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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十一章 一九八一年 石灰岩採掘跡周辺における小型家畜急死事例および局所植生枯死帯の調査
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第三節

**一九八一年九月十六日 サン・ヴェル礼拝堂裏、納骨壁下の再観察**


前夜に姿を得ると、翌朝にはどうしてもその形が先に立つ。

石切場の裂け目に半身だけ現れた、あの低い頭部と短い前肢と、肩の後ろの硬い突起めいたもの。

それを一度見てしまうと、以後は納骨壁の擦れも、鶏の傷も、草の黒ずみも、すべてその個体へ収まりよく並べたくなる。

私はその誘惑を知っていた。

知っていたから、この日はあえて石切場ではなく、礼拝堂裏から見直すことにしたのである。

昨夜見たものが本当に当地の問題の中心にいるなら、納骨壁と石切場の両方へ痕を持っていてよい。

逆に、そこが繋がらないなら、村で一つに語られてきたものは、やはり複数の話をまとめた可能性が高い。


朝の礼拝堂裏は、石切場よりいくらか柔らかく見えた。

白い壁も、納骨棚の陰も、日が高くなるまでは湿りを残し、鼠や小鳥の気配も近い。

昨夜の乾いた接触音が、この朝には出るはずもない。

だが、夜の音はたいてい朝の位置へ戻る。

私は棚の前の地面を一つずつ見て、昨日採った糞と同じものが他にないかを探した。

すると、納骨壁の最下段から二つ目、半分崩れた棚の奥に、似たものがもう一つ見つかった。

ねじれた細い糞で、表面に白い粉がつき、端がやや尖る。

蛇のものほど均一でなく、鳥のものほど水っぽくもない。

しかも二つとも、鼠の骨が散った棚の近くに限って出ている。

この時点で、礼拝堂裏を単なる通過点と見るのは難しくなった。

少なくとも、対象はここで何かを食べるか、あるいは獲物の匂いを追って入っている。


納骨棚の石縁も改めて測った。

昨夜は一点接触痕の細さばかりが気になったが、朝の光で見ると、その筋は単独ではなかった。

高さの違う位置に、もっと浅い擦れが二本ある。

下の一本は細く深い。

上の二本は短く浅い。

嘴の先端だけが当たったのではなく、頭部を差し入れる角度の違いで、複数の部位が石へ触れているのかもしれない。

私はそこで、前夜の個体が裂け目から半身を出した姿を思い出した。

頭を低く保ち、首の付け根でわずかに高さを変え、覗くより差し込むように前へ出る。

あの動きなら、納骨棚の縁へこうした擦れが残るのは十分ありうる。


昼近く、司祭補がまた一羽、死んだ鶏を持ってきた。

今度は前日のものより小さい。

雛から成鳥へ移る途中の若い鶏で、やはり頭部の後ろに狭い傷がある。

ただし今回は二つではなく、一つが深く、もう一つは皮を掠めた程度だった。

私はそれを見て、攻撃の入り方が毎回まったく同じではないことに気づいた。

毒蛇の咬痕なら、もっと一定に見えることが多い。

嘴や顎の挟み込みなら、角度や相手の動きでこうした違いは出やすい。

もっとも、だからといって毒を否定する理由にもならない。

傷が小さいわりに死が早いという話が本当なら、咬傷と毒の双方を持つ可能性は残る。

私はそこを断じず、ただ傷の位置と深さだけを記した。


司祭補は、前夜の私の観察に少し気を良くしたらしく、村で古くから伝わる話を一つ聞かせてくれた。

「昔は、目ではなく息だと言ったそうです」

「何が?」

「草を駄目にするのは。目が合うと死ぬというのは、あとから広まった話だとか」

私はその違いを興味深く思った。

視線で殺す話は、人間がもっともらしく恐怖を語る時に育ちやすい。

一方、息や吐気で草が傷むという言い伝えのほうが、石切場の枯れ帯とはむしろ整合する。

伝承の古い層と新しい層が違うなら、それもまた記録すべき事実だった。

怪物譚は増える時に派手になる。

生態に近い部分は、往々にして後ろへ沈む。


午後は石切場下段と礼拝堂裏のあいだの道筋を歩いた。

村の者は両者を別々の場所として語るが、実際に歩いてみると、乾いた石垣の線と低い草地の縁がゆるく繋がっている。

対象が地上を使うにせよ、裂け目と納骨壁とを同じ夜に往復できぬ距離ではない。

ただし、通るなら最短ではなく、熱の残る石と、鼠の多い壁と、家畜小屋の匂いを結ぶような迂回を取るだろう。

私はその線を頭へ入れ、夕方の観測点を礼拝堂と石切場の中間、崩れた低い石垣の陰に決めた。

