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霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお


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第11話 床頭台の左端

 消毒液の独特の(にお)いを感じながら、長い廊下をぺたぺたと歩く。無機質な白い扉をいくつか通り過ぎ、番号が違うだけの扉をコンコンと叩く。来ないとわかっている返事は待たずに扉を引き、部屋の奥から差し込む白い光に目を細めた。

 蓮は声もかけずに部屋の中へと足を進める。大きく開いた窓から柔らかな風が流れ、(ほほ)を優しく()でてくる。抜け殻となったベッドはいつものことで、心配の気持ちは起こらない。


 蓮は床頭台(しょうとうだい)に積まれた本に目を向ける。一週間前に渡した数冊の本は、左端に寄せて読了を示していた。

 蓮は前に抱えたリュックサックから、五冊の文庫本を取り出す。それを床頭台の右側に置き、左端の本をリュックサックに詰め込んだ。

 これはいつの間にか暗黙の了解となっていたルールだ。未読や読み途中の本は床頭台の右側、読み終えた本は左側に置き、他に持ってきた物があれば真ん中に置く。こうすることで、一言も交わさなくても用事を済ませられる。最初はメモを添えていたが、次第に位置が固定され、メモがなくても伝わるようになった。


 蓮は話したくないわけではない。しかし昔から、この部屋の患者とは最低限の会話しかしない。そのうちに、話し方がわからなくなった。

 きっとそれは相手も同じだろう。同じ家にいながらほとんど顔を合わせなかった十八年間は、家族の存在を忘れるのに十分な時間だった。


(……一応、聞きたいことがあったんだけどな)


 そう思いつつ、相手がいないものは仕方がないと諦める。

 蓮はベッドを直すこともなく(きびす)を返す。扉の前で一度振り返ると、部屋の奥の白いカーテンがひらひらと揺れて見えた。その様子が、手を伸ばしてもすり抜けていくあの人のように思えた。

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