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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十五章 一九六三年 塚地周辺における進路錯誤および時間感覚喪失の報告
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第三節

**一九六三年九月十一日 ハロウ塚地南縁、薄暮の内外比較**


塚地の中で鳴る音と、外から聞く音とが同じでないなら、人がそこで失うのは方向だけではなく、距離の感覚でもあるはずだった。

私は前日までの記録を見返し、塚列の窪みごとに音の出る位置と、歩きが膨らむ向きを並べてみた。

すると、三つ目の窪みだけが他よりはっきりしていた。

影の切れ方、殻の音、羊の止まり方、人の歩きのずれ。

どれもそこへ少し強く寄っている。

ならば、今夜はそこを内側と外側の両方から比べてみるのがよいと考えた。


夕方までのあいだに、私は村役と牧童の二人へ頼み、塚地の南縁と北縁にそれぞれ立ってもらうことにした。

声は出させない。

白い布も使わない。

ただ、決まった刻に小石を一つずつ、塚列の外の地面へ落としてもらう。

それが中へどう聞こえるか、あるいは外からはどう返るかを知りたかったのである。

音の大きさではなく、位置のずれ方を見るための仕掛けだった。

前の峠で、灯りをいじりすぎると観測そのものが濁ることを覚えたので、今度はできるだけ控えめにした。


午後、三つ目の窪みの周囲を明るいうちにもう一度見直した。

塚と塚のあいだの幅は、人が二人並ぶには少し狭い程度で、地面は見た目より柔らかい。

中央は踏み固められていない。

代わりに、左右どちらかへほんの少し寄った帯だけが草の先まで寝ている。

内側から見ると右へ膨らみ、外から見ると左へ弧を描く。

つまり人は、自分ではまっすぐ抜けるつもりでいて、結果として窪みの片側の利用帯へ吸われているらしかった。


日が傾くと、塚列の南側のほうが北より早く暗くなった。

低い盛り上がりの影が、畑側へ長く伸びるからである。

私は今夜、最初は塚地の中へ入り、前日に歩きが膨らんだ三つ目の窪みの手前で待つことにした。

完全に暗くなる前の、音の位置が少し曖昧になる時間を見たかったからである。


最初の小石は、北縁から落とされた。

私は確かにその音を聞いた。

だが位置は、自分が思っていたより少し右だった。

北の外れから真っ直ぐ入るはずの音が、窪みの片側へ寄って聞こえる。

次に南縁から小石が落ちると、今度は逆に少し左へ寄って聞こえた。

つまり塚列の内側では、外から来る単純な音ですら、わずかに偏って届くのである。

殻の軽い音や小型の移動がそこへ重なれば、人が向きを見失うのも無理はない。


そのあとで、塚列の内側の草に低い動きが出た。

前夜までと同じく、地面近くを走る影である。

ただ今夜は、一つではなく、ほぼ同時に二つ出た。

一つは三つ目の窪みを横切り、もう一つはそのひとつ外の窪みを短く抜ける。

どちらも殻の音を残したが、音の高さが少し違った。

近くを通ったもののほうが乾いて軽く、高い。

外のものは少し鈍く、位置も曖昧である。

私はそこで初めて、村人が「鈴のようだ」と言う時、その中に少なくとも二種類の響きが混じっているのではないかと考えた。

塚地の音は、一つの器官の声ではなく、複数の殻や乾いた接触が重なった結果かもしれない。


私が窪みの中で待っているあいだ、音は一度だけ、予想外の方向から来た。

塚の肩の上からである。

振り向くと、少し大きい影が盛り上がりの縁に止まっていた。

高さは前夜と同じくらいで、他の小さいものより背が抜ける。

ただ、そこで鳴った音は殻の軽い音ではなく、乾いた擦過音に近かった。

低木の根元か、土の硬いところを短く掻いたような響きである。

その直後、窪みを走っていた小さい影が一斉に止まり、すぐ別の窪みへ散った。

私はその動きを見て、塚地の対象には、少なくとも“止まるきっかけ”を作る個体がいるのではないかと思った。

断定はできない。

だが、大小の差がただの齢差だけでなく、位置や役目の違いとしても出ているように見えた。


薄暮が進み、外縁の石囲いが見えにくくなると、私は一度塚地の外へ出た。

同じ三つ目の窪みを今度は外から見るためである。

すると、中にいた時に右へ寄って聞こえた小石の音は、外からだとごく普通に一直線に聞こえる。

つまり、音そのものが歪んでいるのではなく、塚のあいだへ入った人間の位置感覚のほうが少しずつ片側へ引かれているのだろう。

地面、影、殻の音、小型の移動。

どれか一つなら、迷いは大きくならない。

だが全部が同じ向きへ少しずつ重なると、見えている石囲いまで遠くなる。


ここで私は、もう少しだけ踏み込んで、三つ目の窪みの草先に残った銀白のようなものを確かめたくなった。

峠の記録が頭にあったのだろう。

銀白色の鱗片が灯りを返したように、こちらでも何か微細な付着が音や見え方に関与しているのではないかと思ったのである。

だが近づいてみると、それは鱗片ではなく、ごく細い乾いた膜だった。

草の葉の縁や低木の棘に引っかかり、風が来ると軽く鳴る。

昆虫の抜け殻に近いが、もっと脆く、指でつまむとすぐ割れた。

塚地の鈴のような音の少なくとも一部は、こうした薄膜が殻片や棘に触れているのかもしれない。

その場で全ての音の説明がついたわけではない。

ただ、妖精塚の鈴が、必ずしも生きものの声そのものではないことだけは、かなり強く感じられた。


夜が深くなる前に観測を切り上げた。

完全な暗さの中へ入ると、この塚地では記録より自分の位置の保持に気を使いすぎる。

今の段階では、それは得策に思えなかった。


その夜の記録には、こう残した。


**塚列の内側では、外から与えた単純な音でさえ、窪みごとにわずかに偏って届く。

進路錯誤は、地形の歪みだけでなく、音の位置感覚のずれとも結びついている可能性が高い。

また、小型個体は複数の窪みを並行して利用しており、殻音には少なくとも二種の高さがある。

少し大きい個体らしきものが塚の肩で停止し、短い擦過音のあとに小型個体群の動きが変化した。

さらに、草や棘にかかる薄い膜状物が軽い接触音の一部を生じている可能性を確認。

塚地の現象は、単独の妖異ではなく、地形・付着物・小型幻獣群の利用帯が重なった結果とみるほうが自然である。

次は朝の窪みで、薄膜と殻片、小型移動の位置がどこまで一致するかを確かめたい。**


塚地の話は、ようやく“何かに道を取られる”という曖昧さから、どこで何が少しずつ人を押しているのか、という具体へ移り始めていた。


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