第六話 配信デビュー
ギルドの売店で購入した小型カメラを起動する。ぽわん、と控えめな起動音が鳴った。
「映ってる?」
カメラを構えた雷華が、こてんと首を傾げる。配信用アカウントからテスト配信画面を立ち上げた。
「おー、オッケーっぽい」
「了解!」
目の前でカメラを構える雷華と、画面の向こうで同じように手を振る雷華。
わずかな遅延を挟んで動きをなぞるその姿は、どこか不思議な光景だった。
「おい、あの式神使い配信するつもりか?」
「まじかよ? 自ら恥晒しじゃん。女に護られてるところ配信すんのかよ。ダサっ」
クスクスと笑う声が後ろからするが、今の俺には負け犬の遠吠えくらいにしか思えない。
「ねぇ蒼真、言われてるよ。いいの?」
「あ? ほっとけ。あんな雑魚」
「なんだってオラァ⁉︎」
俺の声が聞こえたのか、男たちが凄んでくる。だが「は? なに?」と俺がひと睨みすると男たちは貝のように口を閉じた。
俺が去った後、「おい、なんで動かなかったんだよ」「お前が行けばよかっただろ」とこそこそ話す声が聞こえたが、奴らが動ける訳がない。
ここで群れてる奴らなんて所詮は低レベル。
霊力を極めた俺の圧に勝てる訳がない。
「いくぞ。雷華、風華」
「はーい」
「うん」
雷華は奴らにしっかり舌を出してからやって来て、「下手に喧嘩売るな」と俺は頭を軽くはたいた。
「先に喧嘩売ったのは蒼真じゃん」と膨れていたが、「俺は馬鹿にされたから言い返しただけ」と返すと「屁理屈だ!」と雷華は唇を突き出していた。
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「あーあーあー、どうもこんにちは。式神使いの安倍 蒼真です」
赤いランプが灯ったカメラに向かって口を開く。レンズを風華と雷華へ向けた。
「雷神の雷華でーす!」
「風神の風華です」
雷華は元気よくピースサインを決め、風華は名前だけ名乗ると、軽く頭を下げた。
「今日が初配信という事で。慣らしのために一階層でお試し配信をしたいと思います。明日以降は二階層に降りていきますので、良ければチャンネル登録宜しくお願いします!」
俺が配信を始めると、早速『式神使いの配信ってここ?』『女の子に守られる男がいると聞いて』『ママのところ帰った方がいいんじゃないのーww』というコメントが流れ出した。
「うむうむ。掴みは上出来だね」
俺が満足げに笑うと、『こいつ悪口言われて満足してるの草』『さすが式神使い、メンタル強すぎ』というコメントが目についた。
「ねぇねぇ、蒼真なんか慣れてない?」
「知らない」
雷華たちが後ろでヒソヒソ話をしているが、ダンジョンレベルの上がった俺にはしっかりと聞こえている。
昨晩、睡眠時間返上でイメトレしたんだから初めの挨拶は完璧。
俺は考えた。式神使いの俺が配信をすれば否が応でも話題には登るだろう。悪い意味であっても。つまり、評価を覆すのにはもってこいという事で。
「順調だな」
ニヤニヤと画面を眺めていると、雷華たちはそろって一歩引いたような顔をしていた。
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「雷華、行くよ」
「私、左ねー」
「オッケー」
雷華と風華がゴブリンをサクサクと蹴散らしていく。その姿を逃さないようカメラを向けた。
俺は時たまやってくるゴブリンを殴りつけたり、護符を飛ばしたりする程度だ。
俺はまだ目立たなくていい。雷華たちが目立てば自然と注目される。俺が目立つのはそれからだ。
そして、式神の手柄は俺の手柄。
世の探索者よ、最弱と罵ってきた"式神使い"を思う存分羨ましがるといい!
俺は心の中で高笑いをしながら、カメラを回し続ける。
『雷神強すぎない?』『風華ちゃん、クールビューティーで魔法少女みたい』『雷が洞窟に映えて綺麗』『んで、術者はなにしてんの?』
俺の手のひらの上で視聴者は踊り、面白いほど予想どおりのコメントが次々と流れていく。
画面を埋め尽くす反応を見ながら、俺はニヤリと笑った。
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【速報】式神使いが配信デビュー
1:名無しの探索者
【速報】式神使いが美少女を侍らせてダンジョン配信デビューした件について
2:名無しの探索者
誰かこいつの情報募
3:名無しの探索者
式神使いの旧家、安倍家の長男
安倍 蒼真、高校卒業したばっか
小中高ぼっちだった、ソース 同級生
4:名無しの探索者
式神使い草ww
5:名無しの探索者
女の子二人、馬鹿強い件について。
ゴブリン瞬殺じゃん
6:名無しの探索者
式神使いwwwあの日本の恥??
7:名無しの探索者
>>6
その日本の恥、さっきゴブリンを素手でやってたぞ
8:名無しの探索者
ファッ!?
9:名無しの探索者
>>7
女の子は式神だから分かるとして、術者は人間だろ? そんな訳……まじじゃんww
10:名無しの探索者
とりあえず風神雷神が可愛すぎる。雷華ちゃんの巫女服が良い。
11:名無しの探索者
ってか、なんで低レベルの人間が神を使役できてんの? 誰か突っ込めよ。




