第五話 探索者の目的
「あのさ、蒼真ってなんでダンジョンに潜ってるの?」
晩御飯を食べ終わり、俺が自室で護符を作っている時だった。
俺のスマホを見ながら、ベッドで足をバタバタさせている雷華が話しかけてきた。
ちなみに、護符を作る紙は専用のものがいるのだが、俺の場合は自分の霊力をメモ紙にこめることで代用している。俺は節約上手なのだ。
「俺?式神使いの地位向上」
「へー。意外にまとも」
「っていうのもそうだけど、今まで親父や俺たちを馬鹿にして来た奴らを見返したいだけ」
当たり前だ。そんな綺麗事だけで頑張れるわけがない。俺はギャフンと言わせないだけだ。それにお金や名誉がついて来たらもっといいな、くらいで。
「ふーん。じゃ、なんでこれしないの?」
「これって?」
雷華が指差した先には、俺のスマホ。映ってるのはダンジョン配信。
ダンジョン内では何故か潜っていっても電波が通じるのだ。そのことが分かってからは、ダンジョン配信者が急増していた。
「式神使いなんて見るやつ居ねーだろ?馬鹿にされるだけじゃん。それならランク上げた方が堅実」
「そうかなー? 私と風華だよ? こんな子たちよりよっぽど私たちの方が可愛いよ?」
雷華の示したスマホには、最近人気の配信者が映っていた。可愛いと人気の彼女たちだが、確かに雷華たちの方が可愛い。
「自分で言うのかよ」
「えー。だってそうじゃん? ねー? 風華?」
「興味ない」
パラパラと漫画をめくっている風華は、雷華が見せた画面をチラリと見ると、また視線を本へと落とした。
「うーん。配信なぁ」
「ねー、やろー?」
「なんかやけに乗る気じゃない?」
「目立ちたいもーん」
「なんだそれ……」
雷華が言うことは一理ある。今のダンジョン探索者のレベルは高い。追いつく自信はあるが、すぐにというわけにはいかないだろう。
何をするにも入り用だし、収入源は多いほどいい……か?
「機材ってどのくらいかかるのかな?」
「お、やる気になった?」
「んー。調べてみるだけ」
一旦筆を置き、タブレットを起動する。
調べてみると、意外にもお手軽価格で売っていることが分かった。しかもギルドの売店でも取り扱っているらしい。
「んー。今日の報酬で最低限ならいけるか?」
「カメラぐらいでいいんじゃない?蒼真持ってよ!私と風華を可愛く撮ってね!」
「風華はいいの?配信とか」
雷華はノリノリだが、風華はどうなんだ?
そう思って尋ねると、
「蒼真が追加で報酬くれるならいいよ」
「えー、なら私も!」
「雷華はやりたいんでしょ? だからダメ」
という答えが返ってくる。俺の霊力でいいなら安いくらいだ。いくらでも湧いてくるし。
「じゃ、明日買ってから潜るか」
「やったー! 楽しみ!」
「じゃ、明日も一階層な? 流石に機材に慣れるまで降りるのは不安すぎる」
「ええー」
「えー、じゃない!」
俺らがギャーギャー騒いでいると、「蒼真ー! そろそろ寝なさいよ! 明日も潜るんでしょ! 雷華ちゃんたちもそろそろ自分の部屋に帰りなさいねー!」と母親の声が聞こえて来た。
「はーい!」
雷華が返事をして、「んじゃ、寝るね!」と言って立ち上がる。「おやすみー」と手を振りながら部屋を出ていった。
「蒼真」
すっと近づいて来た風華の頭を撫でると、「ん、ありがと」と言って風華も部屋を出ていった。
「意外と風華の方が甘えたがりだと思うんだよなー」
誰に言うわけでもなく発した言葉に、返事があるはずもなく。
「俺もさっさと護符作って寝よ。あ、でも配信用のアカウント作ってから寝ないとか」
やる事は山積みだ。早く寝たいのに。
チクタクと針が進む音が無音の部屋に響き渡る。さっきまで賑やかだった部屋が一気に静まり返り、なんだか妙に寂しくなった。




