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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十五章 一九六三年 塚地周辺における進路錯誤および時間感覚喪失の報告
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第一節

**一九六三年九月九日 西部平野、ハロウ塚地外れ**


平地の道迷いは、山や森のそれとは少し違う。

山では高低が人を誤らせ、森では見通しのなさが方向を奪う。

ところが耕地の外れの平地では、見えているはずのものが近づかず、分かっているはずの帰り道が妙に長くなる。

人はそういう時、たいてい地形のせいではなく、何かに道を取られたと言う。

塚に呼ばれた、丘に回された、妖精に遊ばれた。

この種の話はどこにでもある。

だが、どこにでもあるからといって、どこでも同じ中身とは限らない。


ハロウ塚地は、耕地の外れに低く盛り上がる古い土塚が、ゆるい弧を描くように並ぶ土地だった。

高さは人の背より少し高いものから、肩ほどしかないものまで様々で、表面には短い草と、ところどころ棘のある低木がついている。

村の子どもは近づくなと言われ、酔った男は夕方以降そこを横切るなと言われる。

理由を訊けば、決まって同じような答えが返ってくる。

少し回ったつもりが元の塚へ戻る。

家の灯が見えているのに着かない。

鈴のような音がして、振り向くと道の向きが分からなくなる。

大学へ届いた書類では、それは

**「塚地周辺における進路錯誤および時間感覚喪失の報告」**

とまとめられていた。

ひどく乾いた言い方だが、そうでも書かねば机の上で扱えぬのだろう。


この時の私は、まだこういう伝承地へ少し斜めに入る癖があった。

妖精塚と聞けば、現地の言い方が先に膨れていると考える。

実際、その見立ては大外れではない。

ただ、見立てが当たっていることと、現地で起きていることが単純であることとは別である。

私はそれを、前の峠の記録で少し覚えたつもりになっていた。


ハロウの村役は、塚地の手前の石囲いまで私を案内し、そこから先へは一人で歩かせようとした。

「道は見えておりますし、昼のうちは危なくありません」

と彼は言った。

たしかに、昼の塚地は危なく見えない。

耕地の切れ目から先に、低い土の起伏が点々と並んでいるだけである。

林もなく、谷もなく、足を取るほどのぬかるみもない。

こういう場所ほど、人は道迷いの話を馬鹿にしやすい。

その点では、私も同じだった。


最初に塚地を一巡りした時、私はむしろ音のほうが気になった。

風は弱いのに、塚と塚のあいだの窪みでだけ、乾いた小さな触れ合いの音がする。

鈴と言えば鈴に聞こえなくもない。

だが金属の澄んだ音ではなく、もっと軽く、乾いていて、殻か骨片が当たるような響きだった。

私は音のした窪みへ入ってみた。

すると、草の根元に白っぽい小片がいくつか散っている。

鳥の骨かと思ったが、手に取ると薄い殻で、表面は硬く、内側はざらついていた。

甲虫の大きな外殻、あるいは乾いた実の殻にも見える。

それが二つ三つ、風で転がるような位置に残っている。

村人が「鈴の音」と言うものの正体の一端は、これかもしれなかった。


塚の並びは、上から見れば半円に近い。

だが地上を歩くと、その半円が妙に歪む。

背の高い塚と低い塚が交互にあり、さらに低木の張り出しがそれぞれ違う向きを向いているからだろう。

私は昼のうちに、どの塚のあいだに人が通りやすい線があるかを見ようとした。

すると、踏み跡とは呼べぬ程度の草の寝た帯が、塚の正面ではなく、少し外側へ膨らむように残っているのが分かった。

人が素直に抜けるなら、もっとまっすぐ歩く。

だがここでは、通るたびに少しずつ同じ側へ外されるような帯ができている。

それだけなら風の向きでも起こりうる。

しかし、その帯の先に、また次の塚の同じような膨らみが続くのを見ると、少し様子が違って見えた。


昼過ぎ、村の牧童が一人、羊を塚地の外れへ寄せているところを見た。

私は声をかけ、羊が塚のあいだへ入ることはあるかと訊いた。

少年はすぐ頷いた。

「入ります。でも、奥までは行きません」

「どうして?」

「変な音がすると止まるからです」

「鈴の音か」

「鈴より軽いです」

