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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十五章 一九六三年 塚地周辺における進路錯誤および時間感覚喪失の報告
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第二節

**一九六三年九月十日 ハロウ塚地外縁、北の石囲い沿い**


前日の薄明で、自分の足が塚の列に沿って少しずつ外へ膨らんでいくのを見たあとでは、もう塚地の中へ正面から入る気は起きなかった。

少なくとも、今の段階で知りたいのは「中でどう迷うか」より、「何がどこから人を外へ押しているのか」のほうである。

塚のあいだへ入れば、どうしてもこちらの位置感覚が先に揺らぐ。

それでは、音も動きも地形も、一つずつ分けて見られない。

そこでこの日は、塚地の外縁、とくに北側の石囲いに沿って、音の出る位置と小型の移動の線を外から押さえることにした。


朝のうちに石囲いの外を回ると、塚の列は内側から見るよりずっと不自然だった。

地上を歩いている時には単なる高まりに見えたものが、外から眺めると、互いに少しずつ角度を違えて並んでいる。

しかも、その並びのあいだにできる浅い窪みは、どれも同じ幅ではない。

人がまっすぐ抜けようとすると、塚そのものではなく、この窪みの向きに足を取られるのだろう。

私はそこでようやく、村人が「塚に回される」と言う時、その中身は円を描くというより、**歪んだ列に沿って少しずつ向きを変えられる**ことなのだと考えた。


北の石囲いは、半ば崩れ、地面と同じ高さになっているところも多い。

そのため、塚地の中のものが出入りするとすれば、このあたりが一番容易だろうと思われた。

実際、囲いの切れた二箇所で、草の先だけが内側から外へ倒れている帯が見つかった。

人が跨ぐなら、もっと広く乱れる。

鼠や鼬なら低すぎる。

前日に塚の裾で見た低い動きの高さと、ちょうど同じくらいだった。

しかも、その帯の根元には、白っぽい小片がいくつも落ちている。

殻だった。

前日に聞いた軽い音の元らしいそれが、今度は三つほど重なって、風の弱い朝にも少し触れ合っていた。


私はその殻を拾い上げた。

甲虫の外殻に似ているが、もっと薄く、乾くとよく鳴る。

小さな果実の硬い殻とも思えるが、内側のざらつき方が少し生きものじみている。

どちらにせよ重要なのは、それが自然に一箇所へ集まるとは考えにくいことである。

風ならもっと散る。

誰か、あるいは何かが、塚の窪みの縁へこうした軽い殻を繰り返し持ち込んでいるのかもしれなかった。

もしそうなら、鈴に似た音は偶然ではなく、塚地の利用に付随して生じる音ということになる。


昼前、村の牧童がまた羊を寄せてきたので、私は前日とは別の場所で羊の動きを見た。

羊は塚のあいだへ入ることは入る。

だが、第三の塚の手前で必ず一度まとまり、耳を小さく動かしてから、左右どちらかへ寄る。

正面を抜けることはほとんどない。

羊が迷信を知っているわけはないから、何か実際の刺激があるはずだった。

音か、匂いか、地面の踏み心地か。

人はそれを妖精の仕業と呼ぶが、羊はただ進みにくいところを避けているだけである。

その違いは、観察する側にはありがたかった。


午後、私は北の石囲いの外へ二つ、小さな目印を置いた。

一つは白い石片、もう一つは黒い木片である。

塚地の中へではなく、外から見える位置へ置くのは、夜に動いた線を朝に見失わぬためだった。

前の峠のように、対象に近すぎる場所へ人為を入れるのは避けたかった。

あくまで、こちらの視線の基準だけにするつもりだった。


夕方になると、塚地の影はまた急に長くなった。

前日、私は塚のあいだを歩いてそれに振り回された。

今夜は逆に、影がどこで切れ、どこで繋がるかを外から見ていた。

すると、塚列の第三の窪みだけ、影の重なり方が妙だった。

完全に暗くなる前、塚の影と低木の影のあいだに、細い明るい筋が残る。

その筋を通れば人はまっすぐ抜けられるように見えるが、実際には少し右へずれていく。

