかい闘技場に着く。正面玄関に書いていたが、この闘技場はコロッセウムという名前だそうだ。そこからぐるーっ周りを数分歩き、選手専用の受付の場所まで辿り着いた。



「なあレイたん」



「どうした?」



「人が多すぎないか? こんな人数に見られながら戦うのか?」



コロッセウムの観客席は人という人で埋め尽くされていた。いったい何万人いるんだ?という感じだ。



「確かに、今年は例年よりも多いかもな」



「うわ〜帰ろうかな〜」



「帰ったらお前の負けでパンツ姿で歩いて貰うぞ?」



「あぁ?」



「リオン!」



冗談を言っていたら、いつの間にか現れたリオンが憎たらしい事を言ってきた。



いかにも高そうな鎧にいかにも珍しいであろう剣を腰に添え、赤いマントまで羽織っている。さながら自分は勇者だと思っているのだろうか。



「おはよう。もしかしてレイラも出場するのか?」



「いや、私はユウの付き添いだ。この場所までの案内できたのだ」



「ふん、自分で来る事もできないのか。子供じゃないか」



ぐぬぬぬぬぬぬぬ!コイツと当たるまで絶対に負けねぇ!つか1回戦で当たれ!ボコボコにしてくれるぅ!!



「気持ち悪い目で見ないでくれ。戦い前に気分がそれるのだけは勘弁してほしいものだ」



そんなんもんで気分がそれるのならもっと見てやるぜ!オラオラオラァ!!



俺はリオンをガン見し続けた。



「な、なんだよ? 何かついているのか?」



「……………」



「だ、黙ってないで何とか言え!」



「……………」



「ははっ、わかったぞ。俺のこの防具と武器が珍しいのだろう!? お前はそんなちんけな防具と武器しか持っていないもんな!」



「……………」



「なんか喋れよ!」



「お前……………」



「な、なんだ?」



「鼻毛出てるぞ?」



「な!嘘だ!」



リオンは鼻に手を突っ込んで鼻毛を抜こうとする。それを見た俺はニヤついてしまう。



「リ、リオン……」



このニヤついた俺の顔を見てレイラは何か察したようだがもう遅い!



「みっなさーん、この子、鼻クソ穿って食べてますよぉおおぉおおおおお」



「なっ!」



周りにいた人達が俺の声に反応してざわつき始める。



「見てみて~!今ほら!人差し指で!ほら!食べるよ~食べるよ~!」



「なんだなんだ〜? 鼻くそ食べてる?」

「ホントだ!アイツ鼻くそホジってやがるぞ!」

「どこどこ~? うわ、きっしょ!」



いつの間にか人だかりが出来ていた。



「や、やめろぉおおおおおお!俺はそんなことしていない!」



「言い訳は見苦しいぞ!はやく食べるんだ!」



俺はニヤニヤしながらリオンに言う。



「はやく食べろよ~」

「何してんだよはやく食べろよ~」

「ねぇねぇ、ママァ。鼻くそって食べれるの?」

「あのお兄ちゃんは頭がおかしいから食べれるのよ。僕は頭おかしくなりたくないよね~? だったら食べちゃだめよ~?」

「うん!僕、あんな頭の悪い人を賢くする薬を作るんだ!」



周りのギャラリーも騒がしくなってきた。坊主…泣かせてくれる事を言うじゃないか。



「さあどうするんだリオン!みんなが見てるぞ!はやく食べないのか!?」



「ユウ…もうやめてあげてくれ…」



何を言ってんだこの鬼畜大魔王。こんな面白い事をやめれるはずがないじゃないか。



「ち……ち……………」



「血? 何だ? 生理か?」



「チクショオオオオオオオオオオオオオ!!」



リオンは恥ずかしさのあまり脇役さながらのセリフを吐いて走って中に入っていった。



「はははは、ほんといじり甲斐があるな!」



「全く、やりすぎだぞ?」



「すまんすまん」



『連絡します。武闘会に参加する選手の方は中へお入りください。連絡します。武闘会に参加する…』



ここで、大会本部のほうからアナウンスが入った。もう少しレイラと話をしていたかったな。



「あらら、もうきちゃったよ」



「……………」



レイラは俯いて黙り込む。



「大丈夫だ。心配するな」



「本当に無理はするなよ!危険だと思ったら直ぐに棄権しろよ?」



「だじゃれ?」



「バカ!真面目に聞け!」



レイラは顔を赤くする。最近赤くなるのが多いな。リンゴ病なのかな?



