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霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
2章 - 天に溺れる罪

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第71話 米粒以下の捜索

「うーん……。見当たらないなぁ……」


 再びスカイツリーを訪れた蓮たちは、展望台から夕樹を探していた。蓮と晴翔は地上三百五十メートルの展望デッキ、沙斗琉と守は四百五十メートルの回廊から地上を見下ろしている。

 夕樹と出会ったことのない守は特徴だけ聞き、地上を動く白い影がないかと目を凝らす。望遠鏡を使えたらいいのだが、はたから見ると望遠鏡がひとりでに動いて見えてしまうので使わないことにしている。


「そっちはどう? 守くん」


 地上を(にら)む守の元に、反対の方角を探していた沙斗琉が近づいてくる。守は沙斗琉に視線を移し、ふるふると首を横に振る。


「全然見つかりませんね……。あ、白い! と思っても、大きいワンちゃんだったりします」

「それはそれで和むけどね。ここは高すぎて、逆に地上を探すには向かないなぁ。景色はいいんだけど」

「富士山がよく見えますね!」

「今日は天気いいからね~」


 遠くに目を向けると、青い空の下に荘厳(そうごん)な山がそびえているのが見える。白く化粧をした雄大な姿を目にするのは決して初めてではないが、守は何度見ても()も言われぬ感動を覚える。


「霊魂管理局本部って、富士山の真下にあるらしいよ」

「えっ、そうなんですか!?」

「うん。緯度と経度が一緒だって、蓮が言ってた」


 沙斗琉の言葉に、守は思わず富士山を二度見する。守の認識では、富士山の下にあるのはマントルだ。それもおぼろげな記憶ではあるが、しかし山の下に巨大な和風建築があるとはとても信じられない。


(真下ってどういうことなんだろう……。穴を掘ったとか? でも普通に空あったよね? 物理的な真下じゃなくて、異世界的な? う~ん……不思議だなぁ)


 守は半ば理解を放棄し、わかったような顔だけして富士山を眺める。

 沙斗琉は携帯電話を取り出し、畳んだまま外側の画面をつける。時間を確認すると、入場から一時間が経とうとしていた。


「そろそろ蓮たちと合流しようか。向こうで進捗があるかもしれないし」

「はい!」


 沙斗琉と守はエレベーターに乗り、蓮たちのいる地上三百五十メートルの展望デッキに下りてくる。エレベーターを出てすぐ、地面を見下ろす晴翔と望遠鏡を覗く蓮の姿が目に入った。


「おつ~。そっちはどう?」


 沙斗琉が軽い調子で近づくと、晴翔は苛立ちを抑えたような顔で勢いよく振り向く。


「ぜーんぜん見つかんないんだけど! ていうか、人小さすぎて米粒以下じゃん!! 人だってこともわかんなくない!?」

「望遠鏡使えばまあまあ見えるが……。奇跡でも起こらない限り、ここから一人を探すのは無理だな」


 蓮が望遠鏡から離れ、スマートフォンの画面をつける。


「一時間か……。晴翔の集中力も限界だし、別の方法考えるか」


 蓮たちは人の少ない端の方に移動し、念のため景色に目を向けながら話す。


「前に沙斗琉がお兄ちゃんを見つけたのはどのあたり?」


「そんなに正確には覚えてないけど、そっちから隅田川の方に歩いてたかな」

「あー……」


 晴翔の表情が陰る。沙斗琉はその顔の意味を察しつつ、触れることなく話を続ける。


「ただ、局の調べでは夕樹の出現場所に規則性はなさそう。今のところ東京が多いってだけ」

「えっと、あまり理解してなくて申し訳ないんですけど……」


 守が恐る恐る手を上げる。


「天道の門の出口側? で待つことはできないんですか? 僕らの門と同じような感じなら、出口はいつも同じだと思ったんですが……」

「いい案ではあるけどね」


 そう言いつつ、沙斗琉は固い表情で腕を組む。


「今のところできないかな。そっちは霊魂管理局が調べてるんだけど、出口が特定できてないみたい」

「そうですか……。次に狙われる方を特定する、とかも難しいですよね」

「そうだね。夕樹は鎖を切る能力がないから、狙われるのは浮遊霊か、死亡直後の幽霊なんだけど、その中で誰が狙われるかはわからないかな」

「狙ってるんじゃなくて、たまたま見つけた幽霊を送ってるかもしれないね。たぶん、お兄ちゃんは人助けのつもりでやってるから」


 いい案が浮かばず、幽霊三人は「うーん」と(うな)る。景色を眺めていた蓮は、ふとあることを思い出す。


「……普通に呼び出せるんじゃないか?」


 三人が一斉に蓮を見る。蓮が目を向けたのは、おそらく代々木と思われる方向だった。

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