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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十一章 一九八一年 石灰岩採掘跡周辺における小型家畜急死事例および局所植生枯死帯の調査
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第四節

**一九八一年九月十七日 サン・ヴェルを発つ前の記録**


石の村を離れる朝は、思ったよりあっけない。

夜のあいだにはあれほど濃く見えた納骨壁の影も、石切場の裂け目も、日が上がればただ乾いた白さへ戻ってしまう。

村の者が長く同じ名で呼んできたものも、昼の光の下では、そこにいた証拠だけが細く残り、姿そのものはまた石と草と熱のあいだへ溶けていく。

そういう土地なのだろうと思う。

見えた時だけが極端に近く、あとはずっと普通である。

人間が怪物譚を育てるには、ちょうどよい。


発つ前に、私は礼拝堂裏と石切場下段をもう一度だけ歩いた。

新しい痕が増えていないかを見るためでもあったが、それ以上に、ここ数日の記録が本当に同じ地面の上に書かれていたのか、自分の目で確かめておきたかった。

調査の終わりには、しばしばそういう確認が要る。

見えたものより、見えなかった時間のほうが長い土地ではなおさらである。


納骨壁の棚には、新しい羽が一枚落ちていた。

前日までのものより柔らかく、ただの小鳥の羽に見えた。

対象の痕跡とは言いがたい。

その一方で、石縁の接触痕はやはり同じ高さで増えており、低い棚だけが繰り返し使われていることは間違いなさそうだった。

石切場下段の枯れ帯も、夜に見た線を朝の光の中で追うと、断続的ながら礼拝堂寄りの草地まで続いている。

地面だけを見ていれば、村の者が一つの名でそれらを呼ぶ理由は十分にある。

視線だの呪いだのはともかく、同じ生きものの生活圏としてまとめることには、無理がない。


私は宿へ戻って荷を整え、そのあとで今回の記録を一つにまとめた。

サン・ヴェルで得たものは、次のように整理できる。


石切場下段、礼拝堂裏の納骨壁、家畜小屋寄りの石垣線には、小型から中型の四肢を持つ捕食性幻獣候補の利用痕が断続的に認められる。

対象は蛇類とも通常の鳥類とも一致せず、低い頭部、短い前肢、強い後肢、肩後方の短い硬羽状突起、石地に適した低重心の移動を示した。

納骨棚では小動物の探索行動と石縁への接触、石切場側では裂け目利用と枯れ帯への関与が観察され、村で一つの名にまとめられてきた現象群を、少なくとも単一の生活圏として扱うことは可能である。

家畜急死については頭部周辺の狭い損傷が複数確認されたが、毒性の有無と致死機序は未確定であり、現段階では断定を避ける。

また、「目が合うと死ぬ」という伝承はそのまま信じがたいが、眼の向きが読みにくいことが人間へ強い不快と誤認を与える点は記録に値する。

草の枯れ帯については、局所的接触または呼気の影響が疑われるが、これもなお保留すべきである。


私はここで、初めて地方名をそのままではなく、学術的な仮称へ寄せて残すことにした。

ただし大げさな名にはしたくなかった。

石、隙間、小動物、乾いた熱。

この土地で見たものの核はそのあたりにある。

最終的に、手帳の見出しへはこう書いた。


**石隙鶏蛇(仮)**


よい名ではない。

むしろ少し不格好である。

だが、村で揺れていた呼び方――蛇とも鶏とも、怪物とも害獣とも言い切らぬ曖昧さ――を、そのまま記録の側へ移したと思えば悪くない。

少なくとも、バジリスクという完成しすぎた名よりは、今の私の観察には近かった。


宿の主人は、馬車へ荷を積む私を見て、

「で、いたんですか」

とだけ訊いた。

私は少し考えてから答えた。

「村の話ほど万能ではありませんが、何かはいます」

主人はそれで十分らしく、笑いもせず頷いた。

土地の人間にとって必要なのは、怪物譚の勝ち負けではなく、鶏小屋をどう直すか、子どもにどこへ近づくなと言うか、その程度なのだろう。

それはたぶん、正しい。


サン・ヴェルの記録は、ここでいったん閉じる。

再訪するなら、雛の多い初夏か、逆に乾きの強い晩夏がよいはずだ。

家畜被害と枯れ帯の出方が季節でどう変わるかを見なければ、毒性や採食傾向についてはこれ以上進めにくい。

それでも今回、少なくとも一つは確かめられた。

石の村で語られてきたバジリスクの話は、まるごと虚構ではない。

ただ、人間が恐れてきたものの中心には、呪いより先に、石と隙間に適応した、ひどく実際的な捕食者の生活があった。

そう書けるだけでも、ここへ来た意味は十分だった。


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