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本と旅路

二人は鍛冶屋を後にした。


外に出ると、昼を過ぎた日差しが肌を刺す。


街の喧騒が、ゆっくりと戻ってくる。


「なぁ、ミラ」


歩きながら、アルトが口を開く。


「フレイムに行くのって、どれくらいかかるんだ?」


「この街からだと……だいたい3日ってところね」


ミラは前を向いたまま答える。


「南の拠点の町よ。この街とさほど大きさも変わらないはず」


「へぇ。行ったことあるのか?」


「ないわ」


間髪入れずに返す。


「ただ、昔の任務で近くまでなら」


「そうか」


短い沈黙。


足音だけが続く中、今度はミラが口を開いた。


「……いつ出発するの?」


「早い方がいいかもな」


「なら準備が必要ね」


「だな」


ミラは少し考えてから続ける。


「今から揃えられるものは揃えて、明日の朝には出る——それでどう?」


「そうするか」


アルトは頷く。


「お互い装備と食料か」


「食料は私が買ってくるわ」


ミラがさらりと言う。


「あなたは装備をしっかり整えておきなさい」


「わかった。ありがとな」


そうして二人は別れ、それぞれの準備へと向かった。



去り際、ミラはふと足を止めた。


鞄の中に収めたばかりの本を、一度だけ確かめるように触れる。


——まだ、実感が湧かない。


選ばれた、と言われた。


だがそれが何を意味するのか、まだ自分の中で言葉になっていない。


ミラは何も言わず、人混みの中へと消えていった。


翌朝。


空はまだ暗く、星がわずかに残っていた。


「……なんか、こういうの初めてで緊張するな」


アルトが呟く。


「何言ってるの」


ミラが呆れたように返す。


「遊びに行くわけじゃないんだから」


「わかってるよ」


苦笑しながら、アルトは荷を背負い直す。


「それじゃ——行くか」


「ええ」


短く答えて、ミラが先を歩き出す。


二人の足音が、薄暗い道へと消えていった。



やがて空が白み、じわりと朝日が顔を出す。


街並みが遠ざかり、道は少しずつ細くなっていく。


日が中天にさしかかった頃、アルトが口を開いた。


「少し休まないか」


「そうね……朝からずっと歩きっぱなしだものね」


道の脇に木陰を見つけ、二人は腰を下ろす。


しばらく無言で息を整えていると、アルトがぽつりと言った。


「なぁ、ミラ」


「何、改まって」


「……本のこと、怖くないか?」


ミラは少しだけ目を細める。


「怖い?」


「制御できるか分からないだろ。俺みたいに暴走したら——」


「あなたと一緒にしないでよ」


ミラは笑いながら遮った。


「……まぁ」


少し間を置いて、続ける。


「なんで私が選ばれたのか分からないし、不安がないって言えば嘘になるけど」


視線を前に向けたまま、静かに言う。


「結局はやるしか、他にないじゃない」


「……そっか」


アルトは小さく頷く。


「でも——心配してくれてありがとう」


それきり、お互い何も言わなかった。


風が木の葉を揺らす音だけが、しばらく続く。


「行きましょ」


先に立ち上がったのは、ミラだった。


「だな」


アルトも腰を上げる。


二人は再び、南へと歩き出した。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


アルトとミラ、いよいよ旅立ちです。

ようやく物語が動き出した感じがして、書いている側としてもわくわくしています。


次回は道中でちょっとした出来事が起こる予定です。

二人の関係や、それぞれの抱えるものも少しずつ見えてくると思います。


よければ次回も読んでもらえると嬉しいです!

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