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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十六章 一九六四年 南東交易路における通行阻害事例および沿道草地異常踏圧の確認
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第三節

**一九六四年六月五日 南東交易路を発つ前の記録**


朝の交易路は、夜に見たものをすぐにただの踏み荒らしへ戻してしまう。

白い道土も、幅広い蹄跡も、乾いた糞も、昼の光の下ではひどく明瞭で、そのぶん単純に見える。

夜のあいだにあれほど大きく見えた背や、切れ目ごとに揃って動いた影も、朝になるとただ「大きな獣が渡った跡」でしかなくなる。

こういう土地では、損をした者の言い分のほうがいつも強い。

荷車が返された、塩袋が破れた、馬が進まなかった。

どれも本当だろう。

だが、そこで終われば、この道の上を通るもう一つの線は見えなくなる。


私は発つ前に、北の塩草地から南側の土塁切れ目までを、街道に沿うのでなく、できるだけ直角に横切るように歩き直した。

前日までに見た踏圧帯、糞、蹄跡、土の白い粉、それらを一枚の図へ戻したかったのである。

すると、道を跨ぐ“問題の帯”は、宿場の者が言うほど広くはなかった。

むしろ驚くほど限られている。

大きく使われる切れ目は三つ、そのうち実際に重量のある通過が集中するのは中央の二つだけである。

街道を使う人間にとっては、その二つで十分迷惑なのだろうが、相手の側から見れば、長い回廊のうちのごく短い交差にすぎない。


北の塩草地では、前夜の踏み跡がまだはっきり残っていた。

先頭の大型個体が一度立ち止まった位置、中型のものが脇へ膨らんだ位置、小型が後ろから続いた位置。

いずれも、昨夜見た並びと大きな違いはない。

そして問題の白い道土の上には、二箇所だけ、他より深い蹄の沈みがあった。

一つは先頭の大型個体のものだろう。

もう一つは、小型の個体が同じ場所で浅く足を取られた地点と一致していた。

私はそこでようやく、昨夜一瞬、若い個体の不器用さと受け取りかけたものが、単に轍の割れ目へ足を取られただけだと確かめた。

こういう確認は、現場では地味だが、記録にとってはかなり重要である。

大型種ほど、動きを性格へ読み替えやすいからだ。


南側の切れ目の先には、踏み跡の少ない細い草地があり、そこから先は低い水場へ繋がっていた。

これもまた、宿場の者はほとんど気にしていなかった。

彼らが見るのは道の上だけだからである。

しかし相手の側は、塩草地、水場、緩い斜面、土塁の切れ目を一つの線として使っているらしい。

その途中へ道が交わり、荷車の軋みと白い道土が加わることで、問題が“被害”として強く見えているのだろう。

人間は、自分の線へ交わったところだけを中心にして物を言う。

交易路の記録では、その癖がよく出る。


宿へ戻ってから、私はオットーと最後に少し話した。

彼は図を見て、しばらく黙っていたが、

「では、道を少しずらせば済むんでしょうか」

と訊いた。

その問いに私はすぐ答えられなかった。

紙の上ではそう見える。

だが実際には、荷車の道は宿場と井戸と橋に繋がっている。

人間の側の都合もまた、そう簡単には動かせない。

私は結局、

「少なくとも、夜明け前に中央の切れ目へ重い荷車を入れぬだけでも違うでしょう」

とだけ言った。

これは学術上の結論としては弱いが、現地へ置いていく言葉としてはその程度がちょうどよかった。


この遠征の整理として、私はノートへこうまとめた。


**南東交易路で“荷車返し”と呼ばれていたものは、街道そのものを目的に出現する大型獣害ではなく、北の塩草地から南の水場・斜面へ抜ける大型草食幻獣の既存回廊と、後から整えられた交易路とが交差した結果とみるのが妥当である。

対象は単独ではなく、少なくとも大型・中型・小型を含む一続きの移動単位を持つ。

街道横断の際には、土塁の切れ目を利用し、先頭個体が足場を短く確かめ、中型が脇を埋め、小型が後続する。

したがって被害は敵意や襲撃ではなく、時間帯・重量・道幅の条件が重なった交差事故に近い。

一方で、宿場側の損失が現実である以上、現地では通行時間と荷重の調整を先に考えるべきで、単純な排除を勧める理由は乏しい。**


私はこの記録の見出しを、最終的に

**道交大食獣(仮)**

とした。

例によって無骨で、あまり良い名ではない。

だが、ここで見たものの要は、巨大さそのものではなく、道と交わるところにあった。

少なくとも私にとっては、その名のほうが記憶しやすかった。


ベルン宿場の往復は、これでいったん閉じる。

再訪するなら、乾季の終わりより、むしろ草の偏りが強く出る季節の変わり目がよいだろう。

また、若い個体の割合や通過時刻の差を見るには、もう少し長く張る必要がある。

ただ、今回の記録だけでも、交易路の話を“害獣”の一語から外へ出すには足りた。

あの道は人間のために作られている。

だが、人間の道であることと、そこを他のものが横切る権利がないこととは、同じではない。

この遠征で分かったのは、たぶんその程度のことだった。


宿場を出る馬車の上から振り返ると、問題の帯は昼の光の中でひどく静かだった。

荷車を返す獣の影も、塩草地の動く背も、どこにもない。

白い道土と低い土塁だけが、最初から何も起きていなかったように並んでいる。

交易路というものは、たいていそういう顔をする。

衝突があった場所ほど、昼にはよく整って見える。

その整った線を、夜だけ別の生きものが横切っていくのだと知れただけでも、今回の往復としては十分だった。

### 一九八三年春 整理のための短い注記


この記録では、私が初めて、現地の“被害”をそのまま否定せずに、なおかつ相手側の線を優先して図へ置こうとしている。

若い時期の手記としては、その点が少し進んでいる。

ラーデン谷では人間側の損失から遠ざかりすぎ、峠や塚地では現象の見え方へ寄りすぎた。

この交易路の調査では、損失と回廊の両方がようやく同じ紙へ乗り始めた。


一方で、体格差を見るとすぐ移動単位の秩序を読みたがる癖は、まだかなり強い。

それが全く誤りだったとは言わないが、今ならもう少し長く観測してから書くだろう。

それでも、この遠征は、若い頃の記録の中では、現地に残すべき言葉の選び方まで含めて、比較的ましにまとまったものの一つである。


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