表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/30

朱都-6

翌朝、既に習慣となりつつある剣の訓練のため宿を出ると、ゲイルと共に何故かクロウが待っていた


おは(Good )よう(morning)拓真君(ミスター・ホヅミ)

今日は少しやり方を変えてみようと思ってね・・・ああ、心配は要らないよ

もう話は通してある」



そのまま何もなかったかのように道場に向かい、いつものようにウォーミングと素振りを行う


そして拓真とニック以外のメンバーが素振りを終え、打ち込みを始めた辺りで道場の壁際にいたクロウに呼ばれた


「とりあえずこれを持ってもう一度素振りしてみようか

ああ、持てば気付くと思うけど中に(おもり)が入っているから自分の足に当てて骨を折らないように」


渡されたのは木剣と言うには細すぎる上に湾曲しており、刃に見立てた傾きが片側にしかないもの・・・つまり木刀である


持ってみると多少の重さは感じるのだが、種類によっては分厚い上に硬くなる魔獣を斬ることを考慮した幅広の剣ほどではない

それどころか、それまで持っていた木剣ですらそこそこ重かったのでかなり軽く感じる訳である


「それともう一つ、実物は上手く扱わないとすぐに斬れなくなったり折れたりするから気をつけるように

・・・そうだね、基本は包丁みたいに真っ直ぐ手前に引きながら斬る、みたいなイメージかな」


伝えられたイメージの通りに素振りを始め・・・ようとした時、ふと気になってジェフの方を見る

どうやらジェフはずっと此方を見ていたらしく、「気にするな」とだけ返してきたので視線を戻しそのまま暫く教えられたとおりに木刀を振り続ける




昼休憩の後のウォーミングを行い、再び素振りを始めようとしたところでクロウが何の前振りもなく鞘に収まったままに見える刀を取り出し・・・しばらくはこれで練習するといい、という言葉と共に刀を渡される


拓真に渡した刀の鞘は特別製で、そもそも使用者が魔力を込めながら念じなければ外れない構造になっている為そのままでも安心して振れる、とのこと

その言葉通り確かに振っても鞘が抜けると言うことはなかったのだが・・・いざ振ってみると途中から妙に重くなる


感覚としては錘入りの木剣どころか実戦用の両刃剣並で、明らかに長さと太さに合っていない


表情からそれを読み取ったのか

「ああ、言い忘れてたかな

その鞘は魔法制御式の錘の機能も持っていて、素振りに使うと斬ったときの抵抗をある程度再現してくれるようになっている」

とあまり欲しくなかった内容の解説をしてくれた


そこで文句を言ったところで何も始まらないのでそのまま夕方まで素振りを続け、魔法の講義を受けないままその日の練習は終わりになった




翌日以降はまた2日目からと同じように朝から昼まで剣、その後は夕方まで魔法というパターンになったのだが、一つだけ変わった点があり


「・・・私が教えたからといって魔力量が増えたり制御能力が格段に向上するという保証はありませんよ?」

「構いません、少しでも技術が上乗せできればいいんです」


ジェフの道場でクロウの話を聞いたニックが興味を持ったらしく、結果講義の受講者が増えた


まずは新規受講者の魔法能力がどれほどかを見る必要がある、と言って案内されたのはいつもの部屋・・・ではなく敷地の外、具体的に言えば朱都の塀の外である


「とりあえず得意な魔法から使ってもらおうか

それ以外は得意なものを見てから判断する・・・因みに(ターゲット)は必要かい?」


ニックは首肯し、同時に術の構築を始めたらしい・・・が、目立った変化は見られない

前方には既に土が盛り上がり、色を除けば鎧を着た人間が立っているように見える的ができあがっていた


行きます、の合図と共に右手を握ったまま腰の近くに構えて―――分かりやすい『溜め』のポーズである―――的に向かって駆け出す


「唸れ、風衝拳(ストームフィスト)!!」

その言葉と共に叩き付けられた拳は的の上半分を豪快に吹き飛ばした


「強化魔法を併用しない純粋な風属性の術か・・・ああ、でも使い方を見ると付与系のかな?

ついでにタクマのも見てみようか、的は新しく用意してある」


ニックの術を見て納得した(おわり)かと思っていたら予想外の方向から弾が飛んできた、それが拓真の心境である

・・・しかも、ニックから微妙に期待の眼差しを向けられていて非常にやりづらい


仕方が無いので、自分で考え抜いた上で出来上がった『改良型』の披露を決心する


「対象は1つだから狭い範囲に集中させて・・・行きます、『落雷(ライトニング)』!」

独り言のように呟きながら魔力を練り上げて術を構築した、というより現象の原因をイメージしただけなのだが、『雷雲招来』とは異なる単発のものを放つことに成功する



ただし、雷雲招来も落雷も純粋な魔法現象ではなく『魔法の力を使って起こした自然現象』な為に見た目も音も雷そのものであり

・・・至近距離で衝撃波そのものな轟音を聞くことになったニックは両耳を押さえてのたうち回る目に遭っている


的の方はというと想像に難くなく、元々そこになかったかのように(実際、元々そこにはなかったのだが)跡形もなく吹き飛んでいた


「間近で見ると凄まじいね・・・ただ発動までの時間の長さと変換ロスの大きさが気になるかな

尤も、私が改良しようにもすぐに出来るというわけではないのが一番の問題だね」


その後ニックは変換効率を改良した術式を魔力切れ寸前になるまで連発させる事で魔力量の増強を図る事となり、拓真の方はといえば・・・何故か抜刀を指示されていた

それも木剣や木刀ではなく昨日渡された刀の方を、である


曰く、鞘が特別製なら刀身そのものも特別製で魔力を特に通しやすい部材が鋳込まれているものなのだとか

同時にその部材の特性故単純に魔力を流し込んだだけで折れにくく欠けにくい上によく斬れる・・・らしい


因みに空間魔法の中に鞘を残したまま抜刀する為に開発した魔法が『|剣を我が手に《サモンアームズ:ソード》』というのは昨日刀を受け取った時点で既に聞いている

同時に刀を1本譲る、ということも



鞘から引き抜いた刀を構え、クロウの術で多数作られた的に相対する

刀の扱いに慣れていないにも関わらず魔力を流さずに斬ろうとすると刀身へのダメージが大きすぎると言われているため、既に刀身には魔力が満ちた状態になっている


指示通りそのまま近い位置にある的を直接斬り、遠くの的へは振った刀から魔力の刃を飛ばすことで切断する技を使う


拓真に関してはそもそも使っている魔法の構築方式が違いすぎるためか、一般的な術やその改良版を教えられることがあまりない

その代わりなのか、やや特殊な術を教えるなどして使わせることで魔力量を増やす訓練をしていた、というのが後になってから気付いたことである

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