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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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61 聖女様はどう見ても日本人でした


 スィさんの言うように、大聖堂の前方、奥の方にある扉が開く。あんなところに出入り口があったんだ……。


 わぁ、と周囲から小さな歓声が響く。お祈りに来ていた人たちからも注目が集まっているみたい。

 聖女様が現れたから、だよね。本当に好かれているんだな。


 真っ白な衣装に身を包み、黒く艶やかな長い髪を下ろした美しい女性。

 一目で彼女が聖女だってわかる。だって神々しいもん。

 私の目から見るとすぐに日本人だってことがわかる。見慣れた顔つきというか。


 それにしても綺麗な人……。アジアンビューティーっていうのかな、どことなく不思議な魅力のある美人さん。

 切れ長な目元、それでいて微笑みがとても柔らかくて優しそうな印象を受けた。


 彼女はゆっくりと私たちのいる場所まで近付いてくる。

 スィさんとラスロが立ち上がったのを見て、私もすぐに立った。


「はじめまして。私は聖女マリアンヌ。貴女がルリさんね? 急にお呼びして申し訳ありません。わざわざここまでご足労いただいて……感謝申し上げますわ」


 丁寧で柔らかな声色に、思わずうっとりとしてしまう。

 こんなの見惚れちゃうし聞き惚れちゃうよ! 本当に警戒が必要なのかな?


 にこりと微笑みつつ申し訳なさそうにこちらを見てくる聖女様を見ていたら、すごく良い人なんだってことは疑いようもない。

 さっきまで緊張していたのが嘘みたいに肩の力が抜けちゃった。


「い、いえ! こちらこそ、お忙しい中お時間を作っていただいてありがとうございます。聖女様」

「まぁ、ご丁寧に。どうか気を楽にしてくださいませね? 出来れば友達のように接してくださると嬉しいわ」

「えっ、でも」

「私の周囲には頭の固い方しかいないのですもの。私だって普通の女の子のように、気軽に話せるお友達がいたらいいなと思っていますの」


 聖女様はそう言いながらちらっと恨みがましげに護衛の人たちを見た。見られた人たちは困ったようにたじろいでいる。


 そっか、それは寂しいよね。慕ってくれる人がいるのはありがたいけど、気楽に話せる友達の存在って大事だもん。


「わ、私は、聖女様さえよければ構いませんが……」


 軽率に返事をしちゃったかな?とも思ったけど、そう答えたことで聖女様が嬉しそうにパァッと表情を明るくしたのでもう全部オッケー! 美人さんの笑顔ってなんでこんなに可愛いんだろう!


 そうやって私が聖女様にデレデレした瞬間だった。


【完全に信じ切るのは危険です】


 えっ。ミルメちゃんからの、警告……?


 特に見ようとしてなかったのに、こうしてミルメちゃんが言ってくるのは警告の意味合いが強い。

 で、でも、こんなに優しくて素直で可愛い人なのに……。


【完全に信じ切るのは危険です】


 う、二度目……。でも、トウルさんも気を付けろって言っていたし、神様も今の聖女様は不安定だって言っていたっけ。


 私の存在が、毒にも薬にもなるって。


 ……薬になれたらいいけど、私の空気の読めなさは言うまでもないから自信がないよ。

 今だって見かねたらしいミルメちゃんに注意されちゃったし。

 その上でまだ私は聖女様を信じたいって思っちゃってるし。危険なわけないって。


 でも、そういう自分の判断よりミルメちゃんを信用する。これまでだってたくさん助けてもらったからね!

 ちゃんと警戒はする。でも、聖女様を信じたいっていう私の本心も大事にするっ!


「皆さま、聞きまして? ふふ、とっても嬉しいわ。私のことはぜひマリーと呼んでくださいね。さ、部屋を移動しましょう。残念なことに時間は限られていますもの」

「は、はい!」


 きゃっきゃと楽しそうな聖女様、マリーさんに促され、私たちは案内されるがまま大聖堂の奥へと向かった。


 マリーさんたちが出てきた扉から内部へはいると、神秘的な真っ白い廊下が目に入る。中庭に繋がっているらしく、渡り廊下みたいなんだけど、太くて白い柱が並んでいる光景は圧倒される。


 こうして廊下を渡り切って室内に入り、右に行ったり左に行ったりした後、ようやく応接室らしき場所にたどり着いた。


 ……私、案内がなきゃ一人で戻れそうにないかも。何回角を曲がったっけ?

 そんな間抜けなことを考えていたら、マリーさんがくるっと振り返って告げた。


「お付きの方々は席を外していただけませんか? こちらも外させますから」

「しかし聖女様っ!」

「お願い。二人きりで話がしてみたいのです。女同士、ね?」

「うっ、で、ですが……」


 ふ、二人きりか。ミルメちゃんの警告がなかったら二つ返事で了承していたところだよ。

 護衛の人たちも困惑しているし、どうしよう? あっ、マリーさんが頬を膨らませた。そんな顔も出来るんだね。


「心配でしたら、同じ部屋で見ていても構いません。が、距離を取ってくださいませ。デリケートな話になりますから、殿方には聞かれたくありませんの。わかりますでしょう?」


 ちょっと拗ねたように言うマリーさんもまた可愛らしい。

 さすがに二人きりは無理ってことだね。ちょっと安心している私もいるよ。


 ちらっと私のやや後ろからついてきたスィさんに目を向けると、にこっと微笑まれた。


「では、我々も同室にいさせていただきます。もちろん、声の届かない場所に離れていますから」

「ええ。こちらを許して貴方たちを許さないなんてことはありませんわ。配慮にも感謝いたします」


 よかった、スィさんとラスロも入室してくれるみたいで。柔軟な考えをお持ちの人でよかった。


 マリーさんは最後にくるっと私に身体を向ける。


「ルリさんは、お許しいただけて? 私と二人で話すことを」

「も、もちろんです!」

「ふふ、ありがとう。ではあちらの窓際の席へ移動いたしましょう」


 最初に見た時は神々しいと思ったけど、こういうおちゃめな姿を見ると私と同じ普通の女の子なんだな、って感じた。

 本当にこの人が、不安定になっているのかな? と疑問に思いつつ……人の内面なんてそうそうわからないもんね。


 よし、せめてマリーさんの心を傷付けてしまわないように細心の注意を払おう!


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