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武闘会 <前夜祭>



それからというもの、俺は2週間近くぶっ通しでクエストに行っていた。体力作りの為クエストには全部走って行き、この2週間でかなり強くなったと思う。週末にレイラがギルドに来てクエストを一緒に誘ってきたが全部断っていた。男の勝負にレイラの手助けを貰うと何かズルしているようで嫌だったのだ。



今の俺は最初に襲われた3m越えのバギュラなんかは確実に瞬殺できるだろう。それにいつの間にかクエストで稼いだお金がいっぱい貯まっていた。



何でそこまで頑張れるのかって?



それはな、おっぱいのためなんだよ!俺はな、おっぱいがあれば何だってやる男なんだよ!おっぱいで例え人生が狂おうと知ったことじゃない!おっぱいにしゃぶりつけるなら俺は全世界を敵にまわしてやる事だってできるんだ!!



………っと、暴走してしまったな。相変わらず悪い癖だ。つーか、いつしゃぶりつけることになったんだ?まあいいや。



武闘会を明日に控え、俺は武器と防具の点検をギルドの自室で行っていた。



ここ数日、街はお祭り騒ぎのようであちこちに店が出ている。色々な国から人が来ているので、人通りも多くなっていた。



今は正午を回ったぐらいで日差しも良く、街の人は外に出ているのか、ガヤガヤと騒ぐ声が窓の外からから聞こえてくる。



ふと、扉を叩く音が聞こえた。



「ユウ、いるか?」



そしてレイラの声が聞こえてくる。



「いるぞー!ちょっと待ってろ」



俺は手入れをしていた刀を棚の上に置き、扉を開けた。



「oh......」



そこにはレイラが立っていたのだが、透明感のある白のワンピースを着て、花飾りのような髪留めを付けていた。いつもの戦闘服を見慣れていたせいか、可愛い格好のレイラに思わず見とれてしまう。



「な、何か変か?」



レイラがたじたじと自分の格好を見る。



「うん、変だ。めっちゃ可愛い」



「バカ!照れるだろ!」



「いや、まじで可愛い。そんなにお洒落してどうしたんだ?」



「もう、可愛い言い過ぎ…。えっと、ユ、ユウ。今から一緒に出店を回らないか?」



「行く!!」



脊髄反射で即答だった。多分、返答に0.1秒も経っていないだろう。



「その、最近ユウずっとクエストばっかり……へ? 行く? 今行くって言った?」



「おう、行こーぜ!」



おそらく、色々誘い文句を考えてきたんだろうな。言う練習とかしているレイラを想像してしまう。



「本当か!」



不安だったんだろう、俺の返答を再度確認してレイラは凄く良い笑顔になった。



「本当だよ。すぐに着替えるからちょっと待ってくれるか?」



後でクエストに行こうと思っていたけど、もうどうでもいいや。女の子が気合い入れて誘って来たんだぞ?この誘いを断る男がいるか?いたら俺が滅殺してやる。



俺はすぐに着替え、部屋の外で待っているレイラの元へ向かった。



その後すぐにレイラと一緒にギルドを出たが、そこら中人と物でごった返していた。道行く道に人と出店。いつも以上に街が活気に満ち溢れていた。



「凄い人だな、本当にお祭り騒ぎだ」



「そうだろ? 武闘会はセントブルグ1番の催しだから凄い人が集まるんだ」



「それじゃあレイたん、一緒に回ろうか。人多いし離れるなよ?」



俺は手を差し出す。こんな人混み、男がエスコートしないでどうするよ。



「え、と…」



レイラは恥ずかしいのか、少し戸惑っていた。



「ほら行くぞ!」



「わ!ちょ、こら!ユウ!」



俺はレイラの手を取り引っ張る。



「しっかり握ってろよ?」



「わ、わかったから」



頬を赤らめて答え、手を握る力が少し強くなる。レイラが俺の横に並んだ時、以前レイラにあげたネックレスが首元からチラリと見えた。



「それ、付けてくれていたんだな」



「あ、当たり前だ。こんな貴重なもの貰ったの初めてで…」



「レイたん見てこれ、一緒のやつ。俺ブレスレットにして付けてんだー!」



俺は右手に付けているブレスレットを見せる。



「な、それじゃあお揃いみたいじゃないか!」



「お揃いだぜ?」



「恋人でもないんだぞ!」



「うーん、今俺達の事を周りから見たら恋人に見えると思うよ?」



そう言うとレイラは停止した。そして、握っている手、続いてネックレスとブレスレット、そして俺の顔に目を移したところで顔が物凄い真っ赤になった。



「ははは!今頃気付いたのかよ!!」



「う〜、う〜、うるさい!!私こういう事に全然慣れてないんだ!からかうな!!」



目尻に涙を少し浮かべている。恥ずかしさ全開なのかもしれないが、俺からすれば今日のレイラは可愛さ全開だった。なんだこれ、鬼可愛い!!!



