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霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
最終章 - 未練の果て

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第97話 六畳に六人

「捕まっちゃうなんて、閻魔様はなにしたんだろうねー」


 ゲームのコントローラーを激しく操りながら、晴翔は軽い調子で言う。対戦相手であるひなは、ゲームに真剣すぎて一言も返さない。

 沙斗琉がゲーム画面を見ながら、「うーん」と顎に手を当てる。


「冥界の(ことわり)を曲げようとしたって言うんだから、相当なことだよね」

「ねー! そんな大きいことできる人には見えないけどなぁ」


 沙斗琉と晴翔の会話に、岳も同意するようにうなずく。守ははらはらとした顔で沙斗琉を見る。


「み、皆さん冷静ですね……」

「焦ってもしょうがないからね~。オレたちでどうにかできる話じゃないし」

「だからって、なんで俺の部屋に集まるんだ」


 蓮はイライラしながら、カタカタとキーボードを叩く。いつも二つ繋いでいるモニターは片方をゲームに使われ、若干の不便さを感じている。しかしそれ以上に蓮を苛立(いらだ)たせるのは、六畳の部屋に六人もひしめいていることだった。


 初代閻魔の指示により、当代閻魔は霊魂管理局監察部に身柄を拘束された。すぐに疑いが晴れたら解放されるだろうが、長引けばWSAに移送されるだろう。

 当代閻魔の拘束中は初代閻魔が代わりに業務を行うことになったが、現状の把握に時間がかかるため、その間回収課は業務を停止することになったのだ。

 そしてそれを理由に、幽霊たちはなぜか蓮の部屋に集まったのだった。


 晴翔はゲーム画面に顔を向けたまま、どこか他人事のように話す。


「だって暇なんだもん。埼玉の地理もだいぶ覚えたし、回収以外やることないからさぁ。っしゃ勝った!!」

「え~!? もう一回! もう一回やる!!」

「負けた人は交代だよ~。次は守ね」

「ぼ、僕は物持つの上手じゃないので……。沙斗琉さんやりますか?」

「オレもコントローラー落としそうになるんだよねぇ。ゲームに慣れてないからかな。がっくんやる?」

「いや。蓮が困っているから、モニターを返したほうがいいと思う」

「御手洗さん、マジでありがとうございます」


 晴翔とひなは岳に促され、不満げにコントローラーを離す。蓮はゲーム機からモニターを外し、パソコンに繋ぎ直す。

 ようやく作業がしやすくなったと思ったが、幽霊たちの騒がしさは変わらない。晴翔は蓮に断りなく、棚からトランプを引っ張り出す。


「じゃあトランプやろー! 大貧民!」

「関東って大貧民派が多いの? あたし大富豪派」

「オレは大貧民だったなぁ。蓮、トランプ借りていい?」

「俺の邪魔しなければ好きにしていい」


 沙斗琉は晴翔の手からトランプを受け取る。しかしそのトランプを切ることも配ることもなく、沙斗琉は不敵に笑い蓮を見る。


「そんなに仕事に打ち込むの珍しいね。いつも「大してやることない」とか言ってるのに」


 蓮はキーボードを打つ手をぴたりと止める。ちょうどそのとき、葵から個別のチャットでメッセージが届く。


『仕事抱えすぎじゃね? なんかあった? 手空いてるから、振れる仕事は振ってくれよ~』


(……どいつもこいつも)


 蓮は目を覆い、大きなため息をつく。余計なことを考えないように現実逃避をしていたが、どうやら周りはそれを許してくれないらしい。


「……閻魔が捕まる理由に、俺は心当たりがある。ただ、閻魔の動機はわからない」


 蓮がつぶやくように言うと、ひなが「あ……」と小さく声を上げる。


「蓮と同じ理由かわからないけど、あたしも心当たりはあって……。ただ、あたしがその事件に詳しくないし、あたしも交換条件で処罰を軽くしてもらったところはあるから、言っていいかわからなくて……」


 蓮はひなの言葉に納得する。結果的に麗奈に危害を加えていないから“生者に怪我を負わせた”ことにならないのかとも思ったが、やはり違うようだ。


(認めるしかないか……)


 蓮は閻魔の心当たりを、「信じたくない」と思っていることを自覚している。それを表に出さないように、なるべく考えないようにと、無意味に仕事を増やしていた。

 しかしどうやら、蓮の願いは打ち砕かれたらしい。蓮はゆっくり目を閉じ、ふーっと息を吐く。

 蓮はモニターの画面を消し、椅子を回して五人の幽霊に向き直る。


「晴翔は特に落ち着いて聞いてほしいんだが……閻魔が関わってるのは、霊魂管理局が『天道事件』と呼称してる事件だ」

「えっ……」


 晴翔から思わずといった様子で声が(こぼ)れる。守も驚いたように瞬きをしているが、沙斗琉の顔色は変わらない。

 蓮は落ち着くようにと、自分に言い聞かせながら口を開く。


「夕樹に天道の門を開く力を与えたのは、当代閻魔だ」

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