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霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
1章 - 鎖の花が咲く夜に

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番外編 幽霊はカラオケで何を歌う

息抜きでしかない番外編です。

3話で蓮・沙斗琉・守が行ったカラオケのシーンになります。

 カラオケボックスのエレベーターを降り、蓮、沙斗琉、守の三人は指定された個室に入る。沙斗琉は部屋の奥へと進み、滑らかな触り心地の黒いソファにふわりと座る。

 守が立ったままどぎまぎしていると、沙斗琉は自分の隣の席をぽんぽんと叩く。


「守くんも好きなとこ座りなよ。心配しなくても、幽霊も座れるから」

「あ、はい!」

「俺コーヒー入れてくる」


 蓮が伝票をテーブルに置き、個室を出る。守はそわそわと落ち着かない様子で、沙斗琉の隣に恐る恐る腰かける。沙斗琉の言う通りすり抜けることなく座れたが、想像よりもソファは沈まなかった。


「守くん何歌う? それとも後の方がいい?」

「えっ、あ、後でお願いします……」

「おっけー。ま、どうせ蓮がいないとデンモク使えないんだけどね」

「そうなんですか?」

「うん」


 沙斗琉は立ち上がり、棚の上にあるタッチパネル式のリモコンに腕を伸ばす。画面に指で触れるが、画面が変わる様子はない。


「これ微弱な電気に反応するタイプだから、肉体のない幽霊の指には反応しないんだよね」

「なるほど……」


 ガチャリと扉が開き、蓮が湯気の立つコーヒーを片手に戻ってくる。蓮はソファにどっかりと座り、真っ黒なコーヒーを音を立てずにすする。


「ブラック? 大人だねぇ」

「中学のころからブラックだけど」

「す、すごい……! 僕コーヒー飲めないです……」

「ただの味覚の問題だろ。すごくはない」


 蓮はコーヒーをテーブルに置き、立ち上がってリモコンを持ち上げる。再びソファに腰を下ろし、リモコンの画面に触れる。画面は蓮の指に合わせて切り替わった。


「誰から?」

「オレか蓮」

「じゃあ沙斗琉いけ」

「何にしようかなー。守くん、好きなジャンルとかある?」

「えっ!? あっ、えっと……」


 守は正直に答えるか迷う。守はいわゆるアニメオタクであり、沙斗琉のような派手な外見の人間には、若干の苦手意識がある。「アニメが好き」と言ったら、笑われるか気持ち悪がられるのではないかという先入観があった。


(どうしよう……。でも、嘘ついてもどうせバレるよね……)


 守はアニメソング以外に、知っている曲はほとんどない。自分が歌う番になったら、結局アニメソングを入れるしかなくなる。守は震える手をぎゅっと握りしめた。


「あ、アニメが、好き、です……」

「アニメね。おっけ~」


 沙斗琉は馬鹿にする様子もなく、蓮が持つリモコンに目を向ける。


「オレが知ってるアニメだと古いかな? 蓮、なにがいいと思う?」

「そもそも、お前が知ってるアニメってなんだ」

「BLE〇CHとかハ〇ヒとか」

「ハ〇晴レユカイ?」

「蓮が踊ってくれるならいいけど」

「踊れねーよ」

「そうなの? じゃあ、ア〇タリスクとかにしとこうかな」

「んー」


 蓮が食事のメニュー表を片手に、リモコンの画面に指を置く。沙斗琉はマイクを持ち電源を入れるが、「あー」と発した声がスピーカーから聞こえることはない。

 やがてモニターが切り替わり、守も知っている長寿アニメの主題歌が流れ始める。歌い始めた沙斗琉の上手さに驚きながら、守はようやくカラオケに来た実感が湧き始めた。


「次、守歌うか?」

「え!?」


 蓮に声をかけられ、守の鼓動が跳ねる。カラオケに行きたいと言ったのは守だが、守はまだ、心の準備ができていなかった。


(どうしよう……。最後がいいような、でも蓮さんも歌が上手かったらもっと歌いにくくなるような……)


 守の心境を察したのか、蓮はリモコンの画面を食事の注文に切り替えた。


「もう少し考えてもいいし、好きにしていいぞ。その間、沙斗琉にハ〇晴レユカイ踊らせてもいいし」

「蓮さん、ハ〇ヒ好きなんですか……?」

「アニメは見た。リアルタイムじゃないけど」

「僕も、父が好きだったので一緒にDVD見てました!」


 蓮と共通の話題が見つかり、守は少し安心する。守は覚悟を決め、膝の上で拳を握った。


「じゃ、じゃあ、僕歌います。ハ〇晴レユカイ……!」

「わかった」


 緊張の面持(おもも)ちの守に対し、蓮はうっすらと微笑を向ける。


「おっ。いいねぇ。じゃあ、お兄さん踊っちゃおうかな」


 ちょうど間奏中だったようで、沙斗琉が守に向かってウインクを向ける。小指と人差し指を立てたポーズは、守が噂しか知らない別のアニメを彷彿(ほうふつ)とさせた。


「それはマク〇スだろ」

「キラッ」

「守に通じないネタやめろ」

「えっ、もしかしてまだ生まれてない!?」

「だ、大丈夫です! 通じてます!」


 確かに沙斗琉が話題にするアニメは、守にとっては古い。既に話題に上がった中にも、守が生まれる前に第一話が放送された作品はある。しかし、既に守が想像していたカラオケよりもずっと楽しかった。

 一曲目が終わり、守は沙斗琉からマイクを持つコツを教わる。守は高鳴る鼓動を感じながらマイクを握りしめ、賑やかなイントロが流れてくるのを待った。

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