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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十三章 一九六一年 北東辺境における小規模集落被害と夜間火光現象の実地確認
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第二節

**一九六一年十月三日 ラーデン谷第二村上手、焼畑跡と炭焼き小屋跡**


朝の谷は、前日の印象よりずっと狭く見えた。

夜のうちに降りた露が草へ残り、川沿いの白い息がまだ低く漂っている。

人の家々は近いのに、少し上の斜面へ目をやると、もう別の土地のようだった。

焼畑跡の明るい地面と、伐り残しの黒い林、そのあいだに使われなくなった炭焼き小屋がある。

村ではそのあたりをまとめて「向こう側」と呼んでいたが、実際には、畑の端と山の始まりがきれいに分かれているわけではなかった。


約束どおり、村役のベッカーが案内に立った。

彼はこの日も必要以上には喋らず、ただ歩く先を時々杖で示す。

私は前日よりその癖に慣れ、彼の杖先が何を選んでいるかを見るようにした。

老人は地面そのものより、地面の上で少しだけ不自然に残ったものを先に見つける。

切株の根元、草の寝方、泥の乾き方、そういうところである。


第二村を抜けて焼畑跡へ入ると、最初に目についたのは浅い掘り返しだった。

鍬の跡のように深くない。

獣が鼻面で荒らしたほど乱れてもいない。

芋か根を探るように、表土だけを薄く返してある。

しかも一箇所ではなく、斜面の同じ高さへいくつも点々と残っていた。

前日に見た農具小屋の被害と合わせると、持ち去られているものが妙に揃っている。

肉や穀物ではなく、根菜と、地面の下へあるものだ。

私はこの時点で、谷の被害が空腹だけで説明できるものではないのかもしれないと思い始めた。

少なくとも、選び方に癖がある。


焼畑跡の縁では、細い枝が不器用に折られていた。

刃の立つ道具で一息に切ったのではない。

同じ箇所を何度か削り、ようやく折ったような切れ口である。

数本を拾って並べると、太さも長さもおおよそ揃っていた。

薪にするには細すぎる。

焚きつけか、籠の骨組みか、その程度の用途だろう。

私はそれをその場で断定はせず、ただ「揃えて切られた細枝」と記して包んだ。

若い頃の私は、こういうところで用途まで言いたくなる癖があったが、この日は少しだけ堪えた。


焼畑跡の上手には、古い炭焼き小屋の跡があった。

屋根は落ち、石組みの炉だけが残っている。

人の住む場所には見えない。

ただし、風が直接当たらぬ炉の奥だけは乾いていて、そこへ細かな編み屑と小さな骨片が寄せてあった。

編み屑は草繊維に毛のようなものが混じり、縄よりは袋か小籠の縁に近い。

骨片はどれも小さく、野鼠か小鳥くらいのものに見える。

前日の農具小屋のように大きな食料を持ち去るだけなら、わざわざこういう場所で小さいものを焼く理由は乏しい。

となると、村から得るものと、谷で自分たちで取るものとが、少なくとも分かれていると考えるほうが自然だった。


小屋跡の周囲を回ると、炉の外側の土に、前日見たものとよく似た足跡が二つ残っていた。

裸足に近い。

指が短く開き、踵が浅い。

ただし今回は、片方の跡が土ではなく崩れた石の粉に半分かかっていたので、足裏の当たり方が少し分かった。

人間の足ほど踵へ重みを残さず、前寄りに体重が抜けている。

走った跡ではない。

むしろ、静かに足場を確かめながら歩いたようなつき方だった。

焼畑跡から炭焼き小屋跡にかけて、この足跡が同じ高さの帯へ沿って出るのは偶然ではないだろうと感じた。


昼前、ベッカーが斜面の上を杖で示した。

伐り残しの白樺が数本、痩せた空へ立っている。

