第6話 不可侵・不干渉
魔王戦争は終わった。
千年に及ぶ暗黒の時代は幕を閉じ、世界にはようやく平和が訪れる。
だが、人々の心に刻まれた恐怖まで消えることはなかった。
ある国は、魔法を希望とした。
魔法石技術を発展させ、人々の暮らしを豊かにしていく。
またある国は、魔法を災厄とした。
魔王を生み出した禁忌の力として恐れ、その研究すら忌避するようになる。
同じ歴史を歩みながら。
同じ戦争を経験しながら。
各国で、魔法への価値観は大きく分かれていった。
一方。
竜族もまた、一つの決断を下していた。
人類へ知識を授けた結果、魔王ニコラスという悲劇を生み出してしまった。
その責任を、誰よりも重く受け止めていたのは竜族自身であった。
竜神皇エーテルの遺志を受け継ぐ白竜皇オルドは、五大竜王を集め、静かに告げる。
「二度と同じ過ちを繰り返してはならない。」
「人間の未来は、人間自身が切り拓くべきもの。」
「我らは世界の守護者として、その行く末を静かに見守ろう。」
こうして制定されたのが、
『不可侵・不干渉』
の掟であった。
竜族は人間社会へ深く介入しない。
国家へ干渉しない。
過度な知識を与えない。
ただ世界の守護者として、大陸各地から静かに人々を見守り続ける。
その掟は、数千年もの長きにわたり守られ続けてきた。
誰一人として破ることなく。
誰一人として疑うことなく。
それが竜族の歴史となった。
だが――。
数千年続いたその歴史を動かす、一人の少女が現れる。
人間として生まれ。
竜族の娘として育った少女。
その名は、
エリシア・ノワール=ヴェル。
これは、
血ではなく愛によって家族を得た少女が、
人と竜。
そして、二つの種族を結ぶ架け橋となるまでの物語である。




