第5話 最後の災厄
魔王ニコラスは討たれた。
千年に及ぶ暗黒の時代は終わりを迎え、人々はようやく平和を取り戻した。
しかし――。
最後の災厄だけは、この世界に残されていた。
――魔核融合体。
魔王ニコラスの力の源。
無限に魔素を生み出し続ける、生命の理を超越した禁断の存在である。
魔王との最終決戦。
全盛期の大聖女ミュゲ・ジプソフィルは、そのすべての力をもって魔核融合体の破壊を試みた。
しかし。
傷一つ付けることはできなかった。
世界最高の聖女をもってしてなお、破壊できない。
それほどまでに、魔核融合体は完全無欠の存在だったのである。
残された道は一つ。
封印。
ミュゲは命を懸け、魔核融合体を深く封印することを選んだ。
こうして世界は再び平穏を取り戻す。
誰もが信じていた。
災厄は永遠に終わったのだと。
だが――。
百五十年の歳月が流れた。
長き時は、いかなる封印にも綻びを生じさせる。
世界各地で、再び魔素異常が観測され始めた。
魔物の増加。
魔素汚染。
原因不明の魔力暴走。
調査の末、それらは封印の綻びから漏れ出した魔素によるものだと判明する。
最後の災厄は、静かに目覚め始めていた。
その異変へ立ち向かったのは、一人の聖女だった。
聖女ソフィア・アルテミス。
彼女は人知れず封印の地を訪れ、再び魔核融合体を封印することに成功する。
その功績を認められ、魔王時代を生き抜き、後に教皇となっていたエルフの大魔術師サンセリテより、大聖女の称号を授かった。
こうして世界から最後の災厄は再び姿を消し、人々は真の平和を取り戻した。
歴史書には、そのように記されている。
だが――。
その封印の真実を知る者は、ごく僅かしか存在しない。