「わかってるわかってる。それに優勝したらおっぱいモミモミだしな。レイたんって実はムッツリだったんだな!ぬはは」



「う、うるさい!バカ!!」



「いってきまああ!」



レイラは槍を出してきたので俺は急いでコロッセウムに逃げた。



選手専用の入り口から入り、案内通りに進むと小ホールみたいなアリーナについた。中は体育館ぐらい広いが、出場するであろう選手で埋め尽くされている。



筋肉モリモリの人や、目つきが悪くいかにも殺し屋だぜ!って人やガッチガチの防具をつけた人や、バカでかい斧をもったバカでかいオッサンや色々な人がいた。



みんなそれぞれ纏っている覇気が凄いな!百戦錬磨って感じだな!俺なんかひょろひょろじゃんまじで!つか絶対これ50人以上いるよな?まじでやばくねこれ?



「……なかなか珍しい武器を扱うのだな」



「へ? あ、あぁ、この刀?」



参加者の覇気に気圧されていると、背が高くて腰にロングソードを差しているお兄さんが話しかけてきた。防具などは何も付けていない。金色の長髪だが、かなりのイケメンの部類に入るであろう容姿をしている。



「俺はデューク・ハイドだ。よろしく」



「ああ、よろしく~。俺はユウって言います~」



「俺の名前を聞いても驚かないのか……お前、この国の者じゃないだろ?」



「いや、最近来たばっかっという感じです」



「そうなのか。この国はいい国か?」



「はい!それは間違いない!」



「そうか!それは良かった!」



そう言ってイケメンはニコッと笑った。あまりにもイケメンすぎたのでどうやってこの顔を爆発させてやろうかと真剣に考え込んだ。



『ただいまを持ちまして、参加を締め切らせていただきます』



「お、もう始まるぞ」



「デュークさーん、この大会は何回も参加してるんですか?」



「ああ。それとデュークでいい、敬語もいらん」



「ういす」



『それでは、説明させていただきます。あと30秒ほどでこのアリーナ内にいる人はコロッセウムの試合場に、2人組で順番に並ぶ様に転送されます。その2人組はランダムで選ばれます。また、2人組になった相手は1回戦の相手となります。以上でこのアリーナでの説明は終わります。転送が済み次第、詳しい説明をしますので悪しからず。それでは転送します』



「なんだなんだ? 一体何を言ってたんだ? わけわかめ」



「なるようになるさ」



「そんなこと言ったって……ッうひょおあ!!」



次の瞬間、変な浮遊感に襲われた。ぐるぐる頭が回転しているようで吐きそうになる。



頭上がパッと明るくなったかと思うと、徐々に浮遊感が収まり地に足が着いている感覚を思い出す。



ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!



「な、なんだなんだ?」



そこで見たものは何万人という人々が大歓声をあげている姿。そのあまりの凄さに俺は少しちびりそうになる。



「すげ!…うえっ……げろげろげろげろ」



初めての転送で慣れておらず、俺は胃の中身をぶちまけた。



『さーて!今年もやってまいりました武闘会!世界中の国々から集まった猛者達が己の力を競い会う時!第36回セントブルグ国主催、武闘会を始めまぁああああす!!』



ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!



「うるせぇ~、つか気持ちわりい…おえ………げろげろげろげ」



俺の近くにいる選手は、吐き続ける俺を不快な目でみてくる。



「はっ、1回戦は余裕だな!もうけもんだ!」



「なんだと…?……おえぷ……」



俺の隣にいたヘラヘラした男が何か言ってきたが、それどころじゃなかった。



『おーと、早くも1名ダウンしているようですがぁ~、まぁずはセントブルグ国王からのご挨拶でえーす!!』



瞬間的な歓声が上がる。数秒してそれは静かになった。



国王…?国王ってあれだろ?無茶苦茶偉い王様だろ?やっぱ一言目から偉そうな挨拶するんだろ?





