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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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51 緊張してリラックスしての繰り返し


 褒められロードを通り過ぎ、最後の最後でトウルさんにからかわれつつも、どうにかセルジュとともに外に出る。

 騒がしかったクランを出て急に静かになったからか、ついため息が漏れた。


「大丈夫か? すまないな、慣れないことをさせてしまって」

「え? だ、大丈夫です! 皆さんに勇気も貰いましたし!」

「それならいいんだが。……それと、トウルのやつがすまない。変な気を遣わせてしまったな」

「いえ……」


 見惚れてた、とか言っていたやつのことかな? そんなの、知らんふりしてもよかったのに、わざわざ言うところが真面目なセルジュらしい。


 余計に恥ずかしくなって、居た堪れないよ!


「だが、見惚れてしまったのは事実だ。あまりに綺麗でな」

「っ、あ、あんまり真顔で褒めないでくださいよぉ……そういうのに慣れてないので、どんな反応をすればいいのかわかんないんですから」

「くくっ、可愛いな」

「かわっ……!?」


 カッと顔に熱が集まる。やっと褒められロードを通り過ぎたと思ったのにっ!

 もうっ、セルジュまで私をからかうなんて……と思いかけたけど、そういうタイプでもないよね。たぶん本心で言ってくれてるんだろうな。


 恥ずかしすぎるし、怒るに怒れない。

 トウルさん以上の厄介さかもしれない。


「だが、私もあまりこういった装いには慣れていないから気持ちはわかる」

「えっ、セルジュが? あまりそう見えませんけど」

「余裕そうに見せているだけだ。動きにくいと思う辺り、私もあまり貴族には向いていないのだろう」


 意外だな……。すごく似合っているのはもちろん、着慣れている感じがあるのに。


 もしかすると私に気を遣って言ってくれているのかもしれないけど、ちょっとうんざりしたようにネクタイを緩めかけて戻していたから、案外本心なのかも。


「ルリと一緒で、私もいつもの格好が一番好きだ」

「同じですね。気が合うのは兄妹だからでしょうか」

「ふ、そうかもな。では、お手をどうぞ。私の妹」

「ふふ! お願いします、お兄様」


 わざとらしくかしこまったセルジュの手を取り、馬車に乗り込む。

 セルジュのおかげで緊張していたのが少し楽になった気がする。一人だったら今頃、緊張で押しつぶされていたよ。優しさが沁みるな。


 そうだよ、別にこれから戦いを挑みに行くわけでもないんだから、大丈夫。私は少し、気負い過ぎていたのかも。


 聞くところによると、当主様はもちろんのこと、セルジュのお母さま、つまり後妻にあたる方も、その娘や息子も私に対して好意的なんだって。

 優しい人たちなんだなぁ。突然帰ってきた前妻の実子だなんて面倒でしかなさそうなのに。


 でもそれはまだ私という人間を知らないからだよね。優しさに甘えていないで、私が平和で無害な人間だってことを伝えられたらいいな。


「そうだ、これもルリに伝えておかないとな」

「え?」

「今日は表向き、私とルリの二人でキンドリー家に向かうが……実はラスロもついてきている」

「ええっ!? ど、どこに!?」


 馬車に乗り、ゆっくりと発車した頃、セルジュに驚くべき事実を告げられ思わず腰を浮かせてしまう。

 セルジュはそんな私を落ち着かせるように肩に手を置いて座らせると、苦笑しながら教えてくれた。


「馬車から少し離れた位置から見守りつつ追ってくれている。屋敷にも侵入してくれるだろう。ラスロはその道のプロだから心配しなくていい」

「それもすごいですけど……キンドリー家のセキュリティー的にどうなんですかね……?」

「……そこはあまり聞かないでくれ」

「……了解しましたっ」


 暗黙の了承って感じなのかな?

 ま、まぁ、今回は別に悪だくみするために来てくれるわけじゃないもんね。

 たぶん報告とか、何かあった時のための護衛的な意味でついてきてくれるのだろうし。


 ラスロの身体能力の高さを思えば、緩やかに走る馬車を追いかけるなんて簡単だろうけど……侵入まで容易にこなすとは。

 知らなかったことに出来ないかな? 無理だよね。せめて顔に出さないように気を付けよう。


 それよりも何よりも。

 護衛が必要な何かって何!? 平和に話し合うだけだったのでは!?


 早速、そんな疑問が顔に出ちゃっていたらしい私を見て、セルジュがまたしても苦笑した。

 苦笑させてばっかりでごめんなさい。表情筋があまり仕事をしてくれないんですぅ……。


「言いたいことはわかる。だが、貴族というのはどこへ行くにも護衛がつく。それと同じだと思ってくれ」

「そういうもの、ってことですね? わ、わかりました」


 自由気ままに買い物も出来ない、それが貴族。

 もちろんそれだけじゃないのはわかっているけど、やっぱり窮屈に感じてしまうな。


 でも……もし私が生まれた時から異世界に飛ばされたりせず、キンドリー家で育っていたら、それが当たり前になっていたのかな。

 まったく想像がつかないけど、お世話されるのが当たり前で、護衛がつくのが当たり前で、淑やかに令嬢らしく振る舞っていた……?


 もしそうだとしたら、私はかなり世間知らずで騙されやすいご令嬢になっていたかも。

 人を信じやすいこの性格はたぶん、生まれつきだろうから……。


 どっちの人生がよかったのかなんて考えたって仕方がないし、比べるようなものでもないけど……そんな人生を歩む可能性もあったんだな、と思うと不思議で仕方ない。


 覚えてもいない頃から日本で育ってきたから、自分の人生を大きく変えられてしまったことに対する怒りも悲しみも私にはないけれど、ご両親はきっとあるよね。


 その気持ちを、私はちゃんと受け止められるかな?


「また緊張してきたか?」

「……セルジュにはお見通しですね」

「ふ、ルリがわかりやすいんだ」


 また笑われちゃった。そして、励まされて……この繰り返しだね。

 はぁ……感情を顔に出さないなんて高度な技術、私には一生無理かも!


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