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霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
3章 - 星を落とした悪魔

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第85話 殴り壊したい笑顔

 時は(さかのぼ)り、蓮たちがジェットコースターに乗っているころ。ひなは冥界から門を開き、東京ドームシティに足を踏み入れた。時間は昼に近く、蓮たちが入場したときよりも多くの客で賑わっている。


(コラボってこんな感じなんだ。衣装かわいー)


 ひなはパネルを眺めながら、園内をのんびりと歩く。ひながいたころは選抜メンバーに入っていなかった顔もあり、ひなはぼんやりと時の流れを感じる。

 ひなはもっとうらやましい気持ちになると想像していたが、それよりは感慨深さが勝っている。ひなが入ったころのI'm a ☆は今ほど大きいグループではなく、大きな施設とのコラボはみんなの夢でもあった。


 道行く人々を見ると、その多くがI'm a ☆のグッズをつけている。人数が多いグループだけあり、誰か一人にファンが偏っている様子はない。

 グループが愛されていることに喜びを感じ、ひなは徐々に笑顔になる。特に後輩たちの頑張りが実感できるのは嬉しいことだった。


 しかしふと目に入ったパネルに、ひなの笑顔が一瞬にして消える。一際(ひときわ)目立つところに飾られた姿は、今際(いまわ)の際に見たものと何も変わっていない。

 通りかかった男性二人組が、ひなの後ろで「あっ!」と声を上げる。


「れいにゃいた! かわいー!」

「すげー目立つとこにいんじゃん。さすがだわ」

「やっぱれいにゃが一番可愛いわ」

「でもれいにゃの可愛さってさー、作ってる感すごくね? 性格悪いし」

「いいんだよ、いつでも可愛くいてくれるんだから。付き合うわけでもねーし」

「それもそうか」


 カシャカシャとシャッターを鳴らし、二人は笑いながら去っていく。その間も、動かない麗奈はにこにこと笑い続けている。


 麗奈が笑顔を“作っている”ことを、ひなはよく知っている。楽屋に入ると仏頂面(ぶっちょうづら)で、後輩に理不尽な命令をしているのが日常だった。

 その人間性は好きになれなかったが、作り笑顔に関しては、ひなは全く気にならなかった。いつでも同じ笑顔を作れることは、むしろ麗奈の武器だとひなは認識している。

 これだけ大勢の集団では、必ずプロがメイクをしてくれるわけではない。そろった前髪も、緩く巻いた髪も、目を大きく見せるメイクも、麗奈が金と時間と労力をかけた結果だ。ひなはその努力を尊敬し、参考にすらしていた。それでも、ノーメイクのひなの方が目は大きいのだが。


 しかしその笑顔は、あの日から最も嫌いなものへと変わった。蓮と葵に会わなければ、ひなはパネルを殴り壊していただろう。

 ひなは今でも、最期に見た麗奈の笑みを鮮明に覚えている。

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