第12話 念押しの効かない休日
「で、現世の霊とか人間の仕業なら蓮じゃないかって疑われてね」
「あー。たしかに蓮ならできちゃいそうな気がするもんなー。え、ちょっ、なにその技!? あー! また負けた!」
会社の仕事のない休日、蓮は家を訪れた葵とゲームに勤しんでいた。二人でベッドに並んで座り、普段は難しいプログラムを映すモニターにゲームをつないでいる。
沙斗琉は「頑張ればコントローラーを持てる」らしいが、頑張らないと持てないため不参加だ。沙斗琉は床に膝を立てて座り、対戦の様子を眺めながら、先日ひなと岳が訪れたときのことを葵に話していた。
「強すぎね? 全国大会とか出ないの?」
「出ない。つか沙斗琉、あんまり部外者に仕事の話するな」
コントローラーを置いて睨む蓮に、沙斗琉はカラカラと笑った。
「だって、いつもクールな蓮がお友達と言い合いするなんてさぁ。微笑ましくて誰かに話したくなるじゃん」
「あれは友達じゃない」
沙斗琉は相手がひなであることは伏せて話した。当然ながら、組織のメンバーの情報を組織外の人間に話してはならない。そうでなかったとしても、元人気アイドルのことをむやみに話題にしないほうがいいだろう。
「まあ冗談は置いといて」
沙斗琉は立ち上がり、蓮の耳元に顔を近づける。
「葵くんには話しとかないと、逆に危ないんじゃない? よくわかんないまま首突っ込んじゃいそう」
「それは……そうだな」
幽霊と人間の見分けが苦手な葵は、あまり関わらない方がいい幽霊と関わってしまうことがある。それも純粋な親切心を発揮して。
蓮が横目で葵を見る。葵はぱちぱちと目を瞬かせながら首をかしげた。
「ん? オレの顔なんかついてる?」
「あほ面がついてる」
蓮が適当なことを言うと、葵はブーブーと文句を言う。蓮は葵を無視して沙斗琉を見た。
「集中しててあんまり聞いてなかったんだが、なにをどこまで話した?」
「えぇ……? それだけ集中するからゲーム強いのかな? 地縛霊が増えてるのが、現世の霊か人間の仕業かもって話したよ」
「そうか」
蓮は子供じみたからかい文句を言っている葵に目を向けた。
「葵」
「なに?」
葵は何事もなかったかのように返事をする。葵が本気で文句を言っていたわけではないことは、当然蓮もわかっていた。
「もし霊が縛られるところを見ても、首突っ込まずに俺に連絡してくれ」
「縛られるって、あれだろ? 足についてるさ、紐じゃなくて、あのー……」
鎖という単語が出てこなかったのか、葵が縦につないだ拳を引っ張るように上下に動かす。
「鎖な」
「そう! それ! 小さいころ引っ張って地面から抜こうとしてさ、通りかかった人全員から変な目で見られた」
葵らしいといえばらしいエピソードだが、事故に繋がりかねない恐ろしいことでもある。幽霊の中には、自分のことが見えている人間を道連れにしようとする者もいるのだ。
確かに、首を突っ込む前に話したほうがいい。蓮は少し遅れて、沙斗琉の意見に得心した。
「いいか。絶っっ対余計なことするなよ。間違っても犯人捕まえようとかするな」
蓮がもともと高い位置にある黒目を更に吊り上げ、眉間にしわを寄せて葵を睨む。葵は蓮とは対照的な笑顔で親指を立てた。
「おっけー! 任せとけって! オレ言われたことはちゃんとできるんだぜ!」
「宿題やってこなかったやつに言われてもな……」
「今は大丈夫だって! 仕事もちゃんとできてるだろ?」
「仕事はな」
真夏のひまわりのような笑顔は、危機感が伝わっているとは到底思えない。蓮はしわをほぐすように、親指と人差し指で眉間をつまんだ。