「今日は俺の奢りだ。じゃんじゃん欲しい物を俺に強請るがいい」



レイラの手を引っ張りながら、人混みの中へ歩いていく。出店から焼物のいい匂いがしてくる。とりあえず腹ごしらえをしたくなった。



「ちょっとクエスト行けるようになったからって威張るなよ」



「それもレイラのおかげだよ? ありがとうな!」



「真面目な顔をしたからって騙されないんだからな!」



「ははは。今日の俺はレイラに何言われても可愛いとしか思わない。最強!」



「もーバカユウ!!」



「ははは、よし行こーぜ!いっぱい楽しもう!!」



「う、うん!!」



レイラは飛びっきりの笑顔を見せる。



その笑顔にドキッとしてしまい、少し照れ臭くなった。




ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーー



俺達はあちこち出店を回った。基本的に食べ物ばっかり買って、食べ歩きをしていた。街中のほぼ全ての道沿いに色んな出店が出ていたので、飽きることは無く次から次へと出店を回っていた。的当てや宝探し的なゲーム屋もあり、レイラと思いっきり遊んで楽しんだ。



そしてもう日も暮れようとする頃、街の少し高台になっている場所に建っている時計台の屋上へ来ていた。レイラが的当てに夢中になっている時、店屋のおっちゃんからここが結構な穴場スポットだとこっそり教えて貰っていたのだ。



「凄い!街一望できる!夕日も綺麗!」



この時計台の屋上は本当に穴場だったみたいで俺達の他に誰一人いない。レイラの言う通り街を一望でき、夕日に照らされる街並みが凄い綺麗だった。



「よくこんな場所知っていたな!」



屋上の柵に腕を起きながらレイラはこっちを見る。夕日をバックに微笑むその姿は本当に綺麗で眩しい。



「こっそりと調べたんだよ」



「本当にユウは凄い奴だ」



ぼそっと呟いたそれは風に溶けていく。



「レイラ、今日は誘ってくれてほんとありがとう!めっちゃ楽しかった!こんなにわくわくしたの久しぶりだったよ!」



「私も楽しかったぞ!礼を言うのはこちらの方だ。急に誘ったにも関わらず本当にありがとうユウ!」



……………。



「……ありがとうレイラ」



「どうしたんだよ改まって。ユウらしくないぞ?」



本当に今日は楽しかった。本当に本当に…。



「あれ…おかしいな…」



何故か涙が出てきた。



「ユウ!?」



レイラが心配そうに駆け寄ってきた。



「ちょ、わり、少し待ってくれ」



「ユウ大丈夫か!? 何か私が悪い事言ってしまったか!?」



「ち、違うんだ。違うんだ、ちょっと待ってくれ、頼む」



だめだ、何故かレイラの前だと感情が止まんないや。



「ほらユウ。よしよし」



「ッ!?」



気づいたら俺はレイラに抱きしめられ、頭を撫でられていた。



「いつも心配していたんだぞ。大丈夫かなって。ユウは違う世界から来って言ってたし、知り合いも誰一人いないこの世界でずっと一人で頑張ってたからな」



ちょ、やめろよ。



「本当によく頑張ったな」



「う……くそう…、レイラのくせに…泣かされるなんて…う…ぐぅ…」



レイラの言う通り、今まで本当に心細かった。勢いとノリで誤魔化してはいたが、知り合いもいない、常識も違う、生活環境も違う、そして何故か魔法まで使えてしまう、そんな状況に頭の整理も追いつかずいっぱいいっぱいになっていたようだ。



「ぐずっ……手を繋ぐだけでも恥ずかしがってたのにこんな事しやがって」



「私が小さい頃、不安になった時とか祖母にこうして貰っていんだ。不思議と落ち着くし、何故か今私自身そうしたくなった。もう私の前では強がらなくていいぞ〜、この泣き虫め」



くしゃくしゃと、俺の髪の毛をかく。



「う、うるせえこれは仕方ねえんだよ。泣き虫言うな!」



「ふっ。散々私をからかった罰だな」



そう言って俺に微笑みかけ、抱擁を解いた。



「………ぐずっ。あ、ありがとうレイラ。だいぶスッキリしたよ」



この世界で俺はひとりぼっちだとか思っていたが、俺の事を気にしてくれて、優しく接してくれる奴が少なくとも目の前にいる事を知った。



涙を拭き取り、顔を上げる。



「「……………」」



レイラの顔がすぐ近くにあり、お互い目があった。



「なんて綺麗な顔してんだコイツ」



「ふえ…!?」



「ありゃ、口に出てしまってたてへぺろ」



「ユウ〜!」



レイラはみるみる赤くなる。



「ごめんごめん、本当に思ったこと口から出てしまってた」



「……この女たらし!!」



「それ自覚してるけど1番言われたくない言葉ぁ!!!」



殴られはしなかったけど、少し反感を買ったのかも知れないと思った。



それから俺達は街に戻り、レイラを家に送り届けた。帰り際に明日の武闘会の心配をされたが、レイラが応援してくれるなら大丈夫と伝え、俺はギルドへ向かった。



心強い味方ができ、溜まってたものも吐き出せ、今日は本当に良い機会になったと思う。



明日の武闘会に備え、今日は早めに休む事とした。




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