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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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76 神様に会った時の弊害なんてあったんだ


 遠くのほうから名前を呼ばれているような気がする。

 ただ、なんだか頭が重くて身体が思うように動かせない。

 すっごく疲れて眠った次の朝に、どうしても起きられないような、そんな感覚……。


「ルリ! ルリ!」

「……セル、ジュ?」

「ああっ、よかった!」

「わっ」


 あれ? 私……た、倒れてたの!?

 ギュッと強くセルジュに抱きしめられてようやく体の感覚が戻ってきた。

 耳元で「よかった」と繰り返すセルジュの声のおかげで目が覚めたよ。すごく心配をかけてしまったみたい。申し訳ない……!


「急に倒れて、そこからピクリとも動かなくなって……心臓が止まる思いだ」

「ご、ごめんなさい」

「だが、祈る姿勢を崩さなかったから、人を呼ぶのは避けた。あと少し遅ければ治療院に運んでいたかもしれない」

「それは、ギリギリでしたね……」


 神様の下にいられる時間もギリギリだったし、なんだか現実とリンクしている気もして不思議だなぁ。


 念のため、もう一度だけその場で祈ってみる。やっぱりというべきか、今度は神様には会えなかった。

 前の時もそうだったから、もしかすると一度会ったら時間を置かないともう一度会うことが出来ないとか、そういうことなのかも。


 何はともあれ、まずは報告だよね。


「神様に、お会い出来ました」

「! そうか」

「詳しいことはクランに戻ってから、トウルさんも含めてお話しますね」

「それがいいだろう。さ、手を」

「あ、ありがとうござい……あれっ」


 差し出してくれた手を取って立ち上がろうとした、んだけど。

 足に力が入らない……! あれぇ?


「立てないのか?」

「は、はい。なんでだろう。力がうまく入らなくて……」


 腰が抜けた、のかな。というか、なんだかまたすごく眠くなってきたぁ……。

 このまま横になって寝てしまいたいくらい身体が怠い。


【神様と長くお会いした時の弊害です】


 あっ、そうなの? 言われてみれば、一度死んで初めて神様に会った時を抜きにすると、今回が一番長く話したかもしれない。

 それに思い返してみると、毎回神様とお話したあとはよろけたり具合が悪そうだと言われたりしていたかも。


 もし、もっと長く話していたらどうなっていたんだろう。

 ミルメちゃんに聞い……あっ、やっぱりなし! 聞くの怖いし!


 でもさ、あの。たぶん、あれ以上の会話は危険、ってことだよね?


【命にかかわります】


 ですよね! 気を付けます!!

 まぁ、私が気にする前に神様が配慮してくれているだろうけど。


 ああ、今はそんなこと言ってる場合じゃないね。本格的に具合が悪くなってきた。

 どこが悪いとかではなく、とにかく眠くてとにかく怠い……。


「ルリ。抱えるが、構わないか?」

「うぅ、ごめんなさい。でも、あの、お願いします……」

「任せろ」


 今はセルジュに頼るしかない。重いのに申し訳ないな、なんて思っていたけど、セルジュはビックリするくらい私を軽々と持ち上げてくれた。力持ちっ!

 でも、普段から鍛えているもんね。すごい。助かる。安定性も抜群だ。


「首に腕を回せるか? それから辛いなら寄りかかってくれ。むしろそのほうが抱えやすい」

「わかりました。その、お言葉に甘えますね」


 今はとても具合が悪いので、遠慮なく首に腕を回し、セルジュに寄りかかって肩に頭を預けた。たしかに、さらに安定したかも。


 私が捕まったのを確認したセルジュは、そのままゆっくりと歩きだす。出来るだけ揺らさらないように配慮してくれているのが動きで伝わった。


「こうなる原因は……やはり神と会ったからか?」

「そう、みたいです」

「ふむ。迂闊に頼むべきではなかったな。すまない」

「いえ、私が力になりたかったんですから! うっ……」

「無理をするな。目を閉じて寄りかかれ」


 思わず顔を上げた瞬間、ぐにゃりと視界が歪んで……こんなに酷い眩暈は初めて。うぅぅ、気持ち悪い……。


 色々と話をしたいところではあるけど、これは無理だ。大人しく力を抜いて目を閉じると、セルジュの腕の力が少しだけ強くなった気がした。


 教会の外に出たことは、風と顔に当たる光の温かさでなんとなくわかった。

 にゃうん、というセレの鳴き声が聞こえてきたけど、目を開けるのすら億劫で気配だけを感じる。


「セレ、お前もルリを運びたいだろうが、今はしっかり乗る力もなさそうだ。その代わり、手が塞がっている私の代わりに邪魔者がいたら排除を頼む」

「ぐるぅ」


 鳴き声から察するに、セレは今大きくなったみたい。

 せっかく帰ったらブラッシングする予定だったのに……。


 目を閉じたまま、そこにいるであろうセレに手を伸ばして声をかける。


「セレ、ごめん……約束……」

「ぐる、にゃ」

「ふふ、ありが、とう……」


 ふわっと頬に柔らかな毛並みの感触。セレが顔を近付けて擦り寄ってくれたみたい。

 優しい鳴き声から「気にするな」と言われた気がしてお礼も言うと、さらにスリスリしてくれた。幸せ。


 セレも本当に優しいな。元気になったら絶対……今度こそ絶対にブラッシングするからね!


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