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EP 7

「ガラクタの山から『神殺し』をビルドしてみた 〜管理者、再降臨〜」

「……よし、これならいける。いけるよ、ボス!」

 荒野の中心。数百万の民衆が持ち寄った、文字通りの『ガラクタの山』。

 折れた剣、荷馬車の車輪、帝国の魔導バギーのエンジン、そして大量のポーションの空き瓶。

 ジゼルは泥だらけの顔を袖で乱暴に拭うと、その瞳に「天才メカニック」としての狂気と理性を宿らせ、凄まじい速度でパーツを組み合わせ始めた。

「ゼロの野郎の防御力は、システム上の『絶対(Error)』に設定されてる。つまり、この世界の魔法や武器のデータ(上限9,999)じゃ、どう計算してもダメージが通らない」

 ジゼルはバギーのエンジンに銅線を巻き付けながら、早口で解説する。

「なら、どうする? 答えは簡単だ。システムが『武器』として認識できない、ただの『物理的な過負荷バグ』をぶつければいいんだよ!」

「つまり、どういうことですか?」

 ポーションを飲んで体力を回復したリズが、小首を傾げる。

「アンタが、この規格外に重い『鉄クズの塊』を、アンタ自身の本能アナログの力だけで、あいつの顔面に叩き込むってことさ!」

 ジゼルが完成させたのは、美しい魔導武器などではなかった。

 数千本の剣と鉄塊をバギーのエンジンで強引に束ね、超高圧縮のポーション液を爆発の推進剤として仕込んだ、見た目も最悪な『超巨大な鉄のハンマー(質量兵器)』だった。

【アイテム名:名称未設定(システム非承認オブジェクト)】

【攻撃力:算出不可】

「……ははっ、最高に悪趣味な武器だ」

 俺は血だらけの包帯を巻き直しながら、満足げに笑った。

「ショップ(チート)で買ったどんな綺麗な剣より、数百万人の『想い(スパチャ)』が詰まったこの鉄クズの方が、よっぽど神様を殴るのに相応しい」

「ボス! 私、絶対にあいつをぶっ飛ばします! ボスのサテライトを壊したこと、後悔させてやりますから!」

 リズが自分の身の丈の三倍はあるその『鉄塊ハンマー』を、ギリッと音を立てて持ち上げた。S級魔獣の筋力が、ミシミシと悲鳴を上げるほどの超重量だ。

「ああ、頼んだぜ。……さて、王都と帝国の視聴者諸君」

 俺は、俺たちを取り囲んで固唾を呑んで見守っている数百万の民衆に向かって、声を張り上げた。

「これ以上は、システム(神様)のガチギレに巻き込まれちまう。お前らは安全な距離まで下がって、特等席で見ててくれ。……ここから先は、俺たち『シャドウ・ハウス』の仕事(本配信)だ!」

「おう!! 頼んだぜ、アノニマス!」

「俺たちのぶんまで殴ってくれ!!」

 大歓声と共に、民衆の波が潮が引くように後退していく。

 彼らが見えなくなるほど距離を取った、その直後だった。

 ピィィィィィィン……ッ。

 荒野の空間が、不気味な高周波と共に歪んだ。

 空に赤いノイズが走り、空間がガラスのようにひび割れる。

 その亀裂の中から、真っ白なスーツを着た銀髪の男――管理者『ゼロ』が、音もなく空中に降り立った。

「……おかしいな。大気圏での消去デリートに失敗したバグが、三つも残っている」

 ゼロは、感情の読めない冷たい瞳で俺たちを見下ろした。

「まだ生きていたのか。それに、あの遠くの群衆はなんだ? システムに干渉できないNPCどもが、徒党を組んで何を企んでいる?」

「ただのオーディエンス(観客)さ」

 俺は瓦礫の杖をつきながら、一歩前に出た。

「お前みたいな『引きこもりの管理者』には分からないだろうがな。配信ってのは、見てくれる奴がいるから成り立つんだよ」

「くだらない。アカウントを凍結され、すべてのリソースを失った君に、何ができるというんだ?」

 ゼロが指先を軽く振るう。

 それだけで、周囲の重力が異常に重くなり、岩がボロボロと崩れ始めた。空間そのものを操作する、絶対的な管理者権限。

「チートがなくても、俺には最高の相棒と、リスナーから貰った『物理スパチャ』がある」

 俺の合図と共に、ジゼルがエンジンの点火スイッチを起動する。

 キュィィィィィンッ!!

 リズが構えた『巨大な鉄塊ハンマー』の推進器が、火を噴いて暴れ出した。

「な、なんだその汚い鉄クズは……システムにデータが存在しないぞ!?」

 ゼロの表情に、初めて『戸惑い』が生まれた。

「データがないなら、エラーも起きねえだろ?」

 俺は、血まみれの顔で、最高に歪んだ笑みを浮かべた。

「さあ、アカウントBANの異議申し立て(レスバ)の時間だ。……お前のそのふざけた『絶対防御』、俺たちのアナログな暴力でぶち抜いてやるよ!」

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