表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時の楔 ~死ねない底辺鍛冶師、セーブ&ロードで運命を覆す~  作者: あくす


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

第14話:二度目の路地裏

視界が光に包まれ、次に目を開けた瞬間、俺は再び王都の大通りの路地裏に立っていた。


目の前では、高ランク冒険者の男が下卑た笑みを浮かべてセレナを見下ろしている。


時間が巻き戻った。


男がセレナの腕を無理やり引っ張ろうと手を伸ばす。


先ほどの凄惨な暴力の記憶がフラッシュバックし、俺は咄嗟に動こうと筋肉を強張らせた。


だが、その時だった。


「ワンッ!」


俺の足元にいたコハクが、突然俺のズボンの裾をくわえ、ぐいぐいと強い力で引っ張り始めたのだ。


「コハク!?」


俺は思わず目を見張った。


(なんで、1周目と違う行動を!?)


さっきの周回で、コハクはこのタイミングで俺たちを置いて一人でどこかへ走り去っていったはずだ。


それなのに、今はまるで俺をどこかへ誘導するかのように、必死に裾を引っ張っている。


俺は何も行動を変えていない。

なのに、なぜ未来が変わっているんだ?


「おい、お前こっちへ来い」


男が無理やりセレナの腕を掴もうとする。


コハクの不可解な行動について考えている余裕はない。

このままでは、どちらにしろセレナが連れて行かれてしまう!


「セレナ!」


俺は男の手が届くより一瞬早く、セレナの腕を強く掴んで自分の方へ引き寄せた。


「えっ、レイ!?」

「走るぞ!」


男が一瞬体勢を崩した隙を突き、俺はセレナの手を引いて全速力で駆け出した。


俺の前では、コハクが何度も振り返りながら、迷いのない足取りで王都の複雑な路地を先導していく。


「待って、レイ! 無理よこんなの、相手は高ランクの……!」


「無理かもしれない、けどいけるところまで走るんだ!」


背後から、ものすごい脚力で石畳を蹴る音が迫ってくる。


「待て! 貴様らっ!」


男の怒声が響く。

身体能力の差は歴然だ。

懸命に走っても、その距離は瞬く間に縮まっていく。


「はぁ、はぁ……逃げられるわけないだろう。無駄な体力を使わせやがって……!」


路地の角を曲がった直後、ついに男が俺たちに追いついた。


背後から伸びてきた無骨な手が俺の腕をすり抜け、無理やりセレナの腕を掴み上げる。


「おら、こっちへ来い!」

「きゃあっ……やめて! 触らないで!」


セレナの悲痛な叫び声が響く。


再び絶望が俺を飲み込もうとした、まさにその瞬間だった。



「お前たち! そこで何をしている!」



路地の奥から、金属鎧を鳴らしながら数人の衛兵たちが駆けつけてきた。


コハクが俺たちを誘導した路地は、王都の治安維持を担う衛兵の巡回ルートだったのだ。


「チッ……なんでこんな所に衛兵が」


男は忌々しそうに舌打ちをすると、セレナの腕を乱暴に振り払った。


「お前ら、命拾いしたな」


低い声で捨て台詞を吐き、男は衛兵が到着する前に素早い身のこなしでその場から立ち去っていった。


「セレナ! 大丈夫か!」


「君たち、大丈夫かね?」


駆け寄ってきた衛兵に事情を尋ねられ、俺は必死に呼吸を整えながら頭を下げた。


「あ、はい、大丈夫です。お騒がせしました……」


衛兵たちが去った後の路地裏で、俺はへなへなとその場に座り込んだ。


「ぐすっ……レイ……怖かった……」


「あぁ……もう大丈夫だ」


震えるセレナの背中を優しく撫でながら、俺は足元で静かに座っている白い犬を見た。


「コハク……お前も大丈夫か?」


「くぅん!」


コハクは嬉しそうに俺の手に顔を擦り寄せてくる。

(コハクは……なぜ行動を変えたんだ?)


結果的に衛兵のところへ誘導してくれて助かった。

だが、なぜ俺が何もしなくても未来が変わったのか。

この小さな相棒の存在が、ますます謎に包まれていくのを感じていた。


「セレナ……王都のデートは、今日はこの辺にして帰ろうか」


「う、うん……ごめんね、レイ。私のせいで」


「セレナは何も悪くないよ。俺も、ちゃんと守ってやれなくてごめん」


俺が謝ると、セレナは強く首を横に振った。


「ううん、レイはかっこよかったよ。……ね、帰ろ?」


そう言って、セレナは安心したように俺の腕にギュッとしがみついた。


王都の冷たい理不尽に触れた一日だったが、俺の腕に伝わる彼女の温もりだけが、今の俺にとっての確かな救いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