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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十六章 一九六四年 南東交易路における通行阻害事例および沿道草地異常踏圧の確認
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第一節

**一九六四年六月三日 南東交易路、ベルン宿場外れ**


街道の話は、歩く者より運ぶ者の口から荒くなる。

旅人なら、見たものを見たまま語る余地がまだある。霧が出た、石が崩れた、道標が倒れていた、その程度で済む。

だが商人や馬方にとって、道は時間と積荷の線である。

そこで何かに止められれば、それはすぐ「被害」になる。

荷車が返った、馬が怯えた、車輪が軋んだ、塩袋が破れた。

相手が獣であれ地形であれ、まず損の言葉から話が始まる。

若い私は、そういう話に少し引っぱられやすかった。


ベルン宿場は、盆地の乾いた草地と、低い石山の裾とが交わるところにある。

南東へ伸びる交易路は、古くから塩と干し肉と羊毛を運ぶ道として使われてきたという。

道そのものは太く、宿も馬屋もあり、見た目には平穏な土地だった。

ただ、宿場を出て半刻ほどのところで、街道は急に幅を失う。

両側の草が片側へ偏って寝て、土が白く硬くなり、荷車の轍の外側に大きな踏み荒らしが出る帯がある。

今回問題になっているのは、その帯だった。


大学から渡された書類には、

**「南東交易路における通行阻害事例および沿道草地異常踏圧の確認」**

とあった。

実に乾いた名目である。

現地ではもっと率直で、皆それを「荷車返しの獣」と呼んでいた。

夜明け前、あるいは夕暮れどきにそこへ差しかかると、馬が進まず、前の土が動くように見え、時に大きな影が道を塞ぐ。

荷車は慌てて路肩へ寄り、片輪を落とし、塩袋や樽を傷める。

死人が出るほどではないが、季節によっては頻発するらしい。

私は最初、それを大型草食獣の通路と人間の道が偶然重なっているだけの話ではないかと考えた。

ただ、その「偶然」がどの程度の規模で起きているのかは見に行かねば分からない。


宿場の主は、私の紹介状を一読したあと、

「先生方はだいたい狼や盗賊を疑って来る」

と言った。

「違うのですか」

「狼なら肉を食います。盗賊なら荷を持っていきます。あれは、ただ道を止めるだけです」

この言い方は、いかにも運ぶ者らしかった。

止めるだけで十分に厄介なのだろう。

私は宿の主に、問題の帯へ案内できる者を頼んだ。

出てきたのは、年若い馬方ではなく、四十過ぎの荷車番だった。

名をオットーといい、話の順序がよい。

被害の愚痴より先に、どの時刻に、どの風向きの時に、馬が嫌がるかを語った。

こういう案内は助かる。


昼前にオットーと問題の帯へ出ると、まず目についたのは糞だった。

大きい。

牛のものに似るが、もっと乾きが早く、繊維が粗い。

しかも道のど真ん中ではなく、道の両外れに沿って点々と落ちている。

次いで、草の倒れ方。

馬車の轍は人間の道そのものを刻むが、その外側に、もっと幅広く、一定の向きで寝た草帯が何本も横切っている。

牛追いの群れならもっと乱れる。

一方向へ移る大型の集団か、あるいは何頭かの大きな獣が、毎回ほぼ同じ線で道を横断しているように見えた。


問題の帯の土は妙に白かった。

石灰質というほどではないが、乾くと表面に薄い粉を吹き、そのせいで大きな足跡が出やすい。

私はそこに、初めて対象の足跡を見た。

蹄である。

ただし馬や牛のように鋭くなく、前が広く丸い。

二つ割れではないが、一枚蹄ほどきれいでもない。

縁が厚く、しかも踏み込みが深い。

一歩が大きい。

私はそれを見て、馬方たちが「大地が動く」と言うのも少し分かる気がした。

夜明けの低い光の中で、こういう大きな踏み跡と、寝た草と、道を横切る影が重なれば、地面そのものが持ち上がるように見えるだろう。


ただし、ここで私は最初の勘違いもした。

踏み跡の大きさに引っぱられ、私は対象をかなり重い単独獣、あるいはせいぜい二、三頭の小群れだろうと見たのである。

ところがオットーは、私が足跡を測っているあいだに、少し離れた草の中を杖で示した。

そこには、先ほどのものより明らかに小さいが、形のよく似た踏み跡がいくつも続いていた。

私はそこで初めて、道を横切るものが一つの大きさに揃っていないことに気づいた。

大小の差がある。

それが年齢差なのか、別群の重なりなのかはまだ分からない。

だが、少なくとも「大きな一頭が荷車を止める」という宿場の語りは、かなり粗いまとめ方なのだと知れた。


