序章
僕の家は格別に裕福ではないが、貧しいわけでもない。父は中堅企業の役員であり、そこそこは豊かであった。
母は主婦であり、年齢よりも多少若く見られることがある程度だ。
親族達もそこそこの人間たちであり、個人的には充実していたと思う。
隣の一戸建てには幼馴染が居て、その子とは仲が良かった。
当然というか、家族ぐるみの付き合いもあり、親同士ではあるが将来を期待されていた。
当時は少し変わった性格や考えだった僕を、両親は変えようとした結果だと思う。
僕とて男だ。彼女のことは気になっていたし、異性とも見ていた。
少なくとも好意は持っていたと思う。
そんな緩やかな日々を送っていたが、終わりは突然だった。
忘れもしないあの日。梅雨に入ろうとしていた時期だ。
”自分のクラスに転校生がやってくる”
僕にはあまり関係ない、と思っていた。なぜなら後半年ほどで卒業だ。
関わったところで、別の学校に行くだろうし、同じ学校ならその時話せばいい。
その程度にしか考えていなかった。
今考えると危機管理出来てなかったと思うが、今では好都合だ。
三隈 昴
ヤツはすぐにクラスへと馴染んでいった。それもそうだろう。
顔は良いし、勉強もスポーツも出来る。性格も優しいという。大抵の女の子は靡くだろうし、男も付き合い易いだろうと思う。
そんな考えもたった1日で吹き飛んだ。
「昴君の前で気安く話しかけないで。昴君にあんたと私が付き合ってるって勘違いされたらどうするのよ!!」
幼馴染である絵美はたった数日で自分を嫌った。ヤツに好いてもらうために。
ショックは大きかったが、僕は絵美を諦めた。
だがヤツは色々な女の子に言い寄られるも、持ち前の鈍感力でハーレムを形成していった。
自分は何のために引いたのだろう?
ヤツが憎い
憎い
逆恨みじゃないのか?
自分に魅力がないから絵美は離れたんじゃないか?
その通りだ。
それでも…………
それでもヤツを…………
虫ケラの様に壊してやりたい。
鈍感ハーレムってやつを壊してみたい。