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捨てられた少女は、黒竜王の娘となる!?  作者: Atelier Lotus


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第62話 家族

 その夜。


 黒竜城・執務室。


 一日の政務を終えた黒竜王ゼノンは、窓の外へ視線を向けていた。


 夜空には、無数の星々が静かに輝いている。


 やがて。


 黒竜王妃セレーネが温かな紅茶を机へ置いた。


「お疲れ様です」


「ああ、ありがとう」


 二人は向かい合って席へ着く。


 しばらく静かな時間が流れた後、セレーネが穏やかに口を開いた。


「エリシア、少しずつ笑うようになりましたね」


 ゼノンは静かに頷く。


「ああ」


「魔法の訓練にも前向きになってきた」


「侍女や騎士たちとも、少しずつ話せるようになっている」


 地下室で心を閉ざしていた少女は、確かに変わり始めていた。


 しかし。


 セレーネは小さく首を横へ振る。


「それでも、まだ遠慮しています」


 ゼノンも静かに目を閉じた。


 食事の時も。


 部屋で過ごす時も。


 何かを頼む時も。


 エリシアは、どこか一歩引いている。


 まるで。


 『いつか、この場所を去る人間』であるかのように。


 セレーネは静かに呟く。


「あの子は、まだ自分を家族だとは思っていません」


「きっと今でも」


「また捨てられるかもしれない、と怯えているのでしょう」


 ゼノンは立ち上がると、窓辺へ歩み寄った。


 星空を見上げながら、静かに口を開く。


「当然だ」


「信じた父親に捨てられた」


「そう簡単に、人を信じられるはずがない」


 その声には、少女への哀れみではなく、深い理解があった。


 しばらくの沈黙。


 やがて、ゼノンは静かに振り返る。


「あの子を正式に迎えよう」


 セレーネが顔を上げる。


「養女として」


「我らの娘として迎え入れる」


 その言葉に迷いはなかった。


「もう二度と」


「あの子に、自分は一人だと思わせたくない」


 セレーネは優しく微笑み、小さく頷く。


「ええ」


「きっと、素敵な娘になります」


 ゼノンも穏やかに微笑んだ。


「その前に」


「あの子自身が、この家を本当の家だと思えるようにならねばならん」


「焦る必要はない」


「ゆっくりでいい」


「家族とは、名乗るものではない」


「共に過ごす中で、自然となるものだからな」


 セレーネは静かに頷く。


「ええ」


「私たちの時間で」


「あの子の心を、少しずつ温めていきましょう」


 その夜。


 黒竜王夫妻は、一人の少女を本当の家族として迎えることを決意した。

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