そう言って、彼は両手の指先を軽く打ち合わせた。

乾いた、すぐ消える音だった。

私はその仕草を覚えておいた。

土地の人間は、説明より模倣のほうが正確なことがある。


夕方までのあいだに、私は塚地の外れを二度回り、村へ戻る最短の線を自分の足で確かめた。

塚の列をまっすぐ横切れば、石囲いまでは大して遠くない。

村の塔屋も見えている。

それなのに、ここで時間を失うという話が繰り返し残るのは、やはり地形だけでは足りない。

私はその時点で、風で鳴る殻の音と、草の寝た膨らんだ線の二つを、いちおう別々に考えていた。

どちらか一方で十分なら、それはそれで片づく。

だが、両方が重なって人を外しているなら、もっと面倒だった。


日が傾きはじめると、塚の影が急に長くなった。

平地では夕方の影はたいてい素直に伸びるものだが、この塚地では窪みと盛り上がりが多く、影が途中で切れたり、低木の根元で急に太くなったりする。

見えているはずの村の石囲いも、塚の肩越しには妙に遠く見える。

私はその変化を見ながら、今夜は完全に暗くなる前の時間をまず観るべきだと決めた。

夜の迷いは夜だけで起こるのではない。

たいていは、薄明のうちに方向感覚へ最初のずれが入る。


そこで私は、村役に頼んで、塚地の向こう側の石囲いに一人立ってもらい、決まった間隔で白い布を振ってもらうことにした。

声ではなく、見える目印である。

もし塚地が本当に人の向きだけを乱すなら、目印のある条件でどう崩れるかを見たかった。

村役は渋い顔をしたが、結局、日が落ちるまでならと引き受けた。


最初のうちは何も起こらなかった。

布は見える。

塚の列も昼と同じで、まっすぐ抜けられそうに思える。

私は第一の塚と第二の塚のあいだを通り、少し膨らんだ草の帯を確かめながら歩いた。

ところが第三の塚にかかったあたりで、布が急に遠くなった。

消えたのではない。

同じ白さのまま見えている。

だが、位置が少しずれ、左へ寄ったように思える。

私は立ち止まって塚の列を見直した。

すると今度は、鈴とも殻ともつかぬ軽い音が、足元に近いところで二度鳴った。

振り向くと何もない。

前を向き直すと、さっきまで正面にあったはずの布が、今度は塚の肩の向こうへ半分隠れて見えた。


私はそこで初めて、自分がまっすぐ歩いていないことに気づいた。

足跡を振り返れば、緩く右へ回っている。

大きな迷いではない。

だが、この程度の膨らみが塚ごとに積もれば、たしかに同じ場所へ戻る。

私はその場で足元の草を見た。

前に見た膨らんだ帯と、自分が今つけたばかりの線が、ほとんど同じ角度で並んでいた。

人がここで外される時、派手に道を間違えるのではない。

少しずつ同じ方向へ押しやられるのだろう。


その時、第四の塚の裾で、草の根元に低い動きが走った。

兎ほど大きくはない。

もっと小さく、地面に近い。

ただし鼠や鼬よりはまとまった体つきで、尾のような細長い線は見えない。

私はその一瞬に、本体を追うより先に、そちらが音の出た位置とぴたり重なっていることを見た。

塚地の錯誤は、やはり音と地面の両方が一緒に動いているらしい。

私は二歩だけそちらへ寄り、すぐやめた。

塚地の中で、見えた小さな動きを追ってよい理屈はない。

今のところ必要なのは、自分がどの程度ずれているかを失わずに記録することだった。


石囲いへ着いた時、村役は布を持ったまま少し怪訝そうな顔をした。

「まっすぐ来れば、もっと早い」

と言われ、私は笑わなかった。

実際、塚の外から見ればそうなのだろう。

中にいる者だけが、少しずつ同じ側へ押されていく。

こういう現象は、外から見るといつも馬鹿らしく見える。


その夜の記録には、こう残した。


**塚地で起きる進路錯誤は、暗闇よりむしろ薄明のうちに始まる。

塚列のあいだでは、人は大きく迷うのでなく、同じ側へ少しずつ外される。

草の寝た膨らみと、自身の歩行のずれはよく一致した。

また、軽い殻音に似た音が生じる位置で、小型動物様の低い移動を一瞬確認。

現段階では、塚地の現象は地形のみでなく、音を伴う小型群居性幻獣の利用帯と結びついている可能性が高い。

次は夜間の塚列の内側ではなく、外縁から音と移動の位置を見たい。**


この土地では、まず道ではなく膨らみを記録する必要がありそうだった。


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