表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
2章 - 天に溺れる罪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/60

第45話 ダッフルコートの見張り番

 少しして変成王が連れてきたのは、小学生くらいの少年の幽霊だった。黒いダッフルコートを着た少年は唇をツンと(とが)らせ、つまらなそうな顔をしている。

 少年はくりくりとした大きな瞳を蓮たちに向ける。少年の目が沙斗琉を捉えた途端、先ほどまでの表情が嘘のように明るくなり、少年は両手を広げて沙斗琉に駆け寄った。


「沙斗琉ー!」

「晴翔くん!」


 沙斗琉も同じように腕を広げ、椅子に座ったまま少年を抱きとめる。


「久しぶり~。元気だった?」

「元気に決まってるじゃん! ぼく幽霊だよ?」

「それって元気なの?」

「病気しないんだから元気!」

「それもそっか〜」


 仲のよさそうな二人の様子を、守は置いていかれた様子で眺める。蓮は机に頬杖(ほおづえ)をつき、背中を向けた沙斗琉に声をかける。


「知り合いか?」

「うん。元相棒の弟さん」

「ああ、俺の前の」


 少年は蓮の言葉に反応したように、沙斗琉の腕に収まったまま蓮を(にら)む。蓮は反応を示さないが、守は(おび)えるようにびくりとした。


「ふぅん……。おまえがお兄ちゃんの後任かぁ」

「どうも」


 部屋の中をぴりりとした空気が流れる。そのとき、いつの間にか少年の背後にいた変成王が、少年のコートのフードを(つか)んだ。


「いつまでじゃれてるんだ。まずはあいさつだろう」

「はぁい。わかってるよぉ~」


 変成王は少年を引きずり、ホワイトボードの前に移動する。少年をまっすぐ立たせ、変成王は(そろ)えた手を少年に向ける。


「今日から郷間の監視につく、天野(あまの) 晴翔(はると)だ。今は事務仕事をしているが、元は東京23区外の回収を担当していた。見た目は幼いが、回収課に所属して7年経っている。子供と思って気を遣わなくていい」

「少しは気ぃ遣ってくれても……」

「遠慮は無用だ」


 変成王の有無を言わさない固い声に、晴翔はふてくされるように口を尖らせる。


「ちぇっ。真面目なんだから……。まあいいや。よろしくお願いしま〜す」


 晴翔はペンギンのように腕を広げ、子供らしく愛らしい仕草で一礼する。蓮は軽く会釈(えしゃく)し、守は立ち上がって二度ほど頭を下げた。

 変成王は晴翔に目を向け、蓮と守に順番に手を向ける。


「彼が監視対象の郷間 蓮だ。あちらは郷間の代わりに回収に入る野呂 守。野呂とはあまり関わらないかもしれないが、一応覚えておいてくれ」

「はーい」


 変成王はホワイトボードに描いた図を消し、ボードを元の位置に移動させる。


「では、不便をかけるが、皆よろしく頼む。晴翔、形だけのものとはいえ、監視を(おこた)るなよ」

「はぁ~い」

「郷間、夜中に呼び出して悪かったな。帰ってよく寝るといい」

「はい。ありがとうございます」


 変成王は机の上の書類を手に取り、下をとんとんと揃えて脇に抱える。そのまま出入り口に向かう様子を見て、蓮たちも椅子から立ち上がった。


「じゃあ守くん。今日からしばらくよろしくね」

「は、はい! がんばります!」

「そんなに気負わなくても。オレもサポートするから」


 話しながら、沙斗琉と守は会議室を出る。蓮も後に続こうとすると、後ろからパーカーの(すそ)を引っ張られた。


「移動するときは一声かけてよね。勝手に動いたら「怪しいことしてた」って上に報告するから」


 そう言った晴翔の目はいかにも不満そうで、蓮に対し攻撃的なことは明らかだ。しかし蓮は気にする様子もなく、いつもの調子で「わかった」と答える。


「じゃあ、裏門から出て家帰るから」

「裏門出た後はどうやって帰るの」

「自分で扉つないで。お前も通るか?」

「お前じゃなくて晴翔って呼んで。当然ぼくも同じ道通るから」

「わかった」

「おまえのことは蓮って呼べばいい?」

「好きにしろ」


 蓮は晴翔に背を向けて歩き出す。ついてくる晴翔の視線は鋭く、少し離れて見ていた守は少し不安に駆られた。


「だ、大丈夫かな蓮さん……」

「んー、大丈夫じゃない? 晴翔くんは懐くまで時間かかるけど、悪い子じゃないよ」

「そうですか……。あの視線を向けられたら、僕なら眠れないです……」

「それこそ大丈夫でしょ。蓮は図太いから」


 沙斗琉は蓮と晴翔が向かう方向とは反対側、回収課従業員の宿舎に足を向ける。守は何度も振り返りながら、沙斗琉に駆け足でついていた。

 その夜、蓮は晴翔の監視など頭にないかのように、いつも通りぐっすりと眠った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