表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
2章 - 天に溺れる罪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/60

第48話 好きって言えるお母さんがよかった

 口元を手で覆いながら、蓮は大きなあくびをする。出不精(でぶしょう)の蓮には、スーパーの食品棚の明かりすら少し(まぶ)しい。


「でっかいあくび。寝不足?」

「誰のせいだと思ってる」

「ぼくのわがままに付き合った蓮のせい」

「それはそう」


 蓮は晴翔を見ずに言葉を返しながら、新鮮な肉が並ぶ棚から味付け肉のパックを手に取る。ときどき周囲から怪訝(けげん)そうな視線を感じるが、蓮の片耳のイヤホンに気づくと、皆何事もなかったかのように元の買い物に戻っていく。

 そんな人々の様子を、晴翔は興味深そうに観察していた。


「蓮のイヤホンって、電話してるアピールだったんだね。ぼくと話す気ないのかと思った」

「ずっと独り言喋ってるやべーやつになるからな」

「確かに~」


 蓮は左手に持つ(かご)の中に、味付け肉のパックをそっと入れる。籠の中にはインスタントコーヒーやカップラーメン、レトルトカレーなど、いかにも料理をする気がない商品が入っている。


「蓮って料理しないの?」

「今はしないな。面倒くさい」

「できないの?」

「できる。実家にいたときは毎日作ってた」

「へぇ~。まあ、自分一人のごはんって用意するのめんどくさいよね」

「そうだろ。よし、レジ行くか」

「は~い」


 蓮は律儀(りちぎ)に「移動するときは一声かけて」という晴翔の要求を守っている。それは晴翔に粗探しをされないためでなく、蓮を信じている変成王のためだ。

 本気で監視をするのなら、牢にでも閉じ込めておけばいい。そうしないのは蓮が生者だからではなく、変成王の優しさだと蓮は思っている。一見堅そうに見える上司は、冥界の裁判官の中で二番目に甘い。


 セルフレジで会計を済ませた蓮は、晴翔に声をかけスーパーを出る。出かけたときは赤かった空は、既に伸びる影もないほど暗い。人目は気にしていないつもりだったが、外の暗さと風の冷たさに、蓮は少し開放感を得られた気がした。


「蓮って、なんで自分で料理してたの? 親は?」


 家までの道すがら、晴翔が突然尋ねる。蓮は晴翔に目を向けず、前を向いたまま淡々と答える。


「仕事で忙しそうだったから」

「両親とも?」

「父親とは生活してない」

「あ、閻魔様の子なんだっけ?」

「そう」


 蓮が閻魔の子であることは、霊魂管理局では有名な話だ。知らない者の方が少ないだろう。

 晴翔は「ふ~ん」と、大して興味がなさそうに言う。


「蓮はお母さんのこと好き?」


 レジ袋を持つ蓮の手に、無意識に力が入る。蓮は真白のことに整理をつけたつもりだったが、思い出すと少しだけ、心の穴を風が通り抜ける感覚がある。


「……好きだったと思う。(めし)作ってやろうと思う程度には」

「そっか。いいな~」


 蓮はちらりと晴翔に目を向ける。晴翔の少し長めの前髪に阻まれ、蓮の位置からは晴翔の表情が(うかが)えない。

 だが晴翔の声は、ツンとふてくされているように聞こえた。


「ぼくも好きって言えるお母さんがよかった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