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今日は子犬のように構って欲しがるコウとは会わず、独りで昇降口まで来た。金雀児君が上履きに履き替えている最中、ばっちりと目が合ってしまう。此処で何も言わずに立ち去るのも気が引けて、私は口を開く。
「はよ」
「お……おはよ。不知火さん」
金雀児君はそう言うと鞄を抱き抱えてそそくさとその場を去る。
そんな怖がらなくても。しかし無闇やたらに嫌がらせされる程、面倒臭い事では無いので軽くスルー。
私も上履きに履き替えると教室へと向かう。階段を登っている時も、知人には合わなかった。
教室の前。中からは楽しそうな話し声や笑い声が聞こえて来る。それを切り裂くように黙って引き戸を開けた。
──ガラガラ──
案の定、教室の空気が凍り付く。ざっと見回したところ雫も群青も来ていないようだった。それでも対して気にせず自分の席に着くと、教科書やノートを机の中に入れる。
すると珍しい事が起こった。
同じクラスの微笑愛子さん。大きな瞳に髪の左右を一房づつツインテールにしている、マスコットのような愛らしい顔立ちの子だ。情報通で恋バナに聡いと聞いた事がある。そんな彼女が私のいる席まで近づいて来る。そして何故か私に向かって手を合わせ、深々と一連してきた。
……何の儀式だろう……? 変な宗教に勧誘でもされたのだろうか……?
私が訝しんだ顔で見ていると、焦ったように一歩引いた。どうやら怖がらせてしまったようだ。
「お、おお……おはようございます!! 紅葉さ……。不知火さん!!」
そんなに緊張する事でも無いのに激しく気を使って、何だか氷室と話しているようだ。
確かに無愛想で口数も少ないのだが、それが怒っているように見えたり、睨んでいたりするように見えるのだろうか……?
そんな誤解を解くために、口を開く。
「『不知火さん』じゃなくて、『紅葉』でいい」
「なっ……なんと有り難き御言葉……」
怯えられた次は泣かれてしまった。……出来るだけ丸みを帯びた口調で言ったのだが……感受性が豊かなのだろう。……迂闊にも羨ましいなどと思ってしまった。
「で……では『紅葉様』で!!」
「“様”……?」
いやいや……私は『様』などと敬称を付けられる程身分が高い訳では無いのだから、もっと普通に接して欲しい。無駄に気を使われると返って面倒なのだ。
私は欠伸混じりにその言葉を否定することにした。
「『様』って付けられる程偉くも無いのだから、気軽に接してくれていいよ。あと敬語も止めて」
返事がない。瞼を擦り、欠伸から出た涙を拭き取るとまたもや驚愕する出来事が起こっていた。
微笑さんが大きな目を潤ませ、ぼろぼろと涙を落としていた。
え、これって私が“悪いこと”をして泣かせたのか……?
出た、出た、やっと出てくれました!! 愛子ちゃん(●´ω`●)
この子は主人公やったり、サポート役に回ったりする大事な子なのです……!!
でも死ぬまでに書けるだろうか……(汗)
長生きしたい……!!




