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終章
俺がノエルと過ごした時間はそれほど長いものではなかった。それでもたぶん忘れる事はないだろう。それぐらい強烈な存在感だった。
命令系で入団してくるようなヒトを、俺は今のところ、ノエル以外知らない。
「団長。少しいい?」
クロ達が街へ行くのを見送った後、地図を広げて、次の公演場所を考えていると、アルファがテントに入ってきた。
「ああ。どうした」
「オクトの事なんだけど――」
アルファはノエルが消えて以来、オクトの面倒をずっと見ている。ノエルに頼まれたのか、それとも自分の意思でなのか、俺には分からない。ただオクトに対して自分の娘のように接している事だけは確かだ。
ノエルが消えて以来、特殊な成長の所為もあり、少し孤立してしまっているオクトをアルファが拒む事は一度もなかった。オクトもアルファとクロにとても懐いている。
「――私が引き取ろうと思うの」
この時初めて俺は、俺の想像した未来からずれ始めた事を知った。