↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄騎士物語 ―落ちこぼれ王女と魔法を使えない少年―  作者: kyuto
第3話 ランキング戦に向けて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

二人の師匠探し(前編)

 翌日。


 授業が終わると、ルイは優斗のいる教室へと足早に向かった。


 教室を覗くと、優斗がルーナと何やら話し込んでいる。


「お、ルイちゃんじゃん。誰かに用事? ルーナ?」


 近くにいた上級生が声をかけてきた。


「こ、こんにちは。あ、いや、優斗に……」


 突然声をかけられ、ルイは少し緊張しながら答えた。


「あ、そっか! 待ってて! おーい、優斗! 可愛いパートナーが来てるぞー!」


「なんだ、その言い方……。ありがとう!」


 優斗が振り返り、ルイの姿に気づく。


「ルイ! ちょっと来て!」


「え?」


 ルイは首を傾げながら、優斗とルーナのもとへ向かった。


「なぁに?」


「さっきルーナと話してたんだけど、お前の魔法の先生になってくれないかって」


「え? 優斗もそう考えてたの?」


「『も』? ってことは、お前も?」


「うん。だから優斗の教室に来たの」


 ルイはルーナへ向き直った。


「お姉ちゃん、私の先生になってほしいの!」


「ルイと優斗の頼みだからね。一肌脱ぎます! ……って言いたいところだけど」


 ルーナは少し考えるように首を傾げた。


「私よりもっと適任がいると思うから、その人にお願いした方がいいと思うよ」


「お前より適任って?」


「姉さんか、姉さんのサーバントのアイクかな」


「ルミナお姉ちゃんも、お願いしたら教えてくれそう! でも、アイクとはしばらく会ってないし、いつもどこにいるか分からないんだよね」


「ルミナさん、そんなに凄いのか! で、アイクってサーバント、何者なんだ?」


「端的に言うと、魔法の天才だよ。恐らく、この国で一番の魔法使いじゃないかな?」


「誰かな? 僕の噂をしてるのは?」


 そのとき、廊下から男にしては少し高い声が聞こえてきた。


「あっ! アイク!」


 ルイが声の主に向かって手を振る。


「やあ、ルイちゃん、ルーナ。元気かい? そちらはルイちゃんのサーバントだね」


 現れたのは、緑色のウィザードハットを被り、薄汚れた緑色のローブを身にまとった男だった。


 いかにも胡散臭い格好だが、顔立ちは驚くほど整っている。


 身長は百八十センチほど。中性的な美貌の持ち主で、女性だと言われても違和感がないほどだった。


「紹介するね! 私のサーバントの優斗!」


「平賀優斗です。よろしくお願いします」


「ハヤトから聞いてるよ。入学式を荒らした問題児だって」


 アイクはニヤニヤと笑いながら言った。


「なっ!?」


「うそうそ、冗談だよ。僕はアイク=シュースティン。ルミナのサーバントだよ。よろしくね」


 そう言って、アイクは右手を差し出した。


 優斗は少し戸惑いながらも、その手を握った。


「ねえ、アイク。ルイの魔法の先生になってくれない?」


 ルーナが話を切り出した。


「ルイもランキング戦に出るつもりで、魔法の特訓をしたいんだけど、先生がいなくてさ」


「おお! ルイちゃんも出るんだ! マッチアップしたら手加減しないよ!」


「あはは……お手柔らかに……」


 ルイは苦笑いを浮かべた。


「教えたいのは山々なんだけど、僕も忙しくてね〜。ルミナには聞いてみた?」


「ううん、まだ」


「じゃあ聞いてみなよ。引き受けてくれると思うよ。ルイちゃんの頼みなら」


「ほんと!? じゃあ聞いてみよう!」


「そうね。アイク、お姉ちゃんがどこにいるか知ってる?」


「いや、見てないよ。この時間に何してるか、予想もつかないしね〜」


「そっか。じゃあ、ハヤト兄のところに行くついでに探してみよう」


「そうだな。それがいい」


「うん! ありがとう、アイク!」


「お役に立てなくてごめんね。気をつけて〜」


 三人はアイクに別れを告げ、ルミナを探しに向かった。


     ◇ ◇ ◇


「なんか、アイクって不思議なやつだな」


