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捨てられた少女は、黒竜王の娘となる!?  作者: Atelier Lotus


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第89話 人間の答え

 私は男へ告げた。


「もう終わりだ」


「お前に妖精は見えない」


「竜影流は習得できぬ」


 男は静かに俯いた。


 それでも。


 その瞳から光が消えることはなかった。


「……まだです」


 私は眉をひそめる。


「何だと」


 男は静かに木剣を握り締める。


「確かに私は妖精を見ることはできません」


「魔法の才能もありません」


「だから竜影流には届きませんでした」


 一度言葉を切る。


 そして、ゆっくりと顔を上げる。


「ですが」


「人間には、人間の戦い方があります」


 私は黙って続きを待った。


 男は地面へ一本の線を描きながら語る。


「魔法とは」


「魔素の中に存在する魔粒子を操る技術です」


「ならば」


「魔粒子を操れないのなら」


「魔素そのものを魔力へ変換すればいい」


 私は目を見開いた。


 そんな発想は。


 これまで誰一人として考えたことがなかった。


 男は続ける。


「生み出した魔力を全身へ巡らせる」


「肉体そのものを強化する」


「その力で剣を振るう」


 私は思わず声を荒げた。


「馬鹿な!」


「そんなことをすれば死ぬぞ!」


「仮に死なずとも、魔素暴走を起こす!」


「全身を魔素に侵され、魔物へ成り果てるだけだ!」


 男は静かに笑った。


「だから鍛えるんです」


「死なない身体になるまで」


 その言葉に。


 私は絶句した。


 その日から。


 男は竜影流ではなく。


 己だけの剣を磨き始めた。


 何度も倒れ。


 何度も血を吐き。


 何度も魔素暴走の危機へ陥りながら。


 それでも立ち上がる。


 魔素を魔力へ変換し。


 全身へ巡らせる。


 肉体を極限まで鍛え上げ。


 その力を剣へ乗せる。


 やがて。


 暗黒魔力による肉体強化。


 暗黒剣。


 暗黒魔剣。


 一つの戦闘体系が完成した。


 後に。


 人間たちは、その流派をこう呼ぶ。


 ――魔剣流。


 私は静かに目を閉じた。


 竜影流には届かなかった。


 妖精誘導法を習得することもできなかった。


 しかし。


 人間は諦めなかった。


 届かないのなら。


 自ら新たな道を切り開いた。


 それが。


 人間という種族の強さだった。


 私は男へ敬意を込め、静かに微笑む。


「竜影流には届かなかった」


「しかし」


「人間は、人間だけの答えへ辿り着いた」

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