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EP 3

「S級美女(予定)と、500万エールの豪遊」

 王都の一角にある、最高級宿『白の月』。

 その最上階、一泊20万エールのスイートルーム。

 ふかふかの絨毯じゅうたんの上で、俺は呆然としていた。

「……食うなぁ」

 目の前のテーブルには、空になった皿が山のように積まれている。

 極厚ステーキ、伊勢海老のグリル、最高級フルーツの盛り合わせ。

 総額で30万エールは下らない料理を、あの獣人の少女がブラックホールのように吸い込んでいた。

「んぐっ、むぐ……おいひぃ……!」

 少女は涙目で肉にかぶりついている。

 シャワーを浴びさせ、宿で買った高級な絹のローブを着せた彼女は、見違えるほど綺麗だった。

 銀色の髪に、透き通るような肌。そして頭には、ふさふさの狼の耳。

 奴隷商人の檻にいた時はわからなかったが、素材はS級――いや、国宝級の美少女だ。

「遠慮すんな。金なら腐るほどある」

 俺はインベントリから、奪った金貨袋をジャラジャラと積み上げた。

 少女の手が止まる。

「……あ、あの。本当にいいの? 私みたいな奴隷に、こんな……」

「お前はもう奴隷じゃない。俺の『共犯者』だ」

 俺はワイングラス(中身は高級ブドウジュース)を揺らしながら言った。

「俺はこれから、この国中の悪党から搾り取って生きていく。一人じゃ手が足りない。お前には、その手伝いをしてもらう」

「共犯者……」

 少女は呟き、フォークを置いた。

 そして、居住まいを正し、真剣な眼差しで俺を見る。

「私、戦えます」

「え?」

「奴隷になる前は、山で魔獣を狩ってました。首輪のせいで力が出なかったけど……今は、力が溢れてくるんです」

 俺は『遠隔視スペクテイター』の解析モードを発動し、彼女のステータスを覗いてみた。

【名前:リズ(狼人族)】

【職業:狂戦士バーサーカー

【筋力:A+ 敏捷:S 魔力:E】

【スキル:神速、野生の勘、捕食者】

【状態:満腹(全ステータス200%UP中)】

「……マジかよ」

 俺は絶句した。

 勇者グレンですら筋力はAだった。敏捷Sなんて、見たこともない。

 どうやら俺は、とんでもない「掘り出し物」を拾ってしまったらしい。

 しかも「満腹だと強くなる」って、燃費の悪いスーパーカーかよ。

「カナタ様。私に名前をください。あと、これからは『あるじ』って呼んでいいですか?」

「主はやめろ。……名前か。『リズ』はどうだ?」

「リズ……。うん、いい名前。じゃあ、カナタ様は私のボスですね」

 リズは嬉しそうに尻尾をブンブン振った。

 風圧で空の皿が飛びそうだ。

「よし、リズ。契約成立だ。まずは装備を整えるぞ」

 俺は空中にウィンドウを展開した。

 先ほどの配信で開放された新機能――**【配信者ショップ(スパチャ交換所)】**だ。

 ここでは、稼いだポイント(スパチャ)を使って、通常では手に入らないレアアイテムを購入できる。

 俺はリストをスクロールし、一つの商品で指を止めた。

【隠密の外套ステルス・コート:100,000pt】

【効果:認識阻害、魔法防御大】

 さらに、リズ用にもう一つ。

【月狼のガントレット:350,000pt】

【効果:素手攻撃力5倍、爪に魔力を纏わせる】

「うわ、高っ……でも今の俺なら余裕だ」

 迷わず購入ボタンを連打。

 光と共に、漆黒のコートと、銀色に輝く籠手が実体化する。

 リズに籠手を渡すと、彼女は目を輝かせて装着した。

「すごい……! これなら、鉄でも紙みたいに切れます!」

「試し斬りは明日にしろよ。この宿壊したら弁償だからな」

 俺はコートを羽織り、鏡を見た。

 黒尽くめの姿。顔には道化の仮面。

 完全に「悪の組織の幹部」だが、不思議と似合っている。

「さて、リズ。準備運動は終わりだ」

 俺は窓の外、王都の煌めきを見下ろした。

 端末スマホを取り出し、SNSアプリを開く。

 トレンド1位は**『#アノニマス』。2位は『#騎士団長賄賂』**。

 世間は大騒ぎだ。

「次のターゲットを決める。……こいつなんてどうだ?」

 俺は、ある「有名人」のプロフィール画面をリズに見せた。

 そこには、俺を追放した元パーティのスポンサーであり、王都の裏社会を牛耳る『闇カジノの元締め』の顔写真があった。

「S級パーティ『王の剣』の資金源だ。こいつの金を根こそぎ奪えば、あいつらも干上がる」

「……悪い奴ですか?」

「ああ。借金漬けにした人間を魔物の餌にしてるようなクズだ」

「なら、食べちゃいましょう」

 リズはニカっと笑った。

 無邪気な笑顔だが、その瞳の奥には、猛獣の光が宿っている。

 頼もしい相棒(狂犬)も手に入った。

 資金も装備も十分。

 俺たちの『快進撃(炎上配信)』は、ここからが本番だ。

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