「夜はあの下へ火が見えることがある」

「毎晩ですか」

「毎晩なら、村の者も見慣れる」

それだけ言って、老人は黙った。

私はその一言をかなり重く見た。

火が毎晩あるのでなく、条件の合う夜にだけ出るなら、ここを恒常的な“集落”と呼ぶにはまだ早い。

反対に、偶然通りすがるだけとも言いにくい。

谷の外れのこの帯を、何かが反復して使っていることだけは、地面の痕からも分かりつつあった。


午後、私は焼畑跡と炭焼き小屋跡のあいだを何度も歩き、痕の残る線を探した。

谷の地面は柔らかそうに見えて、実際に足跡が残る場所は限られている。

乾いた草地では消え、湿りの溜まるくぼみや、石の粉が溜まる帯にだけ一時的に出る。

その中で、小屋跡から焼畑跡の下側へ抜ける細い線に、同じ形の足跡が三つ拾えた。

いずれも歩幅は子どものものより長く、しかも村へ向かわず、いったん林縁の草帯をなぞってから焼畑跡へ寄っている。

見つかりにくい線を選んでいるのか、単に歩きやすいところを取っているのかは、その時点では決めなかった。

ただ、村人の言う「好き勝手に出入りするゴブリンの群れ」という像とは少し違って見えた。


夕方になっても、私は村へ戻らず、焼畑跡の上の斜面に残ることにした。

ベッカーもそれに付き合った。

本当のところ、火を近くで見たい気持ちがあった。

昼の痕だけでも十分材料はあったが、火と影と声のどれか一つでも確かめなければ、谷の記録はまだ平板すぎると思えたのである。

斜面の草は冷え、風向きは落ち着いているように見えた。

この時の私は、谷の夜風がどれほど細かく向きを変えるかを、まだ十分には知らなかった。


夜半前、焼畑跡の少し手前の窪みに、低い赤い火が出た。

立ち上がる炎ではなく、地面近くへ保たれた火である。

私は草の間からそこを見た。

火のそばに影があった。

一つではない。

二つ、あるいは三つ。

明るさが足りず数は定まらないが、少なくとも複数である。

一つは火の傍らでしゃがみ、もう一つは少し外へ立って、斜面の下を見ているようだった。

獣の群れよりは、互いの位置を知って動くものの気配に近い。


短い声も聞こえた。

人間の言葉ではない。

ただの鳴き声とも違う。

高くも低くもない音が短く切れ、火の位置を挟んで返る。

私は手帳へ書きつけようとして紙を落としかけ、ベッカーに腕を押さえられた。

その直後、風が変わった。

自分たちの焚火の残り香が、斜面の下へ流れたのだろう。

火の外にいた影が止まり、すぐに赤い火が潰された。

土か灰をかけたらしく、立っていた色が一息で低くなる。

声も止んだ。

残った赤も、すぐに見えなくなった。


それ以上は何も出なかった。

谷は元の夜へ戻り、草を渡る風の音だけが残った。

私はしばらくそのまま伏せていたが、ベッカーが低く「戻るぞ」と言って立ったので、ようやく諦めた。

村へ下りる途中、頭の中には見えたものが何度も並び直された。

火の扱い。

複数の影。

短い発声。

匂いへの鋭い反応。

少なくとも、谷で起きていることをただの夜盗まがいか獣害のどちらかへ押し込むのは、もう難しかった。


その晩の記録には、こう残した。


**火光現象を確認。

少なくとも二個体以上が火の管理と短い発声を伴って行動している。

焼畑跡と炭焼き小屋跡には、編み屑、細い切り枝、焼けた小動物骨が残り、反復的な利用を示す。

対象を単なる害獣として扱うのは不十分である。

一方で、火の周りにいたものをそのまま集落や群れと呼ぶにはまだ早い。

焼畑跡、炭焼き小屋跡、農具小屋の足跡が同じ生活の反復に属するかどうか、次はそこをさらに見なければならない。**


この夜の火で、谷の見え方は少し変わった。

変わったのは、結論より先に、見るべき線のほうだった。


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