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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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58 意外な顔が見られました


 スィさんのペースに流されている場合じゃない。

 自分が関わることなら、誤魔化されるのは嫌だもん。

 かといって、ミルメちゃんで勝手に覗くのも嫌。それを使うのは最終手段にしたい。


 だって、ちゃんと聞けば答えてくれるのならそのほうがいいもん!


「あの、ちゃんと聞かせてください。トウルさんの様子もそうでしたし、今のお二人の様子からしても……まるで聖女様を警戒しろって言われている気がするのですが」

「おや、トウルにも気を付けろと言われたでしょう? 今さらですよ」

「一応気を付けろ、と言われただけですっ! でもぜんっぜん『一応』って感じじゃないですよね?」

「ぽやぽやしているように見えて、鋭いところもあるのですねぇ。見る目のおかげではなさそうですが」


 うぅ、やっぱりまだからかわれている……!

 たしかに私は色々と抜けているし、日本でも香苗に迷惑ばっかりかけてきた。

 それでも! 香苗がめげずに何度も注意してくれたおかげで、少しは改善してるんだから!


「私だって、ちゃんと察することくらいあります」

「ふふっ、鈍い自覚はおありなのですね」

「スィさんっ!」

「すみません。からかうのが楽しくて、つい」


 やっぱりからかうのが楽しかったんだっ! もーっ!


 私は頬を膨らませて抗議をしたけれど、スィさんがもうしませんと言ってくれたのでまぁ……。でも、またからかってくるんだろうなぁ。むむ……!


「そうですね、聖女に会うというのならきちんとお伝えしておくべきでしょう。とは言っても、僕たちだってあまり情報はないのですが」

「それでも教えてください。情報を共有してもらいたいです!」

「わかりました」


 やった! やっぱりはっきり伝えるのは大事だね!

 私が小さく拳を作って喜んでいると、スィさんはクスッと笑ってから話してくれた。


「トウルが一応気を付けろ、ということは大抵なにかあります。つまり、しっかり警戒しろってことですね」

「……それ、だけ?」

「ええ。ここからは僕の推測ですが」


 ああ、よかった。それだけで終わるかと思った。さすがに納得なんて出来ないからね。


 スィさんは顎に手を当てて思案顔で話を続ける。


「聖女は、ただ優しいだけの女性ではないでしょう。やはり、元々は自分がいるはずだった異世界から戻ってきたルリさんという存在に思うところがあるのだと思います。……そこには、良くない感情も」

「えっ、でも……」

「聖女は優しい人格者、ですか? ええ、たしかに世間一般的な彼女の評判はそうです。けれど噂ですよ? ルリさんは聖女をまだ見たこともないのに、その判断を下すのです?」

「いえ、そんなことはありませんが……そう噂されているということは、まったく根拠がないということではないと思います」

「まぁ、そうですね。一応わかってはいるのですねぇ」


 なんだか馬鹿にされている気がする……!

 私だって鵜呑みにはしないよっ! でも、出来ることなら良い噂のほうを信じたいんだもん。

 そういうところが甘いんだよ、瑠璃は! っていう香苗の声が聞こえる気がするけどっ!


「良いですか、ルリさん。清廉潔白な人間などこの世に存在しません。むしろ僕なんかはそう言われている人がいた場合、より警戒します」

「最初から疑ってかかる、ということですか……?」

「ええ、それが僕の仕事でもありますから」


 な、なんだか警察みたいだね……。仕方のないことなのだろうけど、信じたいと思ってしまう私とは正反対だ。

 でも、スィさんの考え方が間違っているとは思ってないよ。そういう姿勢の人も必要だってちゃんとわかってる。


 本当に、ただ私が甘いだけなんだ。

 よく考えたら、疑うことを他人に任せるなんて、私が一番卑怯者なのかもしれないな……。


「聖女だって人間なのですよ。貴女がこれまで暮らしてきた世界で生きていたはずの、普通の人間です」


 普通の、人間。そうだ、そうだよね。

 優しいだけじゃいられない。私だって人並みに怒ったり嫉妬したりする。誰だって同じなんだ。


 私は聖女様に疎まれているかもしれない。嫌われているかもしれない。

 それでも、優しいところも間違いなくあるんだって思いたい。


 それを、確かめたい!


「……私、聖女様に会います」

「ほぅ」

「直接会って、見て、話して……彼女という人がどんな人なのかを確かめたいです!」

「では、僕も同行しましょう」

「え」

「ラスロもついてきてください。僕だけでは何かあった時に守り切れませんからね」

「当然、ついていくつもりだ」

「えっ、えっ?」


 悩んだ結果、思い切って言い出したのに、なんだかとんとん拍子で話が進んでいく……!

 こんなにあっさり決めていいのかな? 私、自分でもちょっとワガママを言っちゃったかなって思っているんだけど。

 私が行くということは、誰かがついてきてくれるってことだもん。


「あの、いいんですか? ご迷惑では……」


 今さらだけど聞いてしまう。断られたって行きたいのは変わらないんだけどさ、ほら、別日にするとか、今は見送るとか、あると思ってたから。


「ルリの身の安全が第一だからな。当たり前だ」

「ラスロ……ありがとう」

「心配は無用ですよ、ルリさん。すでに返事はしてありましたから」

「えっ!? わ、私が決める前に?」


 驚いてスィさんに聞き返すと、スィさんはにっこりと笑みを深めて告げた。


「ルリさんがそう答えるだろうって、わかっていましたからね」


 ど、どこまでお見通しなのこの人っ!? こ、怖いっ!!


「それに聖女だなんて、こんな機会でもないと会えませんからね! どんな人でしょうねぇ、興味があります」

「……スィ、会ったことがあるだろう」

「おや、以前会った時と同じとは限りませんよ? 人は変わっていくもの。現在の彼女を見たいじゃないですか」


 ラスロがじとっとした目をスィさんに向けている。

 たしかに無理やりだなぁ、とは私も思うけど……きっとそれだけじゃない気がする。


「スィさんは優しいですね。おかげで少し緊張が解れました」


 私がそう伝えると、スィさんは珍しく軽く目を見開くと、少し気まずそうに目を逸らした。


「……まったく。貴女のことだけは、どうもからかいきれませんね。心が綺麗すぎます」

「えっ、買い被りすぎですよ」

「そういうところも含めて、ですよ」


 ほんの少し照れたスィさんというのは貴重かもしれない。

 その顔が見られたのなら、からかわれたことも許してあげようかな!


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