 廊下を歩きながら、優斗が呟いた。


「まあ、ちょっと適当な感じだけど、ランキング戦になるとやばいよ?」


「どうやばいんだ?」


「お姉ちゃんもかなり強いけど、アイクは別格。誰も太刀打ちできなくて、されるがままって感じ。唯一、ハヤト兄はアイクに勝ってるけど」


「その話聞くと、ハヤトさんの方がやばそうだけどな」


「確かに!」


 ルーナは苦笑いを浮かべた。


「でも、ルミナお姉ちゃんもすごいよね! 異名があるんだよ!」


 今度はルイが嬉しそうに話し始める。


「異名? なんだそれ?」


「うーんとね、確か……」


「『雷光の女神』、ではありませんでしたか?」


 不意に、曲がり角の向こうから女性の声が聞こえてきた。


「あっ、お姉ちゃんだ!」


「あら、ご機嫌よう。ルーナ、ルイちゃん」


「お姉ちゃん!」


 ルイは嬉しそうに駆け寄り、その女性に抱きついた。


 一方、優斗は思わず息を呑んだ。


(……すげぇ)


 目の前にいる女性は、まるで女神がそのまま人の姿になったかのような美しさだった。


 整った顔立ちに、落ち着いた立ち居振る舞い。


 その優雅な雰囲気に、優斗は思わず見とれてしまった。


「あら、優斗さん。ご無沙汰しております」


 女性は優斗へ微笑みかけた。


「改めまして、ルミナ=アルベルト=フローレスです。ルイのサーバントになってくださり、ありがとうございます」


 そう言って、握手を求めてくる。


「え、ああ。いえ! こちらこそ、いつもルイにはお世話になってます。平賀優斗です。よろしくお願いします」


 優斗は少し照れながら、その手を握った。


「…………」


 ふと気づくと、ルーナとルイが揃ってこちらを見つめていた。


「な、なんだよ、お前たち」


「別に〜?」


「なんか、私のときと違う……」


「そ、そんなことないだろう」


「ウフフ。面白い人ですね」


 ルミナが口元に手を添えて笑った。


「あはは……。それより、『雷光の女神』ってなんですか?」


「ああ、それですか」


 ルミナは困ったように微笑んだ。


「私、雷魔法が得意なんですけど、みんなが勝手につけた異名でして。私はあまり好きではないんですよね」


「へぇ、そうなんですね」


「なので、私の前でその名を言いましたら……分かっていますよね?」


 にっこり。


 確かに笑っている。


 しかし、その目はまったく笑っていなかった。


「こ、心得ました……」


(どちらかと言えば、氷の女神じゃね……?)


 優斗は心の中で呟いた。


「それより、お姉ちゃん!」


 ルイが勢いよく顔を上げる。


「私の魔法の先生になってほしいの!」


「あら、急にどうしたの?」


「色々あって、ランキング戦に出ようと思ってるんだってさ」


 ルーナが事情を説明する。


「それで、実戦的な魔法を学びたくて、私たちを頼ってるってわけ」


「そうなの。アイクには頼んでみた?」


「アイクは忙しくて無理だって言ってた。ルミナお姉ちゃんにも頼んでみたらって言われて、探してたの」


「ルミナさんが嫌でなければ、俺からもお願いします!」


 優斗も深々と頭を下げた。


 ルミナは二人を見つめ、少し考えるような素振りを見せた。


「そうだったの。毎日は難しいかもしれないけど、空いているときだったら大丈夫よ」


「ほんと!? ありがとう、お姉ちゃん!」


 ルイは満面の笑みを浮かべ、再びルミナに抱きついた。


「姉さん、ありがとう!」


「いいのよ。それに、私が忙しい日は……」


 ルミナは優雅に微笑んだ。


「アイクに無理やり行かせるわ」


 その瞬間、目つきが鋭くなったような気がした。


(……アイク、大丈夫か?)


 優斗は先ほどの飄々とした男の顔を思い浮かべた。


「ありがとうございます!」


 それでも、ルイの嬉しそうな顔を見て、優斗はほっと胸を撫で下ろした。


 これで、ルイの魔法の先生は見つかった。


 残るは、自分の剣術の先生だけだ。


 そして優斗は、まだ知らなかった。


 その相手から教えを受けることが、どれほど難しいことなのかを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。