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霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
1章 - 鎖の花が咲く夜に

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第24話 らしくなかったかな

「蓮って、人の死因とか気になる?」

「全然」

「でしょうね」


 ゲームを返しに来た葵は、新しいゲームを借りてすぐに帰った。「ファンとアイドルの接触は、やっぱり良くない」らしい。そもそも蓮が忘れていたせいであり、平謝りするしかなかったのだが、葵はいつも通り笑っていた。


 その後も、蓮とひなは情報収集を続けた。朝九時から午後七時まで続けて、素性がわかった人数は一人。ひなが「握手会にいたかも」とファンクラブ会員を(あさ)り、見つかった。正直一人も見つからないと思っていた蓮には朗報だ。

 疲れから口数もやる気も減ってくる。それでも話していた方が続けられるからと、ひなは度々話題を振ってきた。


「沙斗琉の死因も知らないの?」

「それは知ってる。バディ組む前に資料で読んだ」

「本人からは聞いてないのね」

「わざわざ聞くことでもないだろ。愉快な話じゃねーし」

「たしかにね。……本人から言う分には聞いてくれる?」


 元気のないひなの声に、蓮は椅子ごと振り向く。ひなはマウスをスクロールする手を止め、机に突っ伏していた。


「疲れたなら休め」

「疲れないよ。体ないもん」

「精神的な話だ」

「あんたも休むなら休んであげる」


 蓮は小さくため息をつき、パソコンをシャットダウンする。蓮も疲れている上に、今日も地縛霊の回収に行かなければいけない。どちらにしろ、そろそろ止め時だ。

 ひなは机に顔をつけたまま話す。


「葵くんが、あたしの死因を事故死って言ったの聞いてた?」

「ああ」

「そう報道されたのはあたしも知ってる。階段から足踏み外して転落したって。でも本当は違うの」

「他殺か?」

「うん」


 ひなは顔を上げ、両ひざを抱えるようにして座り直す。いつも強気な瞳は、弱々しく伏せられていた。


「メンバーに突き落とされたの。人気投票三位だった子。その子の取り巻きもいた。一位だった子が卒業して、次の人気投票はあたしが一位だろうって噂されてた。あたしもそう思ってた。一位になったらセンターになれる。あたしもようやくステージの真ん中に立てるんだと思ってた」

「……怨恨(えんこん)か」

「うん。死んだあと霊体で稽古場(けいこば)に行って聞いたの。二位のあたしが死ねば、自分が一位になるからって、あの子は取り巻きと話してた。本当に一位になったのかは知らないけど」


 ひなは抱え込んだ膝の中に顔を埋める。


「怖いよね。自分の成功のために、人を殺せちゃうんだもん。しかも、それが裁かれてない」

「死んだら裁かれる」

「そうだね。でも生きてるうちはのうのうとしてるなんて、やっぱり納得できないよ。あたしまだ、やりたいこといっぱいあったのに」


 ひなは埋めた膝から小さく顔を上げ、テーブルの上のスマートフォンを眺める。


「この事件の犯人も、自分のためなら他人の魂がどうなってもいいのかな」

「……さあな」


 蓮は椅子から立ち上がり、ひなが見ているスマートフォンを持ち上げる。映された画面を確認し、画面を落とした。


「そろそろ回収だろ。行くぞ」

「立てない。手、引っ張って」

「無茶言うな」


 伸ばされたひなの手を無視し、蓮はズボンのポケットにスマートフォンを入れる。棚に掛けた鍵を手に取り、のしのしと玄関に向かう。ひなは少し気怠(けだる)そうに立ち上がり、蓮の後に続いた。


「蓮」

「ん?」

「聞いてくれてありがと。あたし多分、ずっと誰かに話したかったんだと思う」

「そうか」


 蓮が靴を履き、玄関の鍵を開ける。ひなは息を深く吐くと、両手を上げて伸びをした。


「らしくなかったな~。蓮にこんな話しちゃうなんて。忘れてね」

「別に。弱音吐きたいときくらいあるだろ」


 蓮がドアノブに手をかけ、そのままゆっくりとドアを開く。蓮は振り返り、呆然(ぼうぜん)と立つひなを(いぶか)しげに見た。


「なにしてんだ。置いてくぞ」

「あっ……。ごめん、待って待って!」


 ひなは慌てて蓮を追いかける。ひなは熱を冷ますように、頬を両手で覆った。

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