道の北側には、低い土塁のような盛り上がりが長く続いていた。

風除けのために人が盛ったものとも言われるが、古い道筋を見ると、むしろ街道のほうがその線に沿って後から整えられたようにも見える。

私はそこを歩き、土塁の切れ目ごとに草の状態を確かめた。

すると、大きな踏み跡と糞が濃く出る箇所は限られていた。

どこでも横切るのではない。

決まった切れ目があり、その間を広い弧で結んでいる。

大型の獣が、人の道を好き勝手に荒らしているのではなく、もともとそこに通りやすい線があり、道のほうが後からそれを横切っている可能性が出てきた。


午後、宿へ戻る前に、オットーがふと面白いことを言った。

「先生、荷が軽い日は、馬もあまり騒がない」

「獣が小さいからではなく?」

「いいえ。道の音です。重いと、車輪が先に鳴ります」

私はその言葉をすぐには理解しきれなかった。

だが書き留めておいた。

重い荷車ほど、軋みや振動が先へ伝わる。

それが大型の草食獣を刺激して止まらせるのか、それとも単に、馬の不安が先に増すのか。

どちらにせよ、「荷車返し」が獣だけの問題ではなく、人間の運び方とも結びついていることを示していた。


夕方、私は一人で問題の帯へ戻った。

オットーは翌朝の荷の支度があると言って宿へ引き返したが、その代わり、帯の南端の低い石囲いまでなら暗くなっても迷わぬと教えてくれた。

私はそこを観測点に選んだ。

日没前の風は弱く、草の偏りだけが低く波打っている。

道の白い土は、夕方の光でかえって目立ち、踏み跡の大きさが昼より誇張されて見えた。


最初に動いたのは道ではなく、北の土塁の向こうだった。

草が一度だけ、広い面で沈む。

小型種のような素早い影ではない。

もっとゆっくり、重いものが立ち位置を変える時の沈み方である。

私は身を低くして見た。

やがて、土塁の切れ目の向こうに、灰褐色の背が上がった。

高い。

馬より肩が低いか同じくらいだが、胴の厚みが違う。

角はない。

首は思ったより長く、頭は低く前へ突き出る。

一見すると牛に近い。

だが牛より脚が長く、蹄も幅広い。

しかもその背のすぐ後ろに、少し小さい影がもう一つ続いていた。

私はそこでようやく、大小の踏み跡が夜の影として実際に揃うのを見た。


対象は道を“塞ぐ”ようには動かなかった。

むしろ、土塁の切れ目から切れ目へ、最も歩きやすい線を選んで出てくる。

その途中にちょうど街道があるだけだった。

最初の一頭は道の縁で一度止まり、鼻面を低くして土を嗅ぐような動きをした。

そのあとで、白い道土の上を斜めに横切る。

後ろの個体は少し離れて続き、さらにその向こうに、まだ小さい影が二つ見えた。

私はその時、自分が昼に思い描いていた“重い単独獣”の像が、かなり乱暴だったことを思い知った。

少なくとも、ここにいるものは単独ではない。

しかも足跡の大小どおり、はっきりと体格差がある。


それでも私は、この時点ではまだ彼らを“群れ”と断じなかった。

暗さの中でまとまりよく見えるものほど、距離を詰めるとそうでもないことがある。

ただ、道を横切る順序には、少なくとも偶然以上のものがあった。

大きい個体が先に切れ目へ出て、道を渡り、そのあとを少し小さいものが追い、さらに離れて小さい影が続く。

それは谷のゴブリンのような役分担とは違うが、無秩序な散開でもなかった。


この晩、私は余計なことをしなかった。

近づきすぎず、音も立てず、ただ切れ目と白い道土だけを見るようにした。

若い頃は、見えたものをもう少し大きく見ようとして場を壊しがちだったが、この夜はそれを抑えられた。

おかげで、最後にもっと大事なことが見えた。

道を渡ったあと、彼らは南側の草地へ散るのではなく、また別の土塁の切れ目を目指して緩く揃って動いたのである。

つまり彼らにとって重要なのは街道そのものではなく、切れ目と切れ目を結ぶ回廊の線だった。

人間の道は、その途中にある障害でしかない。


夜の記録には、こう残した。


**交易路を横切る大型草食幻獣候補を初視認。

体格差を伴う複数個体が、土塁の切れ目を結ぶ一定の線で街道を横断する。

対象は道を妨げるために出るのではなく、既存の移動回廊と街道とが交差しているため、結果として荷車の通行を阻害するものと考えられる。

大型個体が先行し、その後をやや小さい個体およびさらに小型の個体が続く。

現段階では社会単位の性格は不明だが、一頭のみを問題視する宿場側の認識は不十分である。

次は、切れ目と踏圧帯の位置を広く取り、回廊の全体線を押さえたい。**


この土地では、被害の言葉より先に、道のほうを疑う必要がありそうだった。


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