塚地の迷いは、何も見えないから起こるのでなく、**見えすぎる細い線があるからこそ起こる**のかもしれなかった。


日が落ちきる少し前、最初の音が出た。

北の石囲いの切れ目のすぐ内側、前日に低い動きを見たあたりである。

鈴と言うには乾きすぎ、骨と言うには軽い。

短く二度。

私はそこへ視線を据えたまま動かなかった。

すると、草の根元をなぞるように、ごく低い影が一つ走った。

昨日見たものよりはっきりしている。

大きさは兎ほどではない。

胴は低く、頭部は前へ出るが、尾の線は長くない。

体の後半が土へ隠れやすく、前半だけが少し高く見える。

これが塚の裾で出ると、人によっては小さな子どもか、腰の低い老人のようにも見えるだろうと思った。


一つだけではなかった。

少し遅れて、別の窪みでも同じ低い動きが出た。

しかも今度は、その動きのあとに殻の音が一つ重なった。

私はそこでようやく、音と移動の順が一定でないことに気づいた。

先に音がして人が向きを変える時もあれば、先に影が走り、そのあとで殻が鳴る時もある。

つまり、塚地の現象は「音で誘う」一語では足りない。

影と音が、地形の上で少しずつずれて人にかかってくるのだろう。


その晩、私は無理に中へ入らなかった。

前日に一度、自分の足がどのように膨らむかは見ている。

今夜必要なのは、外から見ても塚のあいだの列が、同じ側へ寄る帯を持っているかどうかだった。

実際、北の石囲いから見ていると、低い影はまっすぐ塚の中心を横切るのでなく、必ず窪みの片側へ寄って通っていた。

その寄り方が、人の歩く時の膨らみとよく似ている。

塚地では、人の進路だけが狂うのではない。

まず小型のものが使う細い線があり、人間はそこへ自分の足を引きずられているのかもしれなかった。


だが、ここで一つだけ、少し判断の早いことをした。

私はその線を見ながら、対象が人の足をわざと外へ誘導しているのではないか、と考えたのである。

塚地の伝承があまりにもそのように語るので、ついそれを生態の側へも置きたくなったのだろう。

実際には、まだそこまで言える根拠はない。

小型のものが自分たちの使いやすい線を反復し、その音と動きに人が勝手に引かれているだけかもしれない。

だが、その夜の手記には、私はいささか意気込んだ書き方をしている。


観測の終わり頃、第三の塚の肩で、少し大きい影が一度だけ止まった。

他のものより背が高く、草の上へ頭が少し抜ける。

ただし、長くは見えない。

その位置で殻の音はせず、代わりに土の上を軽く擦るような短い音があった。

私はその時、塚地の対象に大小の差だけでなく、役の差もあるのではないかと考えた。

小さいものが窪みを走り、音を生じさせる。

少し大きいものは塚の肩で止まり、外を見ている。

確証はない。

だが、ゴブリンの谷を見た翌年の私は、こういう場面で“体格差のある複数”をすぐに一つの単位として考えたがるようになっていた。


宿へ戻ってから、私は石片と木片の位置を地図へ写し、音の出た窪みと影の通った帯を書き込んだ。

塚地の錯誤は、だいぶ地面の上へ降りてきていた。

妖精のいたずらと一言で済まされてきたものの中に、少なくとも、殻の音を伴う小型幻獣の反復的な利用帯がある。

そこまでは、かなり強く書いてよさそうだった。


その夜の記録には、こう残した。


**塚地の進路錯誤は、塚列の窪みを通る細い利用帯と強く結びついているらしい。

殻の軽い接触音と、小型個体の低い移動は、同一位置か、きわめて近い位置で反復して出る。

人は大きく迷うのでなく、塚ごとに同じ側へ少しずつ膨らむ。

これは地形だけでなく、音と低い移動による注意の偏りが重なっている可能性が高い。

また、今夜は他より少し大きい個体らしきものも一度確認した。

塚地の対象は単独ではなく、大小を含む小規模な利用単位を持つかもしれない。

次は、塚列の内外で同じ音がどの程度違って聞こえるかを確かめたい。**


塚地の話は、ようやく迷信から癖のある地面へ変わり始めていた。


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