表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
2章 - 天に溺れる罪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/112

第73話 不器用な感謝

 冬の強い風が、蓮の体に遮られながら通り過ぎていく。日付が変わる直前の代々木公園は、虫の声もなくしんと静まり返っている。

 蓮はベンチに座り、パーカーの上に着たブルゾンのポケットに手を入れる。スマートフォンを見ると気温は一桁で、蓮は手袋を持ってこなかったことを後悔する。

 蓮の隣に腰かける守は、そわそわした様子で体をゆすっていた。


「ゆ、夕樹さん、ちゃんとスカイツリーに来ましたかね……」

「こっちに来ないってことは、たぶんそうだろ。優等生が待ち合わせ場所を間違えるとも思わないしな」

「そもそも来ていないということは……」

「それはあり得る。まあ、そんときは帰って別の作戦考えるだけだから」

「それもそうですね……!」


 蓮たちは、万が一夕樹が待ち合わせ場所を間違えたときの保険だ。メモの内容を確認せず、以前と同じ場所だと勘違いする可能性を考慮した。しかし、どうやら杞憂(きゆう)に終わったようだ。

 一応日付が変わるまでは待つことにして、蓮はベンチの背もたれに体をあずける。守は異国の神の像を見ていたが、ふと思いついたように蓮に目を向ける。


「そういえば、どうしてスカイツリーなんですか? 前と同じ集合場所のほうが、間違える心配も少なかったと思うんですけど……」

「決めたのは沙斗琉と晴翔だから、詳しい理由は知らないが……」


 蓮は遠い空を見上げる。吐いた息が一瞬視界を白く染め上げ、風に流されて消えていく。


「思い入れみたいなことだと思う。沙斗琉はスカイツリーから夕樹を見てるし、晴翔は……死んだ場所が見えるのかもな」

「なるほど……」

「それに、異国の神の前ってのもな」

「確かに、ばち当たりですね!」


 蓮はこくりと一つうなずく。沙斗琉が夕樹を殴ると宣言していたし、平和の神でもある像の前ですることではないだろう。

 会話が途切れ、風の音だけが耳を刺す。守が話題を探す気配を感じながら、蓮は小さく目を伏せる。


「悪いな。中途半端に巻き込んで」

「え?」


 守がきょとんとした顔で蓮を見る。蓮は守に目を向けず、視線を足元に注いでいる。


「守が夕樹に関わる理由はなかったろ。ただ教育係の俺たちが夕樹を追って、それに巻き込んだだけだ」

「いえいえ! 僕こそ、まったくお役に立てずすみません!」


 守が何度も頭を下げる。その想定外の行動に蓮は一瞬ぎょっとして、守に顔を上げるよう促す。

 動きを止めた守は、少し照れくさそうに(ほほ)を掻く。


「お役には立てませんでしたが……頼ってもらえて嬉しかったです」


 蓮が再び驚きに目を開く。蓮は「迷惑をかけた」と思っていて、「嬉しい」と言われるなど微塵(みじん)も思っていなかった。

 蓮の表情に、今度は守が驚き慌てふためく。


「す、すみません! なにか変なこと言いましたか!?」

「ああ、いや、全然」

「そ、そうですか」


 守がほっと胸をなでおろす。蓮がスマートフォンを見ると、時刻は零時を過ぎていた。


「日付変わったな。帰るか」

「沙斗琉さんたちの応援は行かなくていいんですか? お二人に門を開ける力はありませんし……」

「夕樹が開けられるから、大丈夫だろ」


 守は一瞬きょとんとした顔をする。しかしすぐに理解したようで、ふわりと優しく微笑んだ。


「そうですね。帰りましょう!」


 蓮は立ち上がり、守に目を向け小さく微笑む。


「守。……ありがとな。付き合ってくれて」

「……! はい!」


 守も元気よく立ち上がり、蓮の後に続く。風は落ち着き、蓮は先ほどまではなかった暖かさを感じていた。


「あ! 蓮さん終電大丈夫ですか!?」

「扉で帰れる」

「あ、そうでした……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