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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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59 とってもとっても綺麗な大聖堂


「さ、そうと決まれば早速向かいましょうか」

「えっ、今からですか?」

「ええ、指定の時間までもうすぐですしね」

「そんなに急なお話だったの!?」


 でも今すぐだなんて……! なにか準備とかっ!

 私は慌ててしまっているというのに、スィさんは相変わらずニコニコしたままだ。くっ、その落ち着きが羨ましいよぉ!


「非常識ですよねぇ、僕もそう思います。ですがまぁ、聖女というのは忙しい身なのはたしかですから。急な予定が入ってキャンセルされることもままありますし」

「そうなんですね……あの。聖女様って、どうしてそんなに忙しいんですか? どんな仕事をされているんでしょう」


 思えば私、聖女様がどんなことをするのか知らない。異世界から呼び寄せるくらいだから、とても重要なことは知ってるよ。この国を守ってるってことも。

 でも具体的にどんなことをしているのかは聞いたことがなかったと思う。


「最も重要な仕事は浄化ですね。悪い気を浄化することで、魔物の増殖や強化を防ぐことが出来るのです」


 えっ、すごい。文字通り国を守ってた!

 完全に魔物が消え去るわけではないけど、減らせるだけで十分すごい。

 被害が少しでも減らせるならと王様が聖女を呼びたくなる気持ちがちょっとわかってしまったよ。


 だとしても、身代わりに誰かが異世界に飛ばされるのは、身内としては納得の出来るものではないだろうけど……。


「大聖堂で祈れば国中の浄化が可能なのですが、稀に悪い気の吹き溜まりのようなものが発生します。そういった場合は現地に赴く必要があるのですよ」

「その場で祈るだけでは浄化しきれない、ってことですか?」

「その通りです」


 現地に、か。危険な仕事なんだな……。私だったら怯えて何も出来ないお荷物になりそうだよ。


「浄化は三日に一度、それ以外は体の調子が悪い人たちの治療のようなことも行っていますね。聖女の祈りは症状を和らげてくれますから」

「そんなことまで!? お医者さんみたいですね!」

「医者とは少し違うのですけれどね。呪いの類であれば浄化が可能ですが、あくまで症状の緩和しか出来ません。対症療法といった感じでしょうか」


 ふわぁ、ますます国になくてはならない人だよね。

 そんなにもたくさんの人を救えるだなんて、尊敬しちゃう。


「簡単に医者にかかれない人も多くいます。すぐには治療出来ない人も。そういった人たちのために、聖女はわずかな寄付金のみで患者の痛みを取り除いてあげているのです」

「本当に聖女様みたい……」

「本当の聖女ですからねぇ」


 あまりにも感動し過ぎて馬鹿みたいなことを言っちゃった。

 わ、わかってるよぅ、そんな呆れた目で見ないで、スィさん!


「じゃあ、治療するので大忙しなのかな」

「基本的にはそうですね。そこに各地へ赴く遠征が入ると、仕事も溜まっていくという形になります」

「た、大変だぁ……」


 聖女がすごいのはわかった。重要なのも、なくてはならない人なのも。


 ただ、気がかりなのは。


「聖女様の代わりはいないんですもんね。負担が大きいんじゃないかなぁ」

「つくづく、自由の少ない仕事だと思いますよ。常に護衛が張り付いていますし。その代わり、良い暮らしを国から保証されています」

「そっか、それならまだ良かった……のかな?」


 良かった、と一言では片付けられない気がする。

 自由が少ないというのは、私には辛いことだから。


 聖女はどう思っているんだろう。

 私のように生まれた時からそう教育されて育ったのなら、今の環境を受け入れているような気もするんだけど……。


 もし、不満があったら? 本当は他にやりたいことがあって、好きに行きたいと思っていたら?


 知ったところで私にはなにも出来ないけど、もし望みがあるなら可能な限り叶えてあげたいって思っちゃうな。

 あ、王族の方々もそう思っているから良い暮らしを提供しているのかな。いずれは王子様との結婚も決まっているんだっけ。


 ……それが、聖女の幸せに繋がっているならいいのだけれど。

 ううん、そんなことを考えるなんて余計なお世話だよね。ご本人の意思がわからないうちは、勝手に決めつけないようにしよう。


「首輪をつけられている、とも言いますけどね」

「……スィさん、意地悪です」

「ははは、これは失礼いたしました」


 ちょっと思ってても言わなかったのに、スィさんったら。

 でも、実のところそれが一番腑に落ちる表現だったのが、余計に私の心をモヤモヤさせた。


 ◇


「こ、ここが大聖堂……」

「ははは、声を失っていますね」

「はい……なんて綺麗な場所なの」


 クランから大通りに出て乗合馬車で三十分弱。隣町についてそこから馬車を乗り継いでさらに十五分ほどかけて到着したのは、ビックリするくらい美しい大聖堂だった。

 隣町の外れにある丘の上に建っており、その荘厳さに圧倒されちゃった。


「ここが聖女様の職場、といったところでしょうか。朝こちらにいらっしゃって夕刻日が暮れる前に王宮へ戻ると聞いたことがあります」

「そうなんですね……はぁ、本当に綺麗」

「先ほどから綺麗しか言ってませんね」

「語彙力が足りなくてすみません・・・・・」


 だって本当に綺麗なんだもん!

 白い石の壁、ステンドグラス、艶々の木で出来た階段や手すりが見事にマッチしててどれもこれも綺麗、あ。また言っちゃった。


「いえ、初めてこの大聖堂を見た時は、僕も同じようなものでしたから。気持ちはわかりますよ」

「ええ? そうは言ってもスィさんならもっと上手に言葉で表現していそうですけど」

「そんなことはありませんよ。ただ、古き良き石造りの建築にも関わらず現代的な設計や家具が上手く取り込まれていて実に革新的、それでいて神秘的な雰囲気を併せ持つ素晴らしい大聖堂だ、くらいしか」

「……基準が違いますね、私と」


 と、とにかく。こんなに素敵な場所でお仕事をする聖女にこれから会うんだ。

 きっとこの大聖堂に似合うすごく綺麗な人なんだろうなぁ……あ。また言っちゃった!


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