そこからなら、納骨壁へ向かう個体も、石切場へ戻る個体も、どちらも拾える可能性があった。


日没後しばらくは、何も出なかった。

高いところで鶏が一度だけ騒ぎ、すぐ静まる。

こういう土地では、その騒ぎの一つひとつに意味を持たせたくなるが、実際にはただの鼬や狐のことも多い。

私は動かず、石垣の影の長さだけを見ていた。

やがて、礼拝堂裏のほうで、小さく乾いた音が一度した。

昨夜と同じ種類の音だが、今度はもっとはっきり短い。

私は視線を上げず、まず草の揺れを待った。

少し遅れて、納骨壁の下の影が一段だけ濃くなった。


個体はすぐには出なかった。

先に見えたのは、壁際の草の先だけである。

黒ずんだ帯が、狭い幅で二度揺れ、それからようやく頭部が石の縁へ現れた。

前夜より近い。

輪郭も、少し長く保った。

頭の後ろの張り出しはやはり鶏冠ほど大きくない。

むしろ硬い羽の束が短く立つように見える。

眼は相変わらずつかみにくい。

位置は分かるのに、どこを向いているかが読めない。

そのため、ただこちらが見ているだけで、向こうに先に見切られている気分になる。

これが「目を合わせるな」という話の根だろうと、私はこの時ほぼ確信した。

視線の力ではなく、視線の読めなさが、人間に不安を与えるのである。


個体は納骨壁の棚へ半身を差し入れ、短く何かを引いた。

出てきたのは鼠ではなく、小鳥の乾いた骨片だった。

それをすぐ捨て、もう一度頭を差し入れる。

採食としては粗い。

食べるというより、奥を探っている。

私はこの動きを見て、礼拝堂裏が単なる餌場ではなく、獲物の潜む空隙を点検する場所として使われているのかもしれないと思った。

その直後、個体は頭を抜き、石縁へ口先を擦るように一度触れた。

棚の接触痕がこうしてできるのなら、昨夜見た筋ともよく合う。


その後の動きは予想外だった。

個体は礼拝堂裏に長居せず、壁沿いに低く走り、石垣の切れ目から下段畑へ抜けたのである。

私はそこではじめて、体の後半を前夜より長く見た。

後肢は前肢より明らかに強く、蹴るためというより、急な石段を安定して下りるための形をしている。

尾は短くはないが、蛇のように這わず、狐のようにも振らない。

重心は終始低いままで、石の多い地面に合った運びだった。

私はそこに、この種が「石のあいだを行く生きもの」であることを強く感じた。

視線や毒の話を差し引いても、村人が石切場と納骨壁を同じ名で呼び続けた理由は、その歩き方自体にあるのかもしれない。


個体はそのまま家畜小屋のほうへ下るかと思われたが、途中で止まり、枯れ帯の端を横切って石切場側へ戻った。

草はやはり折れない。

ただ、通過したあとで先端だけが遅れて沈む。

私はその様子を前夜より落ち着いて見られた。

草を直接食べているわけではない。

口先か、体表か、あるいは吐息のようなものが、上部だけへ働いている。

息という古い伝承がすぐそこにあった。

もっとも、それを「毒息」と書くにはまだ軽率すぎる。

少なくとも現時点では、草の変化は局所的な接触か呼気の影響とする以上のことは言えなかった。


観測を終えたあと、私は礼拝堂裏と石切場下段の線が、今夜の動きで一応つながったことに満足した。

満足といっても、胸のすくような類ではない。

結局、家畜急死の決定的な場面は見ていないし、毒の有無も分からない。

それでも、納骨壁の棚、壁際の擦れ、乾いた接触音、枯れ帯、裂け目の利用が、少なくとも一つの個体候補の行動として無理なく並ぶようになった。

土地の話がやっと一つへまとまり始めたのである。


夜の記録には、こう残した。


**礼拝堂裏の納骨壁と石切場下段とを同一個体候補が往来する可能性が高まった。

納骨棚では小動物の探索行動、石縁への接触、家畜小屋寄りでは地面近くの短距離移動、石切場側では枯れ帯との接触が観察された。

視線作用の真偽はなお不明だが、眼の向きが読みにくいこと自体が人へ強い心理的不快を与える。

古い伝承に見える「息で草を傷める」という要素は、現象の記述としては完全には排除できない。

ただし家畜死との直接因果は、現段階では依然保留する。**


ここまで来れば、サン・ヴェルの記録は、怪物譚としても、自然誌としても、もう少し腰を据えてまとめられるだろうと思えた。

少なくとも、白い石の村で語られてきたバジリスクは、単なる話ではなく、石と空隙と小動物の多い土地へ適応した、かなり実際的な小型捕食者の輪郭を持ち始めていた。


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