『こんにちはぁ』





ちょっ!



こーんにーちわぁあああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア



『ほっほっほ、今日はいい天気じゃの。こんな晴れた日にこの大会が開催できて心から嬉しく思うぞ』



ちょー、ちょちょちょちょ!!!国王全然普通じゃん!もっとこう『皆のもの!ひれ伏すがよい!』って感じじゃねえのかよ!ただのじいさんじゃん!俺はがっかりだよ!嘘つき!



『選手諸君も日頃鍛えた技と気力を十分に発揮して、思う存分戦ってくれることを期待しておる。健闘を祈るぞ』



ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



『あ、今年も優勝者には良いものをやるぞーい!しっかり頑張れーい!』



ワァアアアアア!!



「嘘つきいいいいい!!嘘つきいいいいい!!」



「何叫んでんだお前? 頭狂ったのか?」



俺を嘲笑っていた奴がさらにニヤついた顔で言ってくる。



「お前には分からないだろうな!この裏切られた感MAXの気持ちを!」



「はい?」



俺はまた少し暴走していた。



『ありがとうございました国王様。さーて、ではさっそく試合の説明に移りまあす!』



ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア



『今回も例年同様、トーナメント式で行いまぁす!そのトーナメントはッこちら!ハィッ!』



司会者が叫んだ瞬間、1列に並んでいる俺達の頭上に光の線が出来上がり、それぞれその光が重なり合ってトーナメント表を作り始めた。



立体のトーナメント表だと!すげえ!



『はいはいはい、観客席の皆様はご覧の通りよくわかると思いますが!!試合の順番は各番号が書かれてあるので選手諸君は確認しておくように!3なら3試合目!17なら17試合目となりまーす!』



俺の頭上にある番号を確認するとは6だった。ということは6試合目か。ふと横を見ると、ニヤけた面をした奴の頭の上にも6の数字があった。こいつが初戦の相手か。



『試合は一組ずつ行います!勝敗も例年通り、降参させるか、気絶させるかのどちらかだ!そして、3試合目までは各試合10分の制限をつけさせていただきまーす。10分を越えても決着がつかない場合は審査員の判定となりまーす!』



へー。わりとルールきっちりしてるんだな。僕ちんびっくり。



『参加者の皆様は後程、控え室でスタッフよりペンダントを受け取り下さーい!身体に受ける全ての傷を肩代わりしてくれる超貴重な軍事品でーす!思う存分自分の得意な領分で戦ってくださーい!武闘会用に痛覚は残すように設定しておりますので、当たりどころが悪ければ気絶しちゃいますよ~!敗北時はスタッフがペンダントを回収しますのでご協力下さいね!!!』



傷を肩代わりしてくれるペンダント!?何それすげえ魔法具じゃん!!しかも痛覚の設定までできんのかよ!!えぐいな!!



『さらにさらに~、観客席の皆様によりお楽しみいただくためにぃ、コロッセウム観客席最上部に4つの投影モニターと、会場上空にも浮遊投影モニターを設置しましたあああ!』



ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!



『このモニターでは、戦闘の様子やトーナメントの様子などを投影しますので~、どうぞお楽しみくださあああい』



なんか一気に近未来化したぞこの会場!大丈夫か!



『また、このコロッセウムの観客席手前には防御壁を常時展開しておりますので、ご安心して試合を観戦して頂けます。さらに万が一に備え、全ての観客席に転送装置が付いておりますので、緊急脱出も可能です。各自背もたれに記載している使用方法をご確認くださーい』



まじで!? この会場くっそハイテクじゃん!!



『では、さっそく1試合目に移らせていただきます!1試合目以外の選手の皆様は数字に色がついてるのが分かると思いますが、赤色は東側へ白色は西側の控え室へ向かってください!』



俺は白だから西側か!西側ってどっちだ?…て、モニターに書いてあるし!…て、みんなもう向かってるし。



「ははは、すぐに終わらせてやるよ」



後ろから初戦の相手の声が聞こえてきたが、俺は無視してケツを叩きながら控え室に向かった。


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