表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
3章 - 星を落とした悪魔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/108

第80話 捕まってない殺人犯

 葵の言葉に、蓮はつい驚きの表情を浮かべてしまう。ひなの死は事故ということになっているが、それが事実ではないことを、蓮はひな本人から聞いている。

 ひなが言うには、当時の人気投票で三位だったメンバーに突き落とされたらしい。葵の言う「最後の投票」がひなの生前ならば、麗奈がひなを殺した犯人で間違いないのだ。

 世間的には事故死とされているのだから、驚いてはいけなかったと蓮は思う。しかしその驚きの理由を、葵は勘違いしたようだ。


「まあ事故死って発表されてんのに、殺人とか言われたら驚くよな」

「ああ……」


 葵の勘違いに、蓮は内心ほっとする。葵は蓮の動揺に気づくことなく、うなずきながら話を続ける。


「根も葉もない噂だと思うけど、そんな噂が出るくらいにはひどいんだよ。ライブとかイベントでれいにゃと距離あるなーって人、みんな辞めてくし。ひなちゃんも相当目つけられてたんだけど、ひなちゃんってイジメに屈するタイプじゃないじゃん?」

「そうだな」


 ひなが非常に芯の強い人間だということは、蓮もよく知っている。一度決めたら曲げず、他人の意見に左右されない。それは頑固ともいえるが、ひなが国民的アイドルにまで上りつめた理由の一つなのかもしれない。

 葵は冷静な顔で豚汁をすすり、飲み込んでから口を開く。


「だから、どんだけイジメても辞めないから殺したって噂になったんだよ。まあ、警察がちゃんと調べてるだろうし、ひなちゃんファンのやっかみだとは思うんだけどなー」


 葵は平然としているが、事実を知っている蓮としては落ち着かない話だ。その噂も、真相を知っている人物が流したのではないかと勘ぐってしまう。

 しかし蓮はふと思う。本当に警察がきちんと調べているのなら、他殺とわからないものなのだろうか。


(黒木は「取り巻きもいた」っつってたし、証拠の一つくらい出そうなのにな……。もみ消されたとか? 考えたところで、警察じゃないんだからわかるわけないんだが)


 蓮は牛丼を咀嚼(そしゃく)しながら、眉間のしわを深くする。そもそも人気のために人を殺すこと自体が、わかりそうもない話だった。


(つか、今後あの田場 麗奈って人見たら、毎回『捕まってない殺人犯』だと思うんだろうな……)


 蓮は小さくため息をつき、牛丼をかき込む。うっかり口に出してしまわないように生活するのは、なかなか面倒くさそうだ。

 しかしもう卒業するのなら、あまり話題にはならないかもしれない。そう思ったとき、ふと蓮の中に疑問が浮かぶ。


「その人、なんで卒業するんだ?」


 人を殺してまで得たナンバーワンアイドルの座を、どうして手放すのか。麗奈が気になるというよりは、単純な疑問として蓮の中に湧き起こる。

 葵は豚汁を飲み干し、空になった容器を丁寧にテーブルに置く。


「憶測は色々あるけど、本人は『タレントとしてもっと色んな活動をしたい』みたいなこと言ってた。でも、実際のところはわかんねーや。熱愛報道が出たから辞めさせられたって言う人もいるし、単純に年齢じゃないかとも言われてる」

「いくつだ?」

「二十六」

「辞めるような歳か?」

「アイドルなら年長組に入る」

「へー……」


 アイドルの世界の厳しさを感じながら、蓮は空になった牛丼の器に箸を置いて手を合わせる。同時に葵も手を合わせ、二人は「ごちそうさま」と声をそろえる。これ以上考えたら気になることが増えてしまいそうで、蓮は話を打ち切ることにした。

 ごみを片付けていたとき、葵は突然思い出したように「あ!」と声を上げる。


「蓮さ、今月の十六か十七って空いてる? 付き合ってほしいところがあってさ~。金はオレが払うから!」

「別にいいけど。両方空いてる」

「じゃあ十七で!」

「ん」


 蓮は机の上に放置されたスマートフォンを手に取り、スケジュールアプリを立ち上げる。このとき蓮は、麗奈の卒業で事件が起こるとは、そしてそこに自分が関わることになるとは、想像もしていